――Rikkeisoftは日本市場と深い関わりを持ちながら成長してきました。まず、どのような会社なのか、そしてフォンCFOはどのような役割を担っているのか教えてください。
フォン:複数人いる創業メンバーは皆、ベトナムから日本の立命館大学と慶應義塾大学に留学して勉強しました。その立命館の「立」と慶應の「慶」を組み合わせて、Rikkei(リッケイ)という社名にしました。
創業してから最初のお客様は大学の先生方にご紹介いただき、その後もお客様から新たなお客様をご紹介いただく形でビジネスを拡大してきました。そういったこともあり当社は、しっかりと日本の文化や価値観、求められる品質の基準を理解したうえで、ベトナム人の若いIT技術者の力を引き出してサービスを展開することを経営理念としています。
私個人は、CFOとして主に財務、経理、戦略を担っています。並行して、M&AやIPOに向けた準備も担当しています。
私自身も日本に留学し、立命館アジア太平洋大学(APU)を卒業しました。その後、日本の食品会社や米国のプラットフォーマーの日本支社などで約18年間働き、今はRikkeisoftのベトナム本社で働いています。この間に、私の子供は日本で生まれました。
入山:日本に来ていただき、日本で長く働いていただいてお子さんも生まれて、そういった方がベトナムの大手IT会社に戻られて日本企業相手にビジネスをしていらっしゃる。海外の企業でこれほど日本企業や文化に理解があるところはほとんどないと思うので、ありがたいことだと思います。
日本の課題は、少子高齢化に伴う人材不足と、DX推進やデジタル人材の確保です。一方で、ベトナムは若い人が多くて勢いがありますよね。RikkeisoftはIT・デジタルにはもちろん強いですし、若い社員が多く、スピード感や柔軟性があります。日本企業に足りないところを持っているので、是非Rikkeisoftと一緒に仕事をして、学んでほしいと感じています。

Rikkeisoft
取締役 兼 CFO(最高財務責任者)
タァ・ビェト・フォン 氏
――フォンCFOが日系企業や外資系企業の日本支社に勤めた後、Rikkeisoftのベトナム本社に移ったのはどんな理由があるのでしょうか。
フォン:約18年間日本でキャリアを積み、ある程度しっかりした仕事ができたと自負しています。次に何をするか考えた時に、外資系企業ではなく、ベトナムの企業の力になりたいと考えました。
私は1987年の生まれです。1986年にベトナムでドイモイ政策が実施され、資本主義経済の導入が始まりました。私が幼かったころはドイモイ政策が始まって間もなかったので、国がまだ貧しく、生活が大変だった記憶があります。
国が大きく成長し始めたのが98年頃からです。私が中学生の時ですね。そのため私の世代は「今は大変でも、頑張っていれば将来が開ける」というのを一番実感していると思います。
そういう体験をした世代として、下の世代に成功した姿をしっかり見せる責任があるのではないか、ということを次第に考えるようになりました。私の弟や私の子供の世代は、私の世代と同じような感覚ではないので、ハングリーになりにくいのではないかと感じます。ですから、私の世代が成功した姿を見せ、次の世代にインスピレーションを与える役目があると考えました。
具体的に何をするか考えた時に、私と近い世代の創業メンバーが、世代の役割を強く自覚して事業を展開しているRikkeisoftを、とても魅力的だと感じました。私は日系、米国系企業で長く働いてきたため、彼らほどベトナム人としてのアイデンティティに自覚的ではないなとも改めて感じました。そこで「Rikkeisoftを成長させ、次の世代にインスピレーションを与えられたら」と思い、転職を決めました。事業内容だけでなく、誰と一緒に働くかもとても大事だと思い、決断した形です。
現場の社員一人ひとりが
日本を理解することが重要
――Rikkeisoftが日本市場を重視する理由を教えてください。
フォン:創業メンバーが日本に留学したことや、日本政府から奨学金を出していただいたことへの感謝などはもちろん大きいです。しかし、それ以外にも日本市場にコミットする経営的な合理性はあります。
まず、日本においてDXの需要が高い一方で、IT人材が不足していることです。ベトナムの若いIT・デジタルの人材を多く抱えている当社には大きなチャンスがあります。
日本の文化を理解できていることや、創業してから14年の間に、お客様やパートナーの皆様と既に信頼関係が築けていることも大きいですね。経済面だけを考えるのではなく、信頼し合って一緒に成長していく、という視点が日本市場では大事ですし、当社にもその考えが合っていると感じます。
入山:日本企業の最大の課題がDXであることは間違いありません。今、チャットで利用する生成AIのサービスが流行っていますが、あれはインターネット上にあるパブリックなデータを活用したものです。私は企業内にあるデータを使った、言わばプライベートなAIに大きな可能性があると考えています。
