美容医療業界において第一線で活躍する医師や著名人とで行われる鼎談の第3弾。環境整備が進む美容医療業界の現状に迫った前回を受け、今回は、医師と患者さんのコミュニケーションのあり方について、共立美容外科 理事長の久次米秋人氏、美容・医療ジャーナリストでライターの海野由利子氏、起業家の河村真木子氏が鼎談する。
拡大を続ける美容医療業界だが施術の実施件数増加に伴い、トラブルの件数も増加傾向にある※1。今回の鼎談では、安心・安全な美容医療を受けるために不可欠な「医師と患者さんのコミュニケーション」というテーマからスタートした。
※1出所:厚生労働省 資料より「第1回 美容医療の適切な実施に関する検討会」 資料1「美容医療に関する現状について」P22-23(https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001363278.pdf 2025年9月9日アクセス)
厚生労働省の調査によると、美容医療を受けた患者さんの半数近くが「施術内容、施術の効果、利用する機器や薬などについて、十分な説明を受けられなかった経験がある」と答えている※2。

共立美容外科の創業者で40年間美容医療の現場を見続けてきた久次米秋人氏は、「昨今、患者さんに対して医師以外のカウンセラーが治療方針について説明をするクリニックが増えている」と切り出した。


その理由について、「多店舗化する美容医療を行うクリニックが増加している。クリニックの経営を考えると、患者さんの施術までの流れをマニュアル化した方が効率的です。ビジネスが優先されるようになったことが大きいのでは」と、久次米氏。「内科でも外科でも、まずは医師が診断するのが基本。美容外科も本来、医師が診断し治療方針を患者さんに直接説明するべきです。それがお互いの信頼感を高め、トラブルを防ぐことにもつながる」と強調した。
美容医療は、医師の裁量によって価格や治療内容が設定できる「自由診療」であることが多い。美容・医療ジャーナリストとして美容医療の現場を数多く取材してきた海野由利子氏は、久次米氏の意見に同意しつつ、「クリニックの“おすすめ”に流されないように消費者・患者さん側も、自分がどうなりたいのか、避けたいことは何か、などを認識したうえで、クリニックに訪れることは重要」と述べた。


一方、美容医療の利用者であり、会員制オンラインコミュニティを運営する起業家の河村真木子氏は、「どんな選択肢があってどんなことができるのか、素人である消費者・患者側が把握するのは難しい。自分がどうなりたいのかというイメージはしていきますが、経験値の高い医師の意見とすり合わせるようにしています」と自身の経験を交えて語った。


