SUSTAINABLE SOCIETY & SOLUTION SUMMIT

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「デジタル分野における両国の協力の可能性は無限」
両国DX推進のキーパーソンが講演

Opening Remarksはベトナム科学技術省のブー・ハイ・クアン筆頭副大臣と伊藤直樹 駐ベトナム日本国特命全権大使が務めた。Keynote Speechには、ビングループのレ・マイ・ラン副会長/ビンユニバーシティ学長、ベトナム科学技術省のチュ・トゥック・ダット技術・イノベーション庁副局長、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が登壇した。Panel DiscussionではNami Technologyのグエン・ヴィエット・チュオン営業ディレクターが登壇し、会場に表示されたリアルタイム翻訳をはじめとした、同社のAI(人工知能)テクノロジーについて紹介した。
ベトナム科学技術省 筆頭副大臣 ブー・ハイ・クアン氏
ベトナム科学技術省
筆頭副大臣
ブー・ハイ・クアン 氏

 ベトナム科学技術省のクアン氏はベトナムがサプライチェーンにおいて果たす役割について「現在の生産拠点という立場から、将来は設計や製品開発に移行していきたい」と展望した。そのうえで日本政府、日本企業、日本の大学・研究機関と3つの分野で重点的に協力するアイデアを示した。

 1つ目は日本企業の誘致だ。AIや半導体、DX(デジタル変革)、製造、物流といった分野において、日本企業がベトナムに投資し、研究・設計センターや製品の試験センターを作ることを奨励するとした。「日越共同のイノベーション・ラボを構築し、共同で製品の開発や市場展開にも取り組みたい」(クアン氏)。

 2つ目は人材の共同育成だ。クアン氏は「日本の大学や企業と協力し、AIエンジニア、IC設計技術者、データサイエンティストなどの育成プログラムを展開したい」と語った。

 3つ目はベトナムのスタートアップ企業に対する日本からの投資拡大だ。クアン氏は「日本の投資ファンドや企業グループ、スタートアップ支援組織から、ベトナムのテック系スタートアップ企業に対してもっと投資してもらいたい」とし、「ベトナムのスタートアップが日本市場に参入する支援もお願いしたい」と続けた。

デジタル分野における協力の可能性は無限

駐ベトナム日本国特命全権大使 伊藤直樹氏
駐ベトナム日本国特命全権大使
伊藤直樹 氏

 在ベトナム日本大使館の伊藤氏は、「日本とベトナムの関係は2023年に包括的、戦略的パートナーシップへと格上げされた」と紹介し、「このパートナーシップは、これからベトナムの力強い成長、発展を強力に支える揺るぎない基盤になる」と強調した。

 伊藤氏は2026年1月の、林芳正総務大臣によるベトナム訪問に触れた。林大臣はハノイで開催された「日ASEANデジタル大臣会合」に出席し、ベトナムのファム・ミン・チン首相や、グエン・マイン・フン科学技術大臣とも個別に会談した。会談では、デジタル分野における日越連携について活発に意見が交換され、「林大臣はICT、5G、AIなどの分野で協力を進めていきたい意向を伝え、フン科学技術大臣は日越AI企業フォーラムを共同開催したいと提案した」(伊藤氏)。

 伊藤氏は「会談で、デジタル分野における両国の協力の可能性は無限だという認識を共有した」と振り返った。

エコシステムに集まるデータを意思決定に生かす

ビングループ 副会長 ビンユニバーシティ学長 レ・マイ・ラン氏
ビングループ
副会長
ビンユニバーシティ学長
レ・マイ・ラン 氏

 ビングループのラン氏は「ベトナムが飛躍する時代に入っている中で、ビングループは国づくりに貢献し、国際社会におけるベトナムの地位確立に寄与したい」と話した。

 ラン氏はビングループの2025年の純収益が過去最高を記録し、ベトナムのGDP(国内総生産)の2.6%を占めるまでになったことを紹介した。その中で、大型不動産プロジェクトと並んで有力なビジネスになっているのが、電気自動車ブランド「VinFast」だという。ラン氏はVinFastの利用などを通じて、「ベトナム人がベトナム製品を信頼して利用するようになった」と胸を張った。

 ラン氏はビングループの今後の展開について、「国内で企業を発展させるだけでなく、ベトナムと世界をつなぐ役割を担っていきたい」と語った。

 ビングループが世界に打って出るうえで重要になるのが、ベトナム国内で築いているビングループのエコシステムだ。スマートシティの「Vinhomes」、リゾートの「Vinpearl」、医療の「Vinmec」、ビンユニバーシティの教育システム、電気自動車ブランドの「VinFast」などがベトナムの全34省市に広がっており、エコシステムを形成しているという。ラン氏は「エコシステムには現在1700万人の利用者がおり、多くのデータを生み出している。これは将来の意思決定のための燃料になる」と説明した。このエコシステムを、AIをはじめとしたテクノロジーと組み合わせることで、国際展開を進めていくという。

