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「人とテクノロジー、データを組み合わせて収益を生む」
双日CDOが明かす、独自のDX人材育成方法

総合商社の双日は、「Digital in All」という言葉を掲げ、あらゆる事業・業務においてデータとテクノロジーの活用を進めている。早くから事業展開を進めてきたベトナムにおいても、同様の方針でDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めてきた。現在は、デジタル活用を担うDX人材の育成にも力を入れており、独自の育成プログラムを活用している。同社のDX人材育成法について、荒川朋美取締役 専務執行役員 CDO(最高デジタル責任者) 兼 CIO(最高情報責任者) 兼 デジタル推進担当本部長が語った。
双日株式会社 取締役 専務執行役員 CDO(最高デジタル責任者) 兼 CIO(最高情報責任者) 兼 デジタル推進担当本部長 荒川 朋美 氏
双日株式会社
取締役 専務執行役員 CDO(最高デジタル責任者)
兼 CIO(最高情報責任者)
兼 デジタル推進担当本部長
荒川 朋美 氏

 双日は、前身である日商岩井時代の1986年に、西側諸国の企業として初めてベトナム政府に許可され、駐在事務所を設置した。荒川氏は「現在はベトナム全土において、各種の産業で20以上の会社を展開し、ベトナムの皆様と価値創造をしている」と紹介した。

 同社は「Digital-in-All」と称して、全社的に取り組んでいるデジタル戦略についても説明した。「全ての事業にAI(人工知能)やデータといったテクノロジーを活用することで、既存ビジネスの価値向上・競争力強化に加え、新たな事業創出による価値創造を推進している」(荒川氏)。

 AIについては、産業機械などにAIを搭載する、「フィジカルAI」と呼ばれる形の活用に注力しているとした。一例が、長崎県鷹島で進めている本マグロの養殖事業だ。同社マグロ養殖事業の総コストの約6割を占めるエサ代の削減に向け、水中カメラとAIを掛け合わせた「満腹度判定システム」を導入した。深くて巨大な生け簀では困難であった適切な給餌量をAIが正確に見極め、無駄なエサの大幅カットを実現。その他、破網検知AIや赤潮予測システムなどとの相乗効果により、事業収益を12%向上させることに成功している。

 荒川氏はAI活用において重要なものとして、データと人材を挙げた。データについては、「世の中にあるオープンデータではなく、自社が経験やオペレーションによって積み重ねてきたデータが重要だ」(荒川氏)。加えて、「データの取り方も重要になる。それ次第で、AIが学習できるかできないかが決まるためだ」(同)とした。

 双日には自動車本部、リテール・コンシューマーサービス本部など7つの営業本部があり、事業会社も400〜500社程度ある。事業が多岐にわたっており、内容も大きく異なる。「事業分野ごとに持っているデータも全く違うため、分野ごとのデータを使ってどう価値を出すかということを全社的に取り組んでいる」(荒川氏)。

2つのスキル分野でデジタル人材を育成

 人材については、2022年に双日独自の教育プログラムを作り、それに基づきデジタル人材の育成を進めている。

 同社は大きく2つのスキル分野でデジタル人材を育成している。1つ目の「データ分析(AI/Data Utilization)」は、データやAIを活用するためのプログラムだ。一般的にAIサイエンティストやデータサイエンティストと呼ばれる人材に求められる能力の習得を目指す。

 もう1つの「ビジネスデザイン(Business Design)」は、デジタルテクノロジーを活用して収益を上げるビジネスモデルを作る人材を育成するためのプログラムだ。一般的にビジネスリーダーやビジネスクリエイションリーダーなどと呼ばれる人材に求められる能力の習得を目指す。

双日のデジタル人材育成の全体像

双日のデジタル人材育成の全体像

 どちらについても、「入門(Entry)」から「ソートリーダー(Thought Leader)」までの5段階に分けて育成を進めている。特に注力しているのが、レベル4に当たる「エキスパート(Expert)」の育成だ。荒川氏は「AIを効果的に活用するDXエキスパートを育て、人とテクノロジー、データの3つを組み合わせて収益を生んでいきたい」と説明した。

 具体的には、2026年度の終わりまでに総合職の 50%にあたる約 1000 人を応用レベルに、さらにそのうちの 10%にあたる約 200 人をエキスパートレベルに育成することを目指し、順調に進んでいる。

 現在、7つの営業本部のうち4人の本部長(役員)が、エキスパートのコースを修了した段階だ。エキスパートは、約7カ月をかけて約190時間学習し、その後ケーススタディへの取り組みと卒業課題の提出がある。荒川氏は「コースでの学習を通じて、デジタルによる価値創造をしっかりとビジネスに反映させることができるようになってもらう」と狙いを説明した。

 これだけの規模でデジタル人材の育成に取り組むことについて荒川氏は「全社一丸となってテクノロジーを活用して価値を出す、総合商社として次の段階へ行く、という当社の決意の表れだ」と語った。

DXエキスパートの育成状況

DXエキスパートの育成状況

育成プログラムは定期的な見直しが必要

 荒川氏は人材育成のプログラムについて「1度作って終わりではなく、市場やテクノロジーの状況を見ながら必要なアップデートをし続ける、サステナブルに人材を教育するということが非常に重要なポイントだ」と強調した。

 双日の育成プログラムについても「2022年に作ったものなので、その後のテクノロジーの進化に応じて、ソフトウエアのようにアップデートしていくことが欠かせない」(荒川氏)。実際に2025年11月には、「デジタル人材育成体系 2.0(DX Expert Training Program 2.0)」を発表している。

DX Expert Training Programを2.0にアップデート

DX Expert Training Programを2