キヤノンITソリューションズが企業に対して行ったアンケート調査によれば、現在までのDXの成果として多くの企業が挙げたのが「データ統合などを行ってビジネスに活用できている」という答えだった。また、DXの成功要因については、「戦略が明瞭または具体的な戦術・施策・計画(がある)」と答えた企業が最も多く、続いて多かったのが「経営者・DXリーダーのリーダーシップ」だった。
「当社は、DX推進には『デジタル技術を活用して効率化、生産性を向上させる』アプローチと、『データを整備してビジネスに活用する』アプローチがあると考えています。そのいずれにおいても、明確な戦略と強いリーダーシップは不可欠です」とキヤノンITソリューションズの山野 雄也氏は語る(図1)。
中でもデータを整備してビジネスに活用するアプローチは、生成AIが注目される昨今、その重要性が大きく高まっている。自社がデータを活用する上での戦略や目的、メリットを明確化した上で、データ整備の方法・手段を確立することが肝心だ。また、強力なリーダーシップのもと、様々なステークホルダーを巻き込んで取り組みの推進・けん引力を強化することも欠かせないだろう。
「また、VUCAの時代には、事業の再編やM&Aなどを見据えた柔軟なデータ統制も考えなくてはなりません。これらのポイントを意識して取り組むことが肝心です」と山野氏は語る。
キヤノンITソリューションズは、高度なデータ活用を志す企業に対して、「DXグランドデザインの策定」と「データマネジメント」の2つが有効な打ち手になるものと提案している。
まずDXグランドデザインは、DXの基本方針を定めることを指す。ここで意識すべきポイントは3つあるという。
- 1:
- ビジネスイノベーションの仮説の検討
- 企業の経営理念や経営戦略をひも解き、「自社には何のイノベーションが必要なのか」、仮説を立てて検討する。創造性、柔軟性、リスクテイクの精神を持って検証することが肝心だ。
- 2:
- 全社一丸で取り組むDXビジョン、施策の検討
- 経営者が策定するDXビジョンの視座は高くなりがちで、現場が抱える課題との乖離が生まれがち。経営のみならず、現場の実務担当者にもDXの必要性が理解されるようなビジョンが必要だ。「その際はデジタルによる業務効率化のみならず、お客様への価値創出もバランスよく共存させることが理想です」と山野氏は言う。
- 3:
- 長期と短期の施策を組み合わせたアクションプランの策定
- 通常のシステム構築プロジェクトと異なり、DXでは様々な施策を組み合わせて進める必要がある。例えば組織の構造改革や全社データベース統合などの取り組みは、あるべき将来像からのバックキャストで、長期的視点を持って進めることが重要だ。
「一方、現状からのフォアキャストで、短期間でアジャイルに進めるべき施策もあります。このような推進方法の異なる施策を同期させながら進めるためのロードマップやアクションプランの策定が、DX推進においては重要です」と山野氏は述べる。
もう1つの打ち手であるデータマネジメントとは、目的に応じたデータ活用をいつでも行えるようにしておくことを指す。こちらもポイントは3つだ。
- 1:
- ビジネス戦略に応じた指標、データの準備
- 施策効果を測定するために、最適なKPIやKGIといった指標値の設定と、その施策結果を正しく評価するためのデータの蓄積が必要だ。
- 2:
- 最適なデータマネジメントを可能にする組織づくり
- 組織間に壁があり、DXの目的意識や達成イメージがばらばらな状況ではDXを成功させることは難しい。まずはデータ管理のルールをつくり、データ活用部門を組織化して推進担当者を適切に配置することがガバナンス強化に向けて不可欠だ。「加えて、何より重要なのが、強力なリーダーシップを発揮する推進役をアサインすることです。社内の意見を取りまとめてDXをけん引し、データ活用の目的を浸透させます」(山野氏)
- 3:
- 変化に柔軟に対応できる基盤の整備
- クラウドの特性を生かした拡張性に優れたアーキテクチャーの採用、標準化を意識した全体最適な設計などが重要になる。特別な業務仕様は可能な限り持ち込まず、必要最低限の要件に絞ってシンプルな機能配置を実現することも大切だ。
このような方向性のもと、キヤノンITソリューションズは多くの企業のDXグランドデザイン策定/データマネジメント高度化を支援してきた。
例えば、B to Cビジネスを展開するある企業では「モノ売り」から「コト売り」へのビジネスモデル転換を目指してデータマネジメントの改善・強化に取り組んでいる。製品・サービスを通じてユーザーに喜び、感動、高揚感、安心感を届けるためには、徹底的にユーザーを理解して、特別な顧客体験(CX)を提供することが必要だからだ。
「しかし従来は、顧客向けのサービスサイトが複数存在していたため、顧客はWebサイトごとに会員登録しなければならず、登録やID管理に多くの手間が必要でした。また、企業のデータマネジメントの観点で見れば、複数あるサイトがデータのサイロ化、データ利活用の煩雑化といった問題の原因になっていたのです」と山野氏。指標値や分析軸もばらばらで、同様のマーケティング施策が組織内に複数生まれてしまうような状況だったという。
そこでこの企業では、サービスサイトを統合して顧客情報を一元化。同時にデータモデルの設計も共通化した。これにより顧客の利便性を向上するとともに、共通の指標に沿ったデータ分析と、それに基づく顧客中心の施策展開を実現したという。
「新たな仕組みによって、CX改善ループを回す体制ができました。ロイヤルカスタマーを増やすためのカスタマージャーニーを実現し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)最大化に向けた施策を展開できる状態になっています」と山野氏は紹介する。
これからのビジネスでは、組織内外のデータをいかに活用するかが競争力を左右する要因になる。デジタル技術を用いた業務効率化を進めつつ、データを整備し、活用を促進して、ビジネスに生かしていくことが肝要だ。キヤノンITソリューションズは、顧客企業の思いを形にするDXのグランドデザイン策定と、競争優位性を実現するデータ活用基盤構築の両輪で、日本企業のビジネス変革を強力に支援している(図2)。