JFEエンジニアリング
25年前の早すぎた技術。JFEエンジニアリングの廃棄物ガス化技術は、焼却ではなく化学的に分解し廃棄物を原料に変える。これまでは特徴を十分に活用できなかった。ケミカルリサイクルとの融合により新局面に。NEDO※1のグリーンイノベーション基金事業に採択され、2025年12月から実証試験が始まる。
※1 NEDO…国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
25年前、脱炭素と資源循環を両立する、革新的技術が産声を上げた。廃棄物を化学的に分解し原料に変える。手掛けたのはJFEエンジニアリングの技術者だ。同社の廃棄物ガス化技術は、2000年に国内ごみ回収施設で世界に先駆け商用運転を開始。以後、4つのプラントで20年間動き続けた。世界的にも稀有な事例だ。しかし、事業拡大は難しかった。ガスの化学品原料としての可能性をアピールしたが、需要に結びつかず今までは創出したガスを発電に利用している状況だった。
25年間、ポテンシャルを活用しきれなかった技術。脱炭素化の取り組みが世界的に進む今、再注目されている。「一般的な廃棄物処理では、焼却時に発生する熱を回収して発電を行い、再生可能エネルギーを電力会社に供給しています。カーボンニュートラルを目指すにはもう一歩先の技術が必要です」と、同社取締役専務執行役員環境本部長の鮎川将氏は指摘し、付け加える。
「当社は2つの先進技術に取り組んでいます。1つ目が、焼却発電後にCO₂を回収して利用するCCUS※2。焼却発電の脱炭素効果を高めます。2つ目が、廃棄物の持つエネルギーをガスとして回収するWtC※3。当社独自の廃棄物ガス化技術を高度化し、パートナーとの共創でニーズに応え、市場を拡大していきます。当時開発に携わった技術者の再結集と共に人員強化も図り、組織的取り組みを開始しました」
※2 CCUS…CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:CO₂回収・貯留)」と「CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO₂回収・利用」)」の2つを合わせた言葉
※3 WtC…Waste-to-Chemical、廃棄物ケミカルリサイクル
同社の廃棄物ガス化技術は、廃棄物をガス化炉に入れ、そこに酸素を吹き込む。廃棄物自身の熱で反応が進み、H₂(水素)とCO(一酸化炭素)を含むガス化が起きる。
なぜ、世界で実用化に成功しないのか。その難しさを鮎川氏は説明する。「廃棄物ガス化では、廃棄物と酸素のバランスを制御し、不完全燃焼の状態をつくることが必要です。当社の技術はプラスチックのみでなく、一般ごみも対象。原材料が幅広い点も優位性があります。一方で、中身の不明な廃棄物に対し適切な酸素量を見極めるには、多くの試行錯誤とたゆまぬ挑戦が求められました」
技術の確立では、同社の源流である製鉄分野における酸素やガスを取り扱う知恵が生かされた。鉄鋼でも不純物を燃焼するために酸素を吹き込む。しかし、炉に入っているのは鉄だ。原料を分析し酸素量を最適化できる。
同社は20年の施設運営の中で様々なデータを収集し、ガス化炉内部の状況を類推して廃棄物の入れ方、酸素量などを制御する技術を確立した。2000℃に達するガス化炉の維持にも製鉄時代の経験が役立つ。
同社の技術は今、廃棄物ケミカルリサイクルの観点で注目が高まる。「回収したガスから動脈産業のプラスチックやSAF※4の原料などへ利用促進を図り、資源循環の実現を目指します。世界でも商用運用の成功例はまだありません」と鮎川氏は話し、付け加える。
※4 SAF…Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料
「当社と積水化学工業が提案した『ガス化改質と微生物を用いたエタノール製造による廃棄物ケミカルリサイクル技術の開発』が、NEDOのグリーンイノベーション基金事業に採択されました。採択理由は、世界でも希少な長期商用稼働実績を持つ廃棄物ガス化技術と、ケミカルリサイクル用途の可能性に対する評価と考えています」
同基金における実証試験は2段階で実施。まず小規模施設で行い、その結果を反映して大規模設備フェーズに入る。2025年12月より商用設備の10分の1規模(日間処理量20トン)の試験設備で実証運転を開始する。
「ガスを化学品原料として提供する場合、生産性の拡大とガスの量や品質の安定が求められます。実証のポイントは、ケミカルリサイクル用途向けガス化技術の高度化です」(鮎川氏)
大規模設備フェーズでは、廃棄物ガス化から積水化学工業によるエタノール製造まで一貫して実施。両社の技術を組み合わせた仕組みを構築し、全体最適化を図る。脱炭素性能や経済性の評価も行う計画だ。
2030年度の商用化に向け、廃棄物由来原料を使ったリサイクル品の製造技術、それを利用する動脈産業側企業との連携も必要となる。「当社のエネルギー部門や営業部門とも連携し、様々な企業と幅広く協議を行っています。技術の確立により新しいビジネスモデルを創造できるため、非常に関心は高いと感じています」と鮎川氏は話し、社会実装に向けた課題を述べる。
「廃棄物由来のリサイクル品は、現時点では通常より割高になる見込みです。技術革新によるコストダウンと共に、制度面も政府や関係会社との間で議論を深めていきたいと思います。一致団結、健やかな心と体で技術を磨く“心技体”を大切に、廃棄物ケミカルリサイクル商用化の道を切り開いていきます」
国策としての期待、大きな社会的意義に応えるべく、社運を懸けた挑戦は続く。
JFEエンジニアリング株式会社
時代のニーズに即応する総合エンジニアリング企業