朝日工業社
シビアな要求に応え続け、40年で累計出荷1万ユニット超
設備工事と機器製造の両輪で
半導体工場にシナジーを生む
創立101年の歴史を有する、東証プライム上場の朝日工業社は設備工事事業とメーカー機能を有する機器製造販売事業を併せ持つ、珍しい企業だ。製品開発から施工まで一気通貫でソリューションを提供。精密な空気制御を実現し、半導体製造ラインへの採用が進む。同社の高度な制御技術、そして今後について聞いた。
朝日工業社の始まりは1925年。紡績会社の温湿度調整を祖業とする。空調などの設備工事事業で長年培った高度な技術を製品にも昇華させるべく、1984年に機器事業部が誕生した。
きっかけの1つに、半導体製造装置メーカーからの相談がある。一般的なクリーンルームの温度制御は±1℃程度。この環境では装置がうまく稼働しなかった。装置メーカーからの要望は±0.5℃の温度制御。同社は要望に見事応えてみせた。今でも同社の主力として展開する「ASCシリーズ」の誕生である。
(左)朝日工業社 執行役員 機器事業部長 上木信二 氏
(右)同社 執行役員 機器事業部 副事業部長 兼 営業部長 古谷正義 氏
●図1 半導体製造工程を支える超精密制御技術製造装置の周囲にサーマルチャンバと呼ばれる部屋で密閉空間を構築。その中に朝日工業社の「精密空調機」から極めて清浄度の高い空気を供給して循環させることで、製造工程に必要な環境を提供する
かくして機器事業部が動き出し、設備エンジニアリング企業の中にメーカー機能があるという、珍しい事業体が実現した。同社執行役員機器事業部長の上木信二氏は、「空気をつくる設備工事事業と、空気を操る機器製造販売事業。この両輪を併せ持つ点が、当社の特徴です」と強調する。
機器事業部では現在、半導体の製造に欠かせないクリーンルームに必須の「精密空調機」(図1)や、後述する「高効率顕熱空調機」など、製造業向けに各種環境制御装置を手掛ける。同社執行役員で機器事業部副事業部長兼営業部長の古谷正義氏は、「40年で累計出荷台数は約11500ユニットに上ります。これだけの実績は他にありません」と胸を張る。
製品は海外にも輸出する。中国、韓国、台湾など主要納品先の国々でメンテナンス体制を整備。万全のサポート体制を顧客の近くに用意し、安定生産を支えている。
課題に制御技術で挑む
ニーズに一気通貫で対応
●図2 上位モデル「高性能温湿調機」精密空調機「ASCシリーズ」の上位モデル。温度制御±0.05℃以内、湿度制御±0.5%RH以内に常時コントロールしている
最先端の半導体は、製造工場内の温湿度のわずかな揺らぎが歩留まりに大きく影響する。高い要求に応える製品の一つが、先述の「ASCシリーズ」。±0.5℃精度の空調を小型の筐体で実現し、あらゆる工場への導入が可能な製品だ。さらなる上位モデルとして、±0.05℃の温度制御と±0.5%RHの湿度制御を安定的に提供できる「高性能温湿調機」(図2)もリリース。同製品の開発も、顧客からのシビアな要望がきっかけだ。
「30%の省エネに加え、省スペースを求められました。従来品の製品幅は1100mmでした。他社が900mmならできると答える中、当社は試行錯誤の末、750mmへの縮小を実現。採用いただき、数十台を納品しています」(上木氏)
かように同社は従来、顧客からの要望に応える形での開発が多かった。しかしそれだけでは危ういと古谷氏は言い、次のように続ける。
「自社で分析したトレンドや技術検証に基づいた開発が、市場に受け入れられるとは限りません。ニーズを聞くだけでも、ニッチになりすぎ価格が跳ね上がり、他所に売れない恐れがあります。両者の方向性を融合させなければ、汎用品は生み出せません」
この困難な課題に挑む同社は、設備工事事業との連携を強化する。「設備工事と同時に必要な機器を一社で賄える企業は、そうありません。既存設備から要件に合わせた機器の提案なども行えます」(上木氏)。設備工事事業に寄せられた顧客ニーズに応える製品を、機器事業部で形にするといった施策も進めている。
さらに、つくばに新たに開設した技術研究所には、半導体装置開発に必要なクリーンルームほか、研究設備が充実。各部門が協力し、設備を活用して新たな開発に取り組んでいる。
最大45%の省エネを実現
「世界をもっと最適に」
AIの活況を背景に、半導体工場の大規模化が止まらない。欧州を中心にフロン規制の厳格化も進む。半導体工場における省エネルギー、環境保全が強く求められる。
朝日工業社も機器の省エネ対応を強化。精密な温度制御を行う際、従来は一旦0℃付近まで急速に温度を下げ(過冷却)、目的とする温度まで再加熱するプロセスを踏んでいた。これには莫大なエネルギーが必要だ。そこで過冷却を必要としない、新たな省エネ型空調機「高効率顕熱空調機」を開発。最大45%の消費電力削減を実現した。この他、GWP(地球温暖化係数)が低い冷媒への置き換えも手掛ける。「より一層の省エネ、脱フロンに向けて研究を進めています」(上木氏)
半導体業界は日進月歩だ。同社も製品の高性能化に向けて歩みを止めない(図3)。現在の±0.05℃温度制御を、±0.01℃まで高めることにも挑戦中だ。一方で従来型のレガシー半導体にも堅調に需要はある。「今後もトレンドを捉え、多様なニーズに応えていきます」(古谷氏)
●図3 チラー(冷却装置)のバージョンアップ水や熱媒体の液温を管理しながら循環させ、製造装置を冷却するチラー。顧客の要望に応え、小型化・多系統化の両立に成功した
同社は2025年の創立100周年を機に、新たな企業理念「ASAHI-PHILOSOPHY」を制定した。「情熱と技術で、世界をもっと最適に」をパーパスに、長年培ってきた制御技術に環境負荷を低減する技術を加え、社会の持続可能な発展を支えていく。
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