ビジネス環境が複雑化し、AIなどのテクノロジーが急速に進化する中で、経営意思決定の難易度が高まっている。経営者の勘や経験に基づく従来の意思決定手法では、もはや社会や顧客のニーズを的確に捉えることは困難だ。
昨今は、あらゆるビジネス現場にデジタル技術が浸透し、結果としてデータが爆発的に増えている。このデータをいかにして活用するかが、これからの企業競争力を左右する要因になるだろう。
「しかし多くの場合、データは企業内の部署や課ごとにばらばらに存在しています。また、データをビジネスに役立てるべき従業員のリテラシーも不足しがちです。高度なデータ活用と経営意思決定を実現したければ、まずはこの課題を解決し、誰もが広くデータを扱えるようにする『データの民主化』を図ることが不可欠です」と電通総研の大木 勝元氏は指摘する。
残念ながら、これを実践できている日本企業はまだ多くない。例えば、顧客企業や商談のデータなどは、営業部門、マーケティング部門がそれぞれの仕組みで個別に保有しているケースがある。また、人事部門は人的リソースにかかわる情報を大量に保持しているが、それを活用すべき営業部門、マーケティング部門にはそれらを見る術がない。このような状況が、多くの日本企業で発生しているのである。
このような状況を脱却し、データ民主化を図るためのポイントは大きく次の4つある。
1つ目は「適切なデータガバナンス」。たとえ民主化といっても、全従業員にすべてのデータを開示することはリスク管理の点で避けるべきだ。「経営層には四半期の売上や利益などの経営分析データ」「営業部門には顧客データや商談データ」「情報システム部門にはシステム管理データやログデータ」というように、役割に応じたアクセス/利用権限を定め、確実にコントロールすることが肝心だ。
2つ目は「サイロ化の解消」である。部門・課ごとに保管されており、互いに連携していないデータを可視化して整理する。その上で、現場が柔軟に利活用できる体制をつくるのである。「具体的には、例えば営業部門ならCRMやBIツール、マーケティング部門ならそこに加えてCDPやMA(Marketing Automation)ツールなど、日々の業務に必要なツール群に適切にアクセスできるようにすることが望ましいでしょう」と大木氏は話す(図1)。
ばらばらに保管されていたため、それまで担当者以外は存在を知らなかったデータが可視化されると、そのデータを組織運営や顧客サービスの開発・改善に役立てられるようになる。これもサイロ化解消の大きなメリットだ。
3つ目は「企業ニーズに寄り添うマーケティング」だ。データは、特にマーケティング領域で高頻度に使われる。データを用いたマーケティングでは、顧客の購買履歴や属性情報に沿って、顧客が好むと思われる商品をWebサイトやメールを通して提案することが一般的だ。ただ、ここで提案される商品は、必ずしも企業側のニーズに合致しているとは限らない。
「例えば『在庫を多く抱える商品から順に販売したい』といった現場のニーズは必ずあるはずです。そこで当社では、顧客データ、購買データ、在庫データなど、データを網羅的にCDPに格納してMAに渡すことで、企業側のニーズもくんだマーケティング戦略を立案できる仕組みをご提案しています」と大木氏は説明する。
そして最後の4つ目は「データ統合の先にあるデータAI分析」。データのサイロ化を解消して終わりというわけではない。AIとユーザーが自然言語で会話し、必要な洞察や情報を引き出すといった環境の構築を目指すことが、これからの時代のデータ民主化においては重要になるという。
この4つのポイントを踏まえた取り組みを実践する上でカギを握るのが、Salesforce Data Cloudだ。Salesforce Data Cloudを中心にSales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud Engagement、Tableauなどを連携させることで、データを「集め」「分析して」「使う」環境を実現する(図2)。いわば、Salesforce Data Cloudを用いて組織内のデータと現場をつなぐのだ。これについて大木氏は、自社が課題解決を支援したマーケティング領域での事例を基に説明する。
ある企業では、長年にわたり運用してきたメインフレームシステムが、マーケティング高度化の障壁になっていた。データベースにある顧客情報や契約情報などを利用する際、手作業で抽出してMarketing Cloud Engagementに連携し、それを基にマーケティングチーム側で情報を顧客に配信しなければならなかったのだ。
「そこで当社は、メインフレームとMarketing Cloud Engagementの間にリアルタイムAPI基盤(MuleSoft)を導入することで、データをSalesforce Data Cloudに自動連携してMarketing Cloud Engagementで活用できる仕組みを提案しました。これにより、お客様の工数削減とマーケティング戦略の高度化をご支援しました。また、メインフレーム側にも大きく手を加えることなく済んでいます」(大木氏)
ビジネスコンサルティング/システムコンサルティングの両軸で、このような環境の構築・活用をサポートできる点が電通総研の強みだ。ビジネスコンサルティングの領域では、顧客システムの運用やデータ、マーケティングに関する課題を整理。システムコンサルティングの領域では業務フローの整理やデータソースの識別、データの関係性の整理、さらにはMAのユースケースの立案や、顧客セグメンテーション案の提示なども行うという。「加えて、Salesforce Data CloudおよびMarketing Cloud Engagementの初期構築や設定、活用に向けたトレーニング、さらに効果検証や施策実施の際の伴走支援も可能です」と大木氏は付け加える。
これからの時代、データに基づく意思決定は企業にとって不可欠なものとなる。企業がデータ民主化を推進する上で必要なデータ基盤の構築、デジタル時代のマーケティング施策の検討を強力に支援し、データの力を生かした持続可能な成長を支援するベンダーとして、電通総研に大きな注目が集まっている。