 AI活用のために必要になる人材育成についても言及した。ベトナム政府が公表した「実戦的なAI人材を10万人育成する」という計画について、「ビングループとビンユニバーシティで、今後5年間で2万人のAI人材育成を引き受ける」(ラン氏)とした。

企業のイノベーション活動を様々な面から支援

ベトナム科学技術省 技術・イノベーション庁副局長 チュ・トゥック・ダット氏
ベトナム科学技術省
技術・イノベーション庁副局長
チュ・トゥック・ダット 氏

 ベトナム科学技術省のダット氏は最初に、2025年に施行した「科学技術およびイノベーション法」について言及し、「科学技術を生活の中に持ち込み、製品を生み出すこと、すなわちイノベーションを実現することを目的にしたもの」と説明した。

 ダット氏は従来のイノベーションに関する取り組みについて「決議や政策、仕組みは多いが、弱いのは実行段階だった」と指摘した。科学技術およびイノベーション法はこの弱みを解消するため、イノベーションについての法的枠組みと、活動のための明確なルールを定めたものだ。具体的なルールとしては、イノベーションをプロセスではなくアウトプットで評価すること、管理と実行の全過程をデジタル基盤上で行うことなどがあるという。

 イノベーションに挑戦する企業を資金面で支える取り組みも進める。イノベーション活動を実施している企業への融資については国が金利を一部負担する、イノベーションによって生み出された新しい商品だと認定したものについては利用者側と企業側の双方を支援する、といったことに取り組んでいくという。

 イノベーションに挑戦する企業同士をつないだり、研究機関や大学と連携させる取り組みも進めていくとした。

日本とベトナムは足りない部分を補い合える

早稲田大学大学院経営管理研究科 早稲田大学ビジネススクール 教授 入山章栄氏
早稲田大学大学院経営管理研究科
早稲田大学ビジネススクール
教授
入山章栄 氏

 早稲田大学ビジネススクールの入山氏は「AIの浸透により、人材育成はこれから大きな変革の時代を迎える」と指摘した。

 入山氏は「この圧倒的に不確実な世界において、競争力を保つために世界中の企業がイノベーションを起こすことが不可欠になっている」と語った。イノベーションを起こすためには新しいアイデアが必要になり、そのための方法として「自分たちのナレッジを、離れた別の地域のナレッジと組み合わせることが有効であると、100年前には既に明らかになっている」(入山氏)。

 離れた地域の企業の組み合わせとして、入山氏は「日本とベトナムは最適だ」と強調した。今後はAIの浸透により「業務の効率化については全てAIが担うようになる。人が担い続けるのは、超上流で失敗を重ねながらイノベーションを起こすことと、対面の接客など人にしかできない下流の業務だ」(入山氏)。日本とベトナムはただ離れているだけでなく、「高齢化により人材は不足しているが下流のノウハウを持つ日本企業と、若い人材は豊富だがノウハウがないベトナム企業、といった具合に足りない部分を補い合える。上流・下流の両方で助け合えるのだ」(同)とした。

AIを使った音声生体認証に強み

Nami Technology 営業ディレクター グエン・ヴィエット・チュオン氏
Nami Technology
営業ディレクター
グエン・ヴィエット・チュオン 氏

 Nami Technologyのチュオン氏は、同社について「AI製品の開発に知的資源と労力を集中しているスタートアップであり、尖ったソリューションを開発している」と説明した。

 Nami Technologyの具体的な注力領域として紹介したのがAIを使った音声処理だ。このフォーラムでは登壇者の話す内容が、リアルタイムで日本語、もしくはベトナム語に翻訳され、壇上に表示されていた。このシステムを開発したのがNami Technologyだ。

 同社が音声処理に必要な技術を多数開発している中で、特に独自性が高いのが「音声生体認証(ボイスバイオメトリクス)」だという。チュオン氏は「通話の際に利用した場合、相手の声を事前に登録しておけば、最初の数秒で認識できる。AIによるなりすましも見抜ける」と説明した。

Nami Technology の主要音声AI技術

Nami Technology の主要音声AI技術

 こうした特徴から、ベトナムでは銀行や保険などの金融分野での採用が多いという。同社は東京にもオフィスを開設しており、チュオン氏は「今後は日本市場でも存在感を高めたい」と展望した。

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