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社会実装を阻むものは何か?

大量生産・大量消費・大量廃棄…… 従来の常識は通用しない。
サーキュラーエコノミーの時代に世界は突入した。
「地球の限界」を知り、中長期的視座での経済活動が始まっている。
新たなルールのもと、資源循環というテーマにいかに向き合うべきか。
社会実装に挑む第一人者たちに、その論点を訊いてみる――。

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総論

アジアから見た日本のサーキュラーエコノミー
EU対抗のアジア基準が必要
日本が主導権を握るには?

EUは域外への廃棄物輸出の管理強化を進めている。アジアで静脈※1の再生材をいかに循環させていくか。グローバル競争を勝ち抜くために、アジアにおけるサーキュラーエコノミー構築の重要性が高まっている。同分野をけん引する中央大学経済学部教授の佐々木創氏に、日本の現在地と論点を聞いた。

※1 静脈…使用済み製品などを回収・再利用する産業

佐々木 創氏

中央大学
経済学部 教授
佐々木 創氏

北海道大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。2007年から、三菱UFJリサーチ&コンサルティング環境・エネルギー部で政策立案に関与し、環境ビジネスのアジア展開を実現。2012年、中央大学経済学部准教授。2018年より現職。同年から2022年まで、チュラロンコン大学経済学部客員研究員を兼務。

―日本の現在地をどのように捉えていますか。

制度を整備して資源回収に取り組む日本は、実効性の観点で理念先行のEU(欧州連合)よりも進んでいます。しかしサーキュラーエコノミーでは日本は遅れているといわざるを得ません。EUに比べて経済のあり方を変えるという視点が欠けているのです。EUでは新車生産に必要なプラスチックの25%以上を、再生プラスチック(うち廃車由来25%)とする規則案を発表しました。生産する動脈※2側に責任を担保させることで、サーキュラーエコノミーに適したビジネスモデルや価値創造を促す狙いがあります。

※2 動脈…資源を基に素材や製品を開発・販売する産業

佐々木 創氏

中央大学
経済学部 教授
佐々木 創氏

北海道大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。2007年から、三菱UFJリサーチ&コンサルティング環境・エネルギー部で政策立案に関与し、環境ビジネスのアジア展開を実現。2012年、中央大学経済学部准教授。2018年より現職。同年から2022年まで、チュラロンコン大学経済学部客員研究員を兼務。

―日本企業の課題は何ですか。

私は現在、産官学連携でアジアのサーキュラーエコノミー構築を研究し、その実践を支援しています。アジアの大手企業は、日本企業よりも環境問題に真剣に取り組んでいます。最初から世界市場を相手にしているからです。国内市場の売り上げシェアが高い日本企業の多くが、経営課題として環境問題を捉えていません。再生材がバージン材よりコスト高になることや、日本企業が強みとしてきた品質神話も足かせとなっています。資源循環性に優れたものづくりの実現では、消費者の行動変容が必要です。

―消費者の意識に国内外で違いは見られますか。

日本、パリ、ニューヨーク、ジャカルタ、上海の5地域で比較調査を実施した、京都大学と総合地球環境学研究所による「プラスチック消費に関する行動の国際比較調査」では、興味深い結果が出ました。「マイボトルやマイカップを持ち歩き、ペットボトルや使い捨てのプラスチック製カップの使用を控える」の回答率はパリ41.8%、ジャカルタ59.0%に対し、日本は25.7%でした。「衣服はできるだけ店頭の回収ボックスに出している」も日本が9.7%と最も低い回答率でした(図1)。

■図1 プラスチック製品に関する環境配慮行動のうち「普段から習慣的に取り組んでいる行動」
■図1 プラスチック製品に関する環境配慮行動のうち「普段から習慣的に取り組んでいる行動」「特になし・取り組んでいない」は日本が最多の一方、ペットボトルを分別する人は日本が最も多い。日本では無意識的に人々に環境配慮行動を取らせる仕組みはあるとも仮定できる
(出所:安藤悠太・孫潔ほか(2024)「プラスチック消費に関する行動の国際比較調査(2)―プラスチック製品に関する様々な環境配慮行動の実施状況の比較から―」の資料を要約して作成)