日本企業には、これまでデジタル化されてこなかったさまざまな知見や技術などが眠っています。それらのデータ量は、パブリックなデータよりもはるかに膨大です。企業内にあるデータをAIに取り込むことで、日本企業は高い競争力を獲得でき、30~40年ぶりに世界で勝てるチャンスが生まれると考えています。
DXやAI活用は大きなチャンスであるにも関わらず、日本企業には社内エンジニアがおらず、外注できるエンジニアも国内に不足しています。国外のリソースに頼らなくてはならないタイミングなので、Rikkeisoftのような企業は多くの日本企業にとって、信頼できるパートナーになり得る、ありがたい存在だと感じます。
――Rikkeisoftが日本企業からの受注を増やしている現状について、フォンCFOはどうお考えですか。
フォン:日本に限らず、世界中のお客様はITベンダーにコストやスピードの部分を期待しています。それに加えて、日本企業だからこそと言えるのが、柔軟なコミュニケーションに基づく信頼関係の構築ですね。当社はその部分に特に力を入れているので、そこをご評価いただいていると感じます。
入山:日本の会社とビジネスをするのは大変だと思います。いろいろな細かい決まりがあって意思決定には時間がかかるし、急に担当役員が変わることもあります。日本企業との取引を伸ばしているということは、そういった日本企業の面倒な部分もしっかりと理解していただいたうえで、コスト競争力も開発スピードもあるということでしょう。
――幹部の皆さんが日本への留学経験があるということは、顧客企業からの信頼獲得にもつながりますか。
フォン:それはありますね。社名の由来をお話しすると親近感を持っていただけます。ただし、各プロジェクトに幹部が入る訳ではないので、現場の社員一人ひとりが日本のことを理解することが欠かせないと考えています。

早稲田大学大学院経営管理研究科
早稲田大学ビジネススクール 教授
入山 章栄 氏
AIでマイグレーションを、より速く、より低コストに
――AI活用の戦略についても教えてください。
フォン:今、多くの日本企業が、レガシーシステムから新しいシステムへのマイグレーションを検討しています。しかし、大規模なプロジェクトでは多額のコストと長い期間が必要となり、リスクも伴うため、なかなか実施に踏み切れない企業も少なくありません。
ただ、この1年ほどで状況は大きく変わりつつあります。AIを活用することで、従来と比べてコストを大幅に抑えながら、開発スピードを高め、プロジェクトの実現可能性を大きく向上させることができるようになってきました。
例えば、リバースエンジニアリングやコーディングなど、これまで多くの工数を必要としていた工程の一部をAIで効率化・自動化できます。また、AIを活用した業務ソリューションの開発や業務プロセスそのものの変革、さらにはAIエージェントによる業務システムの操作など、活用領域も急速に広がっています。
もちろん、AI活用には従来とは異なるリスクや課題もあります。しかし、コスト、スピード、実現可能性という面でマイグレーションのハードルが大きく下がってきたことで、これまで投資判断が難しかったプロジェクトについても、企業がより前向きに検討できる環境になってきたと感じています。
入山:日本企業は、特に情報システムの棚卸が苦手です。しかしAIを使えば棚卸が可能になります。多くの企業では業務システムが複雑化し過ぎて問題になっていますが、それをAIで紐解き、完全に見直したい、という需要は相当あると思います。
ベトナムのほかのITベンダーにも、コストやスピードでRikkeisoftと比肩するところはあると思います。若い人も多いし、日本企業にとってベストなパートナーになり得るところはあるでしょう。
私が少し懸念するのは、ベトナムの方はやる気が凄いので、あまり自信がないことであっても「できます!」と応じてチャンスを得ようとする点です。それは素晴らしいパーソナリティであり、日本人も見習うべきなのですが、一方で状況によっては「できないことはできない」と正直に言ってほしい場面があると思うのです。特に高い信頼性が必要なシステムなどではそうですよね。
できないことをできない、と正直に言うことによって生まれる信頼があり、日本を良く理解しているRikkeisoftであれば、そういった対応が可能なのではないかと思います。
フォン:それはその通りですね。我々は嘘をつけません。できないことはしっかりお伝えし、お客様と一緒に向き合って乗り越えていく、という方針です。
そうした考えでビジネスに臨んでいるのは、やはり日本がホームマーケットだからだと思います。我々はベトナム企業ですが、日本での売り上げが最も多く、日本市場を最も大切にしているのです。ですから、日本市場に求められることにはできるだけ応えていきたい、という考えがあります。
