


フォーデジット
フォーデジットはデジタル領域を中心としたサービスデザインを得意としており、それに付随したデジタルプロダクトの構築支援やDX(デジタルトランスフォーメーション)支援、新規事業立ち上げの支援なども手掛けている。東南アジアではベトナム以外にも、タイの首都バンコクとマレーシアの首都クアラルンプールに拠点がある。
田口氏は東南アジアでのビジネス展開について、「一口に東南アジアと言っても、国によって文化や国民性は全く違う」と指摘した。ベトナムについては「若い人が多く、インフラの整備が進み、成長の土台が整ってきている」(田口氏)。
一般に、経済が発展すると多くのサービスが生まれるため、ユーザーは様々なサービスの中から、より良い体験ができるものを選択するようになるという。その際に必要になることについて田口氏は、「表面的なデザインだけでなく、どういう価値を届けるかまでを含めた、サービスのユーザー体験全体をデザインすることだ」と説明し、「当社はそういったデザインのお手伝いをさせていただいている」と続けた。
サービスをデザインする上で欠かせないのが、ユーザーに対する理解を深めることだ。ユーザーの行動から、どういった生活をしているか、サービスをどのように使っているか、サービスをどう使ってもらうのかといったことを検討する。それらを踏まえてユーザーのニーズに応えるサービスを作ることになるが、それでも「作ったものが一回で最初から長期的にうまくいくケースはほとんどない」(田口氏)。
その理由は、時間の経過によって環境が様々に変わるためだ。「ユーザーの環境や、サービスを利用する端末のシステムのアップデート、セキュリティー対策など、時間がたてば必ず何らかの変化が起きる」(田口氏)。そのため、環境の変化を考慮してサービスの利用体験を修正するプロセスを繰り返す必要がある。田口氏は「デザインは一回で消費するものではなく、資産のように少しずつ積み上げていくもの、と考えることが重要だ」と説いた。
人間中心設計(HCD)のプロセス
実際にベトナムをはじめとした東南アジアの市場は、短期間で大きく変化しているという。田口氏は「よく訪問するようになったのが8年ほど前で、ホーチミンでは5年前からビジネスを展開しているが、その当時と比べてベトナムは本当に様変わりした」と話した。街の風景やファッションなどが変わり、ユーザーの行動も変化したという。
田口氏は「ベトナムの社会が多様化していく中で、ユーザーが何を求めているか、どういう行動をするかにフォーカスしてサービスを提供していくことがとても大事になっている」と強調した。
ベトナムで日系メーカーのデザインを支援
末成氏はサービスデザインの事例として、イオングループが日本で提供している金融アプリを紹介した。同アプリを通じたサービスは、フォーデジットがサービスデザインをサポートしている。
イオンが提供する金融アプリは、残高確認やQRコード決済、クーポンの配布など、様々な機能を備えている。末成氏は「たくさんの機能を提供する一方で、それによってユーザーを迷わせてはいけないと考えてサービスデザインに取り組んだ」と振り返る。
そこで、それぞれのユーザーが最も利用したい機能をシンプルに使えるよう、「各ユーザーが最適な体験を選択できるようにデザインした」(末成氏)。具体的には、アプリを開いた際に、そのユーザーが最も使う機能が最初に表示されるようにした。
イオングループの金融アプリは海外で数多くのアワードを受賞
西村氏はベトナムで同社が手掛けた事例として、日本の自動車メーカーがベトナムで提供しているアプリのユーザーインターフェースを改善させたケースを挙げた。
フォーデジットがこの事例に関わることになったきっかけは、自動車メーカーが自社アプリの使い勝手の悪さに悩んでいたことだという。「様々な機能を追加した結果、使いにくくなってしまったことに悩んでおり、我々にご相談いただいた」(西村氏)
そこでフォーデジットは、ユーザーがアプリをどう使っているか、アプリに対して何を求めているかといったことを調べることから取り組みをスタートした。西村氏は「そこで判明した調査結果から課題を抽出し、改善策を実際のデザインに落とし込んでいった」と話した。
その結果、アプリの使い勝手は向上し、「ユーザー体験デザインのプロセスと効果についてベトナム人の管理職の方々にも理解していただくことができた」(西村氏)。サービスデザインは単にアプリの使い勝手にとどまる話ではなく、店舗での顧客体験など様々なことに応用可能であるという認識も共有でき、直後にカーディーラー体験のプロジェクトに参画することになったという。
この自動車メーカーとのプロジェクトは現在も続いており、「電気自動車などの新しい商品にまつわるサービスや、金融など他の領域と関連するサービスのデザインについてもサポートさせていただいている」(西村氏)。
このメーカーとの取り組みの中で、特にユニークなものとして末成氏が紹介したのが、バイクのメンテナンス支援サービスの構想中に得たユーザーインサイトだ。男女問わず多くのベトナム人がバイクを日常の移動に使っているが、「日本における“ママチャリ”のように、日々の移動のためのツールという認識で、状態が良いかどうかに意識が向いているケースがほとんどない」(末成氏)。
バイクは機械であり、電気も利用しているため、一定間隔でメンテナンスをしないと事故などの問題が起きる可能性が高まる。しかし年配の人や女性などの場合、本人がバイクのメンテナンスにハードルを感じるケースが多いという。そこでフォーデジットが調査をしたところ、「例えば大学生の女性であれば、父親や彼氏などに協力してもらってメンテナンスをしていることが分かった」(末成氏)。このケースに限らず、サービスデザインのプロセスは、ユーザーの日常生活の中で行われていることを深く理解することから始まり、最終的な体験設計につなげているという。
専門家の活用が新しいアイデア創出の鍵に
西村氏は、「ベトナムにおいても、サービスデザインについて理解してもらうことのハードルは他のASEAN諸国と同様に高い」と話す。例えば、ベトナム企業は社内にデザイナーが在籍していることが多く、「我々が、『サービスデザインに関わらせてもらえないか』と伝えても、『デザイナーならもう社内にいる』と言われてしまうことが多くある」(西村氏)という。
だが社内のデザイナーが担当する場合、「デザインする範囲が表層的なビジュアルだけに限られたり、発想が社内で閉じたものになってしまったりしがちだ」(西村氏)。一方でフォーデジットのような専門の企業がサポートすることで、「しっかりとした調査に基づいた、優れたサービスデザインが可能になる」(同)。
末成氏も「社内ではなかなか生まれない、新しいアイデアを形にする際にも、我々のような様々な業界での経験を持つ専門家のナレッジを生かしてほしいと考えている」と強調した。
フォーデジットが提供するデザイン領域