アムコン
サーキュラーエコノミーを陰で支える立役者
快進撃の汚泥脱水機、新分野へ
「固液分離」に磨きをかける
環境負荷の抑制が欠かせない今、固体と液体を分離する技術が多様な産業で求められるようになってきた。水ビジネスを半世紀にわたって展開してきたアムコンが提供するのは、「汚泥」を固液分離するための汚泥脱水機。性能に磨きをかけて新分野にも展開、その意外な働きぶりとは――。
汚泥脱水機は水分率99%の泥水のような「汚泥」に凝固剤を添加して圧搾し、水分率80%前後の土のような固体と液体である水に分離をする固液分離機である。
■汚泥脱水機「ヴァルートデュオ」内部構造右手の穴から「汚泥」を投入する。内向きに回転する2本のスクリューで「汚泥」を左方向に送りつつ、その推進力でシリンダー内の圧力を高め、水分をしぼり取る
2021年7月に販売を開始した処理性能にさらに磨きをかけた進化型の汚泥脱水機は、これまでは適用が難しかった産業にも採用事例が出てきている。そのひとつがプラスチックのリサイクルプラントである。固液分離を必要とするのは、選別・破砕・粉砕後のプラスチックを洗浄した際に排出される排液の処理だ。この排液にはプラスチックの破片が多く含まれており、従来機ではこの破片が濾過面に引っかかることで目詰まりを起こし固液分離を阻害する要因となっていた。進化型は処理性能の向上により濾過面の目詰まりの問題を解決。従来機では実現できなかった安定的な処理を実現し、進化型を新分野に展開できた。
2022年4月にはプラスチックの資源循環を促進する新法が施行され、プラスチック製品のメーカーには排出・回収・リサイクルの仕組みづくりが求められるようになった。汚泥脱水機の市場にも広がりが生まれつつある。
もうひとつの新分野事例は牛舎だ。豚舎や鶏舎には従来機でも豊富な実績があったが、牛舎で生じる「汚泥」に多量に混入する「わら」が濾過面に目詰まりを生じさせる課題を従来機は抱えていた。牛の糞尿を含む牛舎の「汚泥」は、汚泥脱水機で固液分離処理して最適な水分量に落とすことで発酵を促し良質な堆肥にする。
堆肥をつくる場合、牛の糞尿に水分調整用のおがくずを混ぜ、重機や人手で切り返し作業を重ね、発酵を均一に進めるという方法が一般的だ。「しかし、その方法では人手が欠かせません。わらが混入してもパワフルに固液分離処理を行える進化型は、時代が求める省人化を実現できます」。アムコンヴァルート事業部販売管理本部本部長の小磯岩雄氏は指摘する。
売上高は海外が国内を上回る
東南アジアでは浄水施設にも
顧客層が広がりを見せる中、アムコンは売上高を右肩上がりに伸ばしている。2021年度以来、年平均成長率は10%以上。2022年度には海外部門の売上高が国内部門を初めて上回った。
グローバルネットワークは強力だ。中国とチェコに現地法人を持つほか、世界15の国と地域に販売代理店を置く。汚泥脱水機全体の納入実績は世界77の国と地域で累計約5000件に及ぶ。「海外では、河川水から飲用水をつくり出す浄水施設での利用を見込めるようになり、東南アジアでは既に納入実績が出始めています」(小磯氏)。
もともとは「汚泥」を固体と水に分離し「汚泥」の水分率を落とす装置である。活躍の場は例えば、下水処理施設が挙げられる。下水処理工程で副産物として発生する「汚泥」は、汚泥脱水機で処理された後、建設資材の原料として利用されたり、産業廃棄物として焼却処分や埋め立て処分される。
各種の脱水方式が考案されている中、アムコンが提供するのは、多重板型スクリュープレス方式と呼ばれるもの。この方式のパイオニアが1991年に販売を開始した「ヴァルート」という製品である。
この製品は、固液分離を担う濾過体を「固定リング」と「遊動リング」と呼ばれる2種類のリングを積層してシリンダーを構成し、このシリンダーに搬送と圧密を担うスクリューを入れるユニークな構造。
シリンダーに投入した「汚泥」をスクリューで搬送しながら、その推進力でシリンダー内の圧力を高め水分をしぼり取る。
「ヴァルート」の独自性は、遊動リングによる濾過体のセルフクリーニング機構にある。遊動リングが内径部分で接するスクリューの動きに合わせて円周方向に動き、リング間の隙間がクリーニングされ、濾過面の目詰まりを防ぐのだ。
「ほかの方式の場合、濾過面の目詰まりを防ぐために高圧洗浄水を噴き付けたりします。しかし『ヴァルート』であれば、それがいりません。メンテナンス性やランニングコストの観点で優れています」(小磯氏)
冒頭に紹介した進化型は、この「ヴァルート」を基に処理性能をさらに高めたモデル「ヴァルートデュオ」である。
■汚泥脱水機「ヴァルートデュオ」の働きぶり①プラスチックのリサイクルプラントでの設置例(写真はレンタルのため仮設置)。左は脱水前の「汚泥」、右は脱水後
「ヴァルートデュオ」は繊維質汚泥や
無機分汚泥の処理性能が大きく進化
「ヴァルートデュオ」は、セルフクリーニング機構という強みはそのままに、強力な推進力を得るためにシリンダー内にスクリューを2本搭載した。このことがシリンダー内の閉塞抑止に効果的に作用し、繊維質の多い「汚泥」や無機分の多い「汚泥」でも安定した脱水処理を実現した。
処理対象となる「汚泥」の幅が広がり対応力が増したことで、従来機では適用が難しかった新分野にも適用できるようになった「ヴァルートデュオ」。プラスチックの資源循環や牛舎糞尿の堆肥利用を後押しするという観点で、サーキュラーエコノミー(循環経済)の陰の立役者ともいえる。
■汚泥脱水機「ヴァルートデュオ」の働きぶり②畜産施設である牛舎での設置例。写真はサトーファーム(福島県川俣町)。左は脱水前の「汚泥」、右は脱水後
その活躍ぶりは、「汚泥」の「処理」とは一線を画す「生産」の領域にまで広がろうとしている。小磯氏はこんな例を紹介する。「食品メーカー様から、食品残渣から油をしぼり取れないか、という問い合わせを受けました。実機でのデモンストレーションを経た上で実際に導入していただきました」。
使えるものはとことん使い回す――。サーキュラーエコノミーの確立に向け、こうした資源循環を築くには、固体と液体を分離する工程も欠かせない。その工程を幅広く担えるのが、「ヴァルートデュオ」。自社の資源循環を改めて見返せば、その必要性が思いがけず浮かび上がるのではないか。