入山:やはり、日本的な誠実さを大切にしているからこそ、口コミで広がっていくということなのですね。
RIKKEI GLOBAL SUMMITを日本で開催
――Rikkeisoftは日本市場への情報発信の一環として、「RIKKEI GLOBAL SUMMIT 2026」を10月9日(金)、ヒルトン東京お台場で開催予定です。このイベントについて教えてください。
フォン:昨年、ベトナムの首都ハノイで「RIKKEI GLOBAL SUMMIT 2025」を開催しました。日本からも500人にご参加いただき、手応えのあるイベントにできました。
今年は日本法人のリッケイが10周年を迎えたタイミングでもあるので、これまでご支援いただいたお客様への感謝を込めて、RIKKEI GLOBAL SUMMITを日本で開催することを決めました。
ITベンダーが主催するイベントなのでテクノロジーの話はしますが、一方的に発信するのではなく、お客様同士でご交流いただき、新しい気づきや変化のきっかけにできればと考えています。
ベトナム国家イノベーションセンター(NIC)や日本貿易振興機構(JETRO)にもご協力いただき、ベトナム企業や企業団体、政府関係者などもお招きします。そういった方々ともご交流いただき、新しいことを始めるきっかけが作れたら、と思っています。
入山:いくらデジタル化が進んでも、結局一番大事なのは人と人の出会いです。そこでしか得られないインフォーマルな情報に圧倒的に価値があるためです。デジタルと人の交流が組み合わさったコミュニティは大きく成長しますし、ベンチャーキャピタルの投資も集めます。シリコンバレーが分かりやすい例ですね。
私はハノイにもそういったコミュニティに成長する可能性があると感じています。ですから、Rikkeisoftがコミュニティの活性化に取り組むのは価値があることだと感じます。
――日越で新しい取り組みをしていくには、ベトナムの方々にも日本に一段と興味を持っていただく必要があります。ベトナムの人々から見た日本の魅力は何でしょうか。
フォン:最近の円安によって、日本企業がベトナム人を採用するのは以前より大変になっています。ベトナムの若い技術者も、10年前と比べると日本で働きたい人は減っているのを感じます。
しかし私は、ベトナム人が日本で働くことは大きなメリットがあると考えています。私は長い間日本に住んでいて愛着があるので、バイアスがかかっているかもしれませんが(笑)。
私は、日本を課題の先進国だと思っています。早い段階で発展を遂げた日本が現在直面している課題は、今後ベトナムやタイなど他国も経験するものでしょう。日本はベトナムが課題に直面する前に、解決策を見つけてくれる可能性があります。
日本で課題解決の方法を習い、それをベトナムや海外の他国で生かすことができれば、大きなチャンスになります。ですから、後輩には「日本での経験は必ず将来に生きるはずだ」という話をよくしていますね。
日本とベトナムが拓く、
AI・DX時代のビジネス共創
株式会社リッケイが主催する「RIKKEI GLOBAL SUMMIT 2026」は、AI・DX・デジタルテクノロジーをテーマに、国内外の企業・リーダー・専門家が集う国際イベントだ。2026年10月9日(金)、ヒルトン東京お台場で開催される。
2026年は、株式会社リッケイの設立10周年の節目にあたる。これまで築いてきた顧客・パートナーとの信頼関係を基盤に、未来のビジネスを共に創る新たなパートナーシップの創出を目指す。
当日は、基調講演、パネルディスカッション、テーマ別セミナー、MOU調印式のほか、AI・DXソリューションの展示、ベトナム文化コーナー、歓迎セレモニー・懇親会などを予定。国内外500社以上、来場者1000名以上の参加を見込んでいる。
詳細は公式サイトへ。
https://globalsummit.rikkeisoft.com/
10月9日の主なプログラム
進行:レ デゥック アイン氏(東京大学大学院 准教授)


RIKKEI GLOBAL SUMMIT 2026の詳細は公式サイトへ。
公式サイトを見る※本イベントは一般応募を受け付けていません。プログラム内容は予告なく変更される場合があります。
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過去の本連載で紹介した通り、Rikkeisoftは将来的な日本への本社機能の移転、東証への上場を計画している。2026年には、同社最大の情報発信イベントである「RIKKEI GLOBAL SUMMIT 2026」を日本で開催するなど、日本市場へのコミットをこれまで以上に高めているところだ。そんなRikkeisoftは、日本市場においてどのような立ち位置にいるのか。次回は、RIKKEI GLOBAL SUMMIT 2026の開催後レポートと顧客事例を通じて、Rikkeisoftが日本市場でどのような共創の場を築き、どのような価値を生み出しているのかを紹介する。

