


フォーデジット
フォーデジットは、徹底したユーザー理解を礎に、デザインの力でビジネスとユーザーをつなぐデザインパートナーだ。サービスデザインからデジタルプロダクト開発・市場導入までを一貫して手掛け、日本やベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアなどアジア圏を中心に展開している。
各拠点でのビジネスについて田口氏は「単なるオフショア拠点としての活用ではなく、現地のメンバーがローカルのクライアントに並走しながらサービスを提供している」と説明した。
フォーデジットが提供するサービスデザインについて、田口氏は「一般的に“デザイン”は表層的なビジュアルを整えることと捉えられがちだが、我々にとってのデザインは、クライアントの事業課題を解決するための有力な手段だ」と続けた。
サービスをデザインする上で欠かせないのが、ユーザーへの深い共感だ。「ユーザーがどのような生活を送り、いかなる文脈でサービスを利用しているのか。その行動の裏にある想いを理解し、共感することが本質的な課題解決に繋がる」(田口氏)。そのための具体的な手法として、現場での徹底したリサーチやユーザーインタビューを通じ、解像度の高いユーザー理解を追求している。
フォーデジットのサービスデザインの領域は多岐にわたる。「企業のミッション、ビジョン、バリューの策定支援から、従業員向けシステムの利用体験向上、さらにはデジタルプロダクトの構築・運用や顧客チャネルの改善まで、サービス全体をデザインする過程で必要となるあらゆる顧客接点をトータルで構築している」(田口氏)。
田口氏が事例として紹介したのが、2023年に実施した、JCBのカード会員向けアプリ「MyJCB」のリニューアルだ。JCBと、サービスデザインを担当するフォーデジット、システム構築を担当するNTTデータの3社が共同で開発した。
JCBは広くブランドが認知されている一方で、「顧客と直接つながるデジタル接点が弱い」という課題を抱えていたという。MyJCBのリニューアルは「単なるツールの刷新ではなく、アプリを“顧客との深いコミュニケーションの場”と再定義してプロジェクトが始動した」(田口氏)。
プロジェクトでは、日本全国であらゆる世代に使われているというJCBのサービスの特徴を踏まえ、幅広い世代の50人以上のユーザーにインタビューし、さらに大規模なオンラインサーベイを実施するなどした。これにより世代ごとの違いを丁寧にひも解くと共に、細かなセグメントごとに「どういうお店で、どういうタイミングでアプリを開くのか」といった使い方の違いを分析していった。
調査で見えてきた最大の発見は「実は便利な機能が揃っているにも関わらず、認知されていないということだった」(田口氏)。これを踏まえ、リニューアルは単に見た目を整えるだけでなく、「情報の優先順位を整理して、正しく伝えるためのデザインを取り入れることを重視したものになった」(同)。
徹底してUX(ユーザーエクスペリエンス)を追求した結果、リニューアル後はユーザーによるMyJCBの活用が進み、これまであまり使われていなかった便利な機能を積極的に活用するユーザーも増えたという。加えて「優れた品質が世界的にも認められた」(田口氏)。MyJCBは、ユーザーエクスペリエンスに優れたアプリとして、ドイツの「iF DESIGN AWARD 2025」やイタリアの「A’ Design Award & Competition」 など、各国で表彰を受けているという。
MyJCBアプリのリニューアル事例
ベトナムにおける事例として紹介したのが、イオンエンターテイメントがベトナムに進出する際にオープンした映画館での取り組みだ。イオンモール内に作られた映画館で、「モールとの相互送客などが期待されていた」(田口氏)。
フォーデジットは映画館におけるキオスク端末の設計とWebサイトのデザインを担当した。キオスク端末のプロジェクトは、システム構築を担当したNTTデータ、決済の仕組みを提供したPayooと3社共同で取り組んだという。田口氏は「NTTデータの堅実なシステムとPayooの決済基盤を活用し、フォーデジットがユーザーが心地よく使える体験へと翻訳・統合した」と説明した。
キオスク端末はチケットなどを購入するためのもので、現金でも利用できるが、キャッシュレス決済をメインに利用する形を期待されていたという。キャッシュレスをメインに据える理由は、「顧客の利便性向上だけでなく、現場スタッフのオペレーション負荷をどう減らすかということもテーマとしてあった」(田口氏)。
映画館の開業後は、キオスク端末の使い勝手についてユーザーから高い評価を得ているという。田口氏は「顧客が迷わずキャッシュレス決済できるUI(ユーザーインターフェース)/UXを設計したことで、約90%の比率でキャッシュレス決済が利用されており、現場のオペレーション負荷も軽減できている」と強調した。
映画館「イオンベータ」のWebサイトとキオスク端末のデザイン事例
キオスク端末において高いキャッシュレス比率を達成したことについて、フォーデジットの末成氏は「日本の事例に多い、既存システムがあるケースと異なり、最初からキャッシュレスを前提にしたシステムを設計・提供できたことが大きかった」と振り返る。「既存のユーザー体験を変えるのではなく、新たに最適なユーザー体験を考えるという、別のアプローチを採ることができた」(末成氏)。
そもそも、ベトナムにおいては、日本とは違う姿勢でプロジェクトに臨めるケースが多いという。末成氏は「成功する理由をたくさん積み上げてからプロジェクトを始める日本と違い、ベトナムはまずマーケットに出してみて、それから改善しようという考えがある」と指摘し、「それぞれに良さがあるが、リリースする際の速度感など、ベトナムの事例から日本が学ぶべきポイントは確実にある」と続けた。
一方、日本ならではの強みとして紹介したのが買い物に付くポイントの文化だ。末成氏は「日本人はポイントを貯めたり、活用を楽しんだりする文化があるが、ベトナムをはじめとした東南アジアではこれがまだあまり浸透しておらず、即時キャッシュバックが好まれている」と指摘した。
末成氏はJCBがベトナムでデジタルを活用した即時キャッシュバックに取り組んでいることに触れ、「ベトナムの市場背景を反映したもの」と紹介した。しかし今後は「ベトナムでも確実にポイント利用は広がっていくはずで、それに対応したサービスも展開していきたい」(末成氏)。
末成氏は「ポイントのように、日本ならではの知見をベトナムでのビジネスに取り入れるクロスボーダーな取り組みには大きな可能性がある」とし、「ただしポイントなどはあくまで機能であり、その先にあるユーザーの感情に訴えかける情緒的な価値こそが、今後はより重要になっていくと考えている。フォーデジットはそうした体験設計のお手伝いをさせていただきたい」と展望した。