事業承継の中で、
いかに「地域に根差す教育」
を守るか
― アソシエ・インターナショナルは、2019年に事業承継支援ファンド「TOKYOファンド」からの支援を受ける。その際、内山氏は外部出身者として代表取締役に就任した。事業をファンドに託すこと、経営を外部出身者に託すことを選んだ狙いは。
もともとの背景としては、創業者に後継者がいなかったことがあります。しかしそれ以上に、当社は品川区・目黒区・港区を中心に教育施設を展開し、長く地域との信頼関係を築き上げてきたからこそ、創業者が大切にしてきた「地域密着の教育事業」をいかに守り育てていくか、という課題感が大きかったようです。事業承継にあたり、創業者は様々な選択肢を検討しましたが、東京都が資金を拠出し、中小企業の事業承継を中立的な立場で資本面と経営面から支援する目的を持ったTOKYOファンドのビジョンに共感し、ファンドからの支援を選択しました。
外部出身の私が経営を引き継ぐことになった理由も、教育への想いを共有できたことにあります。じつは私はもともと金融機関出身。子どもを保育園に預けられないと言う理由で退職を選ぶ同僚の姿に「保育の重要性」を痛感したことで、社内に保育事業を立ち上げ、その後に保育・教育業界へキャリアチェンジした経緯があります。創業者とは保育事業の協会を通じて交流があり、2017年に事業参画の誘いを受けました。私自身も品川生まれで地元に愛着があり、地域に根差した保育を実現したいという想いがあり、事業へのジョインを決意しました。
― ファンドからの事業承継のサポートについて。
ファンドを運営する日本プライベートエクイティ(以下、JPE社)は、事業承継に関する幅広いノウハウを持ち、当社の意向に合ったトータルなサポートを受けることができました。例えば、JPE社は親族による承継、外部人材への承継など、様々なケースを経験しています。私のような外部からの承継の場合に気をつけるべきポイントや、組織のガバナンス、経営上で決めるべきルールについても、親身にアドバイスをいただきました。
なお事業承継にあたり、注力したのが資金調達のための適切なブラッシュアップです。MBOローン方式の活用や、事業収益から返済を進める際の金利や条件に関する金融機関との交渉では、JPE社にご尽力いただきました。また、新たな投資に向けた資金計画の戦略立案においても、頼れるパートナーとして相談に乗っていただいています。
― 内山氏が代表就任直前16億円だった売上高は、現在52億円を超え、職員数も4倍に。事業承継からこれほどのスピード感を持って成長を実現できたのはなぜか。
創業者の教育への信念を共有し、この事業をより良く育てたいという想いがあったからだと思います。当社は「この街で、一緒に育てる、一緒に育つ」をモットーに、地域の子どもたちに徹底して寄り添う保育を行ってきました。私が行ったのは、その姿勢を引き継ぎながら、進化させていくことです。
例えば、私が就任以降、東京都内に新設した認可保育園では、言語習得期や心の発達途上にある子どもたちに適切な規模を考慮し、定員を70名以下として開設することを旨としてきました。少人数制を導入することで、子どもたちが安心して過ごせる環境を提供しながら、保育者の働きやすさも確保し、質の高いサービスを目指しています。また、場所によって保育内容が異なることがないよう配慮もしています。目黒区内には現在13園を展開していますが、どの園に入園しても同じ質の保育を受けられる仕組みを整えています。こうした「最後に選ばれる本物をつくりたい」という強い想いで実行してきた一つひとつの積み重ねを、地域の皆さまが受け入れてくださったことが、現在の結果につながっているのだと思います。
ファンドからのサポートは
「ブランド価値向上」
にも大きく貢献
― ファンド運営会社の視点が入ることは、経営にどのような効果をもたらしているか。
JPE社は、当社が本当に目指すべき道はどちらか、それを共に考えてくれる重要な経営のパートナーだと感じています。ファンド担当者からもらった印象的なひと言があります。それは「アソシエならではの価値とは何か、そこからぶれずに進めましょう」という言葉。たとえば保育園は、つくればつくるほど補助金を受け取ることができます。しかし瞬間的にキャッシュが増えても、それが5年後、10年後に本当に当社にとって必要な園の新規展開、設備投資なのか。そこをしっかりと見極めなければ真の成長は望めません。JPE社はガバナンスやファイナンス面については意見をくださいますが、事業の特殊性に関わる部分についてはこちらに任せるスタンス。単なる拡大路線ではない関わり方が非常に新鮮でした。もし利益還元第一の株主に譲渡されていたなら、今のような成長はなかったと感じています。
― 企業ブランディングには、どのような効果があったのか。
教育事業にとって最も重要な、「信頼」の構築に大きく貢献していただいていると感じています。具体的な取り組みの例で言うと、『めぐろのおやさいクレヨン』の開発があります。これは野菜の廃棄部分を着色料として使用したクレヨンで、JPE社を介して出会ったメーカーの技術を使い、保育園のある目黒区の生産農家であるKURIYAMA FARMとの共同企画により実現したもの。本当の野菜の色が再現できるとご好評をいただき、子どもたちが自然や食材に親しむきっかけを提供するだけでなく、保護者や地域社会からも大きな反響がありました。この取り組みは、単なる商品開発にとどまらず、保育理念に基づいた体験型の教育を広める一助ともなっています。

めぐろのおやさいクレヨン
大きな志のある事業こそ、
「ファンドに託す」
という選択肢を
― 創業者の想いを受け継ぎ、目指す教育事業の未来とは。
赤ちゃん期から小学生まで、子どもたちの成長を長期的にサポートすることができる、地域の子育て支援センターのような役割を担うことを目指しています。というのも現在、男女ともに育児休業の取得が増え、在宅ワークも普及していること、またそもそもの出生数の減少により、0歳から保育園に預けるご家庭は減少しています。保育園の利用形態の多様化に伴い、当社としても様々なサービスの提供に向けて、保育園に入る前のご家庭が日中気軽に利用できる地域ふれあい子育てひろばや、お子さんの成長や発達に心配をかかえるご家庭のための児童発達支援教室の拡充を進めているところです。現在運営する、学童保育や放課後ひろば、習い事教室なども、今後のニーズに合わせて柔軟な対応が必要だと考えています。
― 最後に、事業承継を考える企業にひと言。
地域社会への貢献といった高い志やビジョンを持つ企業ほど、事業承継に関する悩みは尽きないと思います。でも、だからこそ事業をファンドに託すという選択肢を前向きに検討してみるのも手ではないでしょうか。
TOKYOファンドは、短期的な転売や利益の最大化を目的としたものではなく、地域貢献度の高い事業にコミットし、支援終了後も持続可能で安定した成長を目指す仕組み。今後も多様な事業への支援が進むことが期待されています。実際に支援を受けた当社が確信していることは、TOKYOファンドは次世代のための経営基盤を整え、企業としてさらなる発展の可能性を広げることができる有効な手段であるということです。
以下の事業を通じて支援を行っています
中小企業支援「事業承継支援ファンド」
中小企業の事業承継を円滑に進めるとともに、事業承継を契機とした次なるステージへの成長を促進していく制度。
詳しくはこちらから
ファンド運用の詳しい情報は下記サイトをご参照ください
東京都産業労働局では、中小企業の「事業承継」支援のため、
新たに以下のファンド組成を予定している。
TOKYO白馬の騎士ファンド(令和6年度・新規事業)
後継者がいない中小企業に対して、企業の理念に共感する友好的な経営者を社外から迎え入れた会社に
出資や支援を行い、より円滑な中小企業の事業承継を促進します。
