2024年6月から11月に行われた厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」では、こうした医師と患者さんのコミュニケーションを含め、美容医療のさまざまな課題が議論されたという。検討会の報告書では、 “契約締結時において最低限遵守すべきルール”として「医師による説明内容」「医師とカウンセラーとの役割分担」「即日治療の原則禁止」などの項目や、“医療機関が診療記録として残しておくべき事項・記載方法”などの内容を盛り込んだガイドラインの策定が提案された※3。
※3 出所:厚生労働省 「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書 令和6年11月22日 P13-14(https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001337817.pdf 2025年9月9日アクセス)
構成員として検討会に参加した久次米氏は、「前進はしたが、美容医療において医師と患者さんのコミュニケーションの質を向上させるには、さらなる強いレベルの規制が必要なように思う」と訴える。
美容医療業界全体としても、「最近、いくつかの団体や医療機関で医師の教育・研修制度を強化する動きがある」(海野氏)というが、金融業界で経験を積んできた河村氏は、「金融業界のビジネスパーソンは、常に知識や技能をアップデートしていかなければ生き残れない。資格によっては継続教育と資格更新が義務付けられている」とし、継続して技術や知識の向上に取り組む医師も多くいる一方で、美容医療業界全体として安全性のさらなる向上を目指すためには、「より体系的で継続的な教育や研修の仕組みの導入が必要なのではないか」と提言した。
2つ目のテーマは、「美容医療を受ける際に、消費者・患者さんはどういった情報を整理するべきか」。
消費者・患者さんの周りには、美容医療に関するさまざまな情報があふれている。「昨今は、特にSNSに美容医療広告が増えています。SNSの広告は、本人の意思に関係なく目に触れてしまう状態にあります。規制が行き届いていないので注意が必要です」と、海野氏は警鐘を鳴らす。「SNSの中には根拠やリスクが示されていない内容もあり、過剰な期待を抱く人や誤解を招いてしまうケースが増加している」と、久次米氏も同調した。
こうした美容医療広告をはじめ、美容医療についての情報を消費者・患者さんは、どう見極めたらいいのだろうか。「医師にしか判断できない巧妙な内容の広告もある。そんな中で簡単にチェックできるのは価格。他と比べて、あまりに低価格な表示は“釣り広告”の場合が多いです」と、久次米氏。
1万5000人以上もの会員が所属するオンラインコミュニティを運営する河村氏は、「会員は、最も美容医療に関心が高い35~45歳がメイン。彼女たちから集めた美容医療にかかわる情報を集計して、事務局で厳密に精査したうえで、オンラインコミュニティで公開し、情報を共有している」という。「信用あるコミュニティのリアルな声から得られる情報は貴重」と力説した。
長く雑誌媒体で取材活動をしてきた海野氏は、「オールドメディアは実は信用度が高い」と言及。「SNSのプラットフォームは、広告出稿側で各種関連法規に則った広告を作成することを前提としているようです。一方で、美容誌・女性誌は、読者の安全性を重視しているので、取り上げても問題がないクリニックかどうかを担当編集、編集長もしっかりチェックしたうえで取材をしています」と語った。
また、海野氏は、納得したうえで治療を受けるためにどう情報を整理すべきかについて、「医師の前では緊張してしまう人も多いので、リスクや副作用など医師に聞きたいことをメモにまとめておくのがおすすめ」と、消費者・患者さんへのアドバイスを提示。受診前の情報整理やクリニックが信頼できるかどうかの再チェックには、厚生労働省のウェブサイト「確認してください!美容医療を受ける前にもう一度」の情報も参考になるという※4。
※4 出所:厚生労働省ウェブサイト「確認してください!美容医療を受ける前にもう一度」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04978.html 2025年9月9日アクセス)
「余裕があれば、気になるクリニックを3軒ほど訪れてみるのもおすすめです。それぞれのクリニックの雰囲気や違いがよく分かるようになると思います」と海野氏。これに対し、久次米氏も「患者さんが美容医療を受ける際、最も重要なことは医師との相性。3軒回ると、自分と相性が良い先生を見つけやすくなるはず」と海野氏の意見に同調した。
一方、河村氏も「実際に施術するのは医師。自分が美容医療を受ける際は、必ず担当医は誰かを確認します」と発言。「自分が受ける施術について、担当する医師がどの程度の実績・症例数を持っているのか経験値をチェックするようにしている」という。
最後は、「インフォームド・コンセントの重要性」をテーマに議論が繰り広げられた。
インフォームド・コンセントとは、「医師から十分な説明を受け、納得したうえで治療を受けることに同意すること」である。これまでの鼎談の中でも語られてきたが、安心・安全な美容医療を受けるためには必要不可欠なステップだ。
現場で美容医療に期待を抱く数多くの患者さんと接してきた久次米氏は、「美容医療は、患者さんの満足度をどう高めるかが重要なポイント」と語ったうえで、「患者さんはカウンセリングで、どうなりたいのかという希望とともに、施術方法や対応について思っていることや疑問に感じていることを医師にしっかり伝えてほしい。十分なコミュニケーションをとって納得して施術を受けてもらうことが、患者さん自身の満足度につながる」と述べた。
さらに、インフォームド・コンセントを受けるために消費者・患者側としてどう行動すべきかについて、海野氏は「まずは自分の質問に対して、医師からしっかりとした回答があったかどうか確認を。痛みはどの程度か、ダウンタイム(施術後、支障なく日常生活が送れるようになるまでの期間)はどれくらいか、施術後のサポート体制など、不安なことはすべて払拭しておくべきです」と強調。
また、インフォームド・コンセントには、医師と患者さんの円滑なコミュニケーションが求められるが、「私の知人にもいましたが、ダウンタイムがどんなものなのかも知らずにクリニックに行く方もいるようです。面倒がらずに、患者側も事前に情報をきちんと調べ、美容医療のリテラシーを上げておくことが大事」と河村氏。
締めくくりに、納得のいく美容医療を受けるために、消費者・患者として、社会全体として、心がけておくべき事柄をそれぞれから提示してもらった。
河村氏は、SNSの美容医療広告の問題に触れ、「情報はただではない」と単刀直入に指摘。「無料の情報は、広告の影響を受けている可能性があることを認識しておくこと。質の高い情報を得るためには、お金や手間をかけることが大事。ひとり一人が情報の精査を心がけるべきだと思います」と主張した。
一方、海野氏は「何よりも、医師選びに尽きる」と指摘したうえで、「20数年、美容医療業界を見てきましたが、信頼できる医師に出会えるかどうかによってまったく違う。少なくとも、皮膚科専門医、形成外科専門医など、専門医資格を持つ医師を選ぶこと。病院やクリニックのホームページで確認できます」と述べた。
最後は久次米氏が、「美容医療の医師には、高いコミュニケーション能力とモラルが求められる。今後、さらに医師の教育制度の整備やルールづくりを徹底していくことが、美容医療の発展に結びつくのだと思います」とまとめ、鼎談の幕を閉じた。
長年にわたり美容医療に貢献してきた企業として、アラガン・エステティックスが進める消費者・患者さんへの情報提供の具体的な取り組みについて、現場の声を聞いた。

後藤悦子氏
アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス
広報部 部長
Q1.アラガン・エステティックが重視している課題や取り組みは何か?
美容医療への関心の高まりと同時に、美容医療に関する情報が溢れ、消費者・患者さんには美容医療の治療選択肢が数多く提示されています。こうした環境のなか、信頼できる情報を得て、科学的なエビデンスに基づいた美容医療を患者さんが受けられる環境づくりが必要であると考えています。
当社は、米国に本社を置く研究開発型のバイオ医薬品企業アッヴィの美容医療部門として、薬事承認を取得した製品の提供だけでなく、消費者・患者さんに向けて美容医療の知識を高めるための取り組みも行っています。
Q2.消費者・患者さんに向けて、どのような情報発信を行っているのか?
アラガン・エステティックスは、美容医療について、消費者・患者さんに向けた啓発活動に継続して取り組んでいます。消費者・患者さんが美容医療について正しい知識を持ち、安心して施術を受けられるよう、クリニックの選び方やカウンセリング時のポイントなどの情報を、消費者・患者さんを対象にさまざまなチャネルから情報を発信しています。
Q3.今後の展望は?
アラガン・エステティックスが目指す「美容医療」とは、一人ひとりの多様な美意識に寄り添う選択肢と科学に基づく安全性とが、ともにあることです。
そのために、消費者・患者さんが安心して美容医療を選択できるように、幅広いステークホルダーと協力して、情報提供活動を今後も強化して取り組んでいきます。