


Special Panel Session
双日の源流である鈴木商店、岩井文助商店、日本綿花の3つはいずれも1800年代に設立された。水嶋氏は「双日は2004年に発足した若い会社ではあるが、根底には160年にわたる経験、知識、伝統がある」と語った。
入山氏は、総合商社について「日本だけにある業態で、簡単に言うと経済のインフラだ」とベトナム人の参加者に向けて説明した。総合商社のビジネスは、「ネットワークを強みに、今まで組み合わさっていなかった業者と業者をつなげる」(入山氏)。
双日の前身である旧日商岩井は1986年、西側諸国として初めてベトナムに事務所を開設した。当時のベトナムは米国など西側諸国との関係が良好ではなく、厳しいビジネス環境にあったが、「ベトナムは我々にとって非常に重要な国になると考え、事務所を開いた」(水嶋氏)。
こうした海外での展開において重要になっているのが、「誠実な心で世界を結び、 新たな価値と豊かな未来を創造する」という同社の企業理念を基に事業を展開することだという。双日は現在、約70人の日本人がベトナムに駐在し、約8400人のベトナム人と共に働いている。水嶋氏は「各駐在員に、自分の考える誠実さと敬意を持ってベトナムの方に接するように、と常々伝えている」と明かした。
双日グループ企業理念およびスローガン
入山氏は「経営学では、人はしっかり納得した考えでないと行動に移せないと考える」と指摘し、「強い会社は、遠い未来に向かって社会にどう貢献していくかということについての明確な方針を立て、それに全ての社員が納得している。双日もこれを実践できているから強い」と続けた。
入山氏は、日本には長寿企業が世界で最も多いことを紹介し、「長く生き残る企業は共通して、家訓を大事に守りながら、一方で時代に合わせて変化してきた」と説明した。水嶋氏も「企業理念は守りながら、特に海外で壁にぶつかったときは、それを乗り越えるために変化してきた」と同意した。
水嶋氏はベトナム市場における同社の変化について「物を作るための労働力を目当てにしていてはもうだめだと考え、リテールや食品、サービス事業などの展開を進めている」と説明し、「今後はここに、DX(デジタルトランスフォーメーション)のような新たなテクノロジーも組み合わせていかなくてはいけない」とした。
入山氏は「ベトナムは優秀なIT人材が多く出てきているので、日本企業はベトナムの大学と連携するなどして、デジタル人材の交流に注力してほしい」と期待を語った。
創業時の会話が現在に続くビジョンに
ビン氏は、同社の創業のきっかけを「友人の生活を良くするためだった」と明かした。1988年の設立当初、その友人たちと今後実現したいことを挙げていった。その際に「強く豊かな企業を目指す」「科学技術とエンジニアリングの分野を選ぶ」「ベトナムを世界で胸を張れる国にする」「すべての社員に、物質的に十分で、精神的にも豊かな生活を提供する」といったことが挙がったという。ビン氏は「そのとき出たキーワードのいくつかは、今でもFPTのビジョンとして生きている」と語る。
2000年代に日本に進出したことは、「教育」の重要性に気付き、それを新たな会社のビジョンに加えるきっかけになったという。FPTは当時、初の海外進出に失敗し、窮地に陥っていたところだった。そんな中、ある日本企業の社員が「ベトナムのソフトウエアには可能性がある」と、社員数人の日本への渡航費を負担してくれたという。
ビン氏はその渡航をきっかけに日本で初めての仕事を得た際、「日本で仕事をするには日本語が必要だと学んだ」(ビン氏)。そこでベトナムの首相に直談判し、「ITエンジニア向けの日本語学校を設立させてほしい」と嘆願したという。これがきっかけとなって設立されたのが現在のFPT大学だ。ビン氏はFPT大学をはじめとした教育システムを作っていく中で、「教育こそが、夢や情熱を持つ人材を育て、イノベーションを生み、科学技術への情熱を持つ人を増やす鍵になる」と確信したという。
FPTもビジネスを大きく変化させ続けてきた企業だ。近年はAI、半導体、自動車、DX、GXに焦点を当てている。ビン氏は「AI向けのチップに関してはベトナムに大きな可能性があると考えている」とし、「FPTは50万人のITエンジニアをAIエンジニアに転身させることを約束する」と続けた。
FPTの中長期戦略重点分野
入山氏は、「日本は半導体の製造は弱いものの、関連産業は非常に強い」と指摘した。具体的には半導体の検査装置や、半導体に必要な樹脂などの分野に強みがあるとし、「日本とベトナムが半導体分野で力を合わせれば大きな可能性があるはずだ」と期待した。
ビン氏も「日本は半導体製造装置や材料などの分野で世界トップレベルの競争力を持っている」と入山氏に同意した。そして「日本とベトナムが半導体分野で協力し、補完し合えば、新たな黄金時代を築くことができると確信している」と強調した。
入山氏は、「国際情勢が不安定になり、デカップリング(経済分断)の時代だといわれるようになったが、逆に言うと世界中が不安定だからこそ、安心安全で優秀な人材の確保が必要な状況だ」と述べた。半導体分野においては「日本とベトナムが間違いのない最強の組み合わせなので、オープンな半導体外交をできるようにしていくべきだ」と展望した。