


Keynote Session, Closing Session
ホアン氏は日本とベトナムの良好な関係を示す例として、2023年11月に日本とベトナムが外交関係を最上位に当たる「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げしたことを挙げた。2024年3月に、日本とベトナムの官民連携の枠組みである「新しい日越共同イニシアチブ」を立ち上げたことにも触れ、イノベーションやDX(デジタルトランスフォーメーション)促進、経済成長などに共に取り組んでいることを紹介した。
ホアン氏が人民委員会副委員長を務めるホーチミン市は、2030年までに近代的かつ創造的なスマートシティーになることを目指している。「ホーチミン市が経済、財務、貿易、文化、教育、科学の中心になり、デジタル経済やデジタル社会で先行していくことを目指している」(ホアン氏)
ホーチミン市は2025年に成長率2桁を目指すなど、高い成長目標を掲げている。2025年の成長のうち、デジタル関連が40%を占めることを期待しているという。ホアン氏は「野心的な目標だが、今回のフォーラムを学習の機会とし、目標を達成したい」と語った。
ホアン氏は「早く進みたければ一人で、だが遠い目的地までたどり着きたければみんなと一緒に」という言葉を紹介し、「今回のフォーラムをきっかけに協力事業が生まれ、両国の発展に貢献することを望んでいる」と続けた。
世界のマーケットでの飛躍を期待
続いて登壇した伊藤氏は、両国の包括的戦略的パートナーシップの成果として、2024年12月にホーチミン市で開業したベトナム初の地下鉄である都市鉄道1号線を紹介した。「電車で通勤・通学する人が増え、バイクを運転していた時間を仕事や自分の好きなことに充てられる。ホーチミンの人々の暮らしが着実に変化しつつある」(伊藤氏)
都市鉄道1号線はキャッシュレスのチケットを導入しており、クレジットカード、QRコード、国民IDカードでの支払いが可能だ。このシステムは、ベトナムのIT最大手FPTコーポレーション傘下のFPTインフォメーション・システム(FPT IS)が構築した。伊藤氏は「キャッシュレスシステムの利便性は大変優れている。都市鉄道1号線は両国の企業の強みを生かして協業し、実現したインフラだと感じる」と評価した。
伊藤氏はベトナムがDX推進に力を入れており、それに伴ってデジタル産業が急成長していることに触れ、「日本企業にとってビジネスの機会があふれる国になると確信している。日本や日本企業はベトナムのDXを進める上で最良のパートナーになり得る」と語った。一例としてベトナムのIT関連企業と日本企業の連携を挙げ、「デジタルマーケティングのような消費者のニーズやトレンドに適応した製品を提供するなど、競争力の向上につながる新しいイノベーションの創出ができるのではないか」(伊藤氏)とした。
伊藤氏は、「両国の企業がDXを推進することでベトナム、東南アジア、更には世界のマーケットで飛躍していくことを期待している」と展望を語った。
人材交流をさらに進める
Keynote Speechでは国家イノベーションセンター(NIC)のホアイ氏が、ベトナムにおけるデジタルを使ったイノベーションの状況について説明した。
ベトナムは現在、4割を超える企業がDXなどのデジタルを活用したイノベーションに取り組んでいるという。ホアイ氏は「政府は、イノベーションをサポートする政策を立案したり、機会を提供したりして応援している」と紹介した。
イノベーションにおいては、日本と共同で進めている取り組みも多い。ベトナムのIT企業が日本企業向けに多くのサービスを提供しているほか、半導体分野での協業や、互いの国に対する投資や融資の機会も多いという。ホアイ氏は「NICとしても、ほぼ毎日のように日本と共同で進める活動がある状況だ」と打ち明けた。
今後は「より両国の関係を緊密にしたい」(ホアイ氏)。半導体産業、AI(人工知能)、スマートファクトリーなどの人材育成での協力のほか、日本との協力によりベトナムにおける日本企業の投資や事業展開を促進していくとした。
各地域のユーザーを理解し、体験を高める
Grabベトナムのアン マーケティングディレクターは、同社がベトナムで2014年から展開してきた配車アプリのビジネスを振り返った。「ベトナムの皆様にデジタルのメリットを感じていただきたい、より良いユーザー体験をしていただきたいと考えて事業を進めてきた」(アン氏)
Grabは東南アジア各国でビジネスを展開している。アン氏は、「それぞれの国でビジネスを展開する際、その国のユーザーをよく理解した上で、最適なユーザー体験や顧客満足度の向上について考える必要がある」と指摘した。Grabはこれまで、社会的に弱い立場にある人を支援するサービスの強化に特に力を入れてきたという。
アン氏が紹介したサービスの1つが、ベトナムで誕生した妊婦向けのサービス「Grab-For-Mom」だ。ベトナムにおいて妊娠中の女性は国民性が影響し、「必要な配慮をしてほしいとなかなか言い出せない傾向がある」(アン氏)。
こうした女性を支援するため、Grab-For-Momは乗車前からドライバーに女性が妊娠中であることを伝える。これにより、「ドライバーが車のドアを開けたり、重い荷物を代わりに持ったり、路面の状態が悪い道ではスピードを落としたり、といった様々なサポートを提供している」(アン氏)。
アン氏は「これからも、ベトナムをはじめビジネスを展開している各国で、ユーザーを深く理解してサービスを提供していきたい」と展望を話した。
日本とベトナムこそ最上の組み合わせ
Closing Speechに登壇した早稲田大学ビジネススクールの入山氏は、「これから日本とベトナムは新しい未来、新しいビジネス機会をもっともっとつくっていける」と強調した。
入山氏は、経営学においてイノベーションを生む条件とされているのが、「知の探索(Exploration)と知の深化(Exploitation)の両方を進めることだ」と説明した。このうち知の深化はAIで代替可能だが、「探索は人間にしかできない。知らない場所を、多くの失敗をしながら進んでいく必要があるためだ」(入山氏)。
企業が探索を進める上で最も効果的な手法が、離れた場所でビジネスを展開している企業とコラボレーションすることだという。日本企業のコラボレーション相手について入山氏は「ベトナムの企業がベストパートナーだ」と断言した。「日本は多くの技術を持っており、製造業などの分野で卓越した経験があり、投資に余力がある会社も多い。一方でベトナムは、若いエネルギーやアントレプレナーシップを持った起業家がたくさんいる」(入山氏)
入山氏は「オープンイノベーションを起こす組み合わせとして、ベトナムと日本ほど最高の組み合わせはない」と指摘し、「両国で一緒になってさらに発展し、世界の発展に貢献していければよい」と語った。