注目は「環境問題について家族や友達と話す頻度」という設問です。「数日に1回程度以上」と答えた人の割合はジャカルタで最も高く51.0%。一方、日本は67.9%の回答が「数週間に1回程度、またはそれ以下」でした(図2)。

■図2 環境問題についてa「情報をメディアや報道で見聞きする頻度」とb「家族や友達と話す頻度」
■図2 環境問題についてa「情報をメディアや報道で見聞きする頻度」とb「家族や友達と話す頻度」「環境問題についての情報接触と会話が、日本ではほとんどない。図1で示唆される仕組みがあるからこそ、進んでいなかった環境配慮行動の促進が今後の課題
(出所:図1と同じ)

東南アジアの中流層は少し高額でも環境貢献度の高い製品を購入する傾向がありますが、同調査からも環境意識の高さが消費者行動に表れていると推察できます。

―アジアにおけるサーキュラーエコノミーはなぜ必要でしょうか。

EUは加盟国の中で資源移動を行い、域外には出さないという基準をとっています。それをアジアに適用する時代がすぐそこまで来ています。動脈側はサプライチェーンを分散させてつなぐことで、製品の生産は可能です。一方、再生・再利用を行う静脈側はコストだけがかかり、効率的・効果的に循環できないと懸念しています。これを払拭するにはアジアで共通の基準を設け、アジアにおけるサーキュラーエコノミーを実現することが必要です。

またバーゼル条約※3では、二国間で相互認証することで取引が行えます。今後は交渉により資源を循環させる事例の積み上げも重要です。製造現場がアジアへシフトした中で、いかにアジアに再生資源を持っていくか。動脈側のプレーヤーである日本企業には、アジアにおける静脈側の再生材を循環させていく役割が求められます。

※3 バーゼル条約…有害物質の国境を越えた移動を規制する国際条約

静脈側の循環に課題
メリットを提示し理解を醸成

―日本企業への具体的なメリットは何ですか。

輸送にかかるコストやCO₂排出量を考慮すると、循環の輪は小さいほうが適しています。しかし、需要と供給からもアジアで回す意義は大きいと思います。衣類をアジア圏で循環させると資源消費量の削減につながることが分かってきました。レアメタルなどの再生利用ではアジアには技術的課題もあります。日本に廃棄物を戻すことで解決できますが、資源争奪が起きている分野です。日本が主導権を握るためには、循環のメリットを提示し理解を得ることがベースとなります。

日本企業の環境意識向上が
アジアを主導する鍵となる

―日本が目指すべき方向性は何でしょうか。

サーキュラーエコノミーの本質は、資源消費量を減らしつつGDPを増やすことにあります。日本は優位性のある3R(Reduce、Reuse、Recycle)にシェアリングエコノミーなど新しい消費形態を実装することで、実現に向かうと思います(図3)。日本がアジア圏のサーキュラーエコノミーを牽引するためには「アジアからどう見られているか」を捉え直すことが必要です。

■図3 サーキュラーエコノミーの目指すべきベクトル
■図3 サーキュラーエコノミーの目指すべきベクトル日本は自国の優位性を生かし、アジア圏のサーキュラーエコノミーを牽引する役割が期待される。そのために日本企業の環境意識向上、消費者の行動変容の二軸が必要となる
(出所:佐々木創氏の資料を基に作成)

アジアでは日本企業の環境意識が低いとの認識が広がり始めています。タイではリサイクルに関して委託先が不正をした場合、製造元に責任を負わせるという法改正が行われました。アジア各国でも同様の法整備が進められています。日本企業はアジアで環境問題対策を先導する役割が求められており、それこそが主導権を握る鍵となるでしょう。

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総論

アジアから見た日本のサーキュラーエコノミーEU対抗のアジア基準が必要
日本が主導権を握るには?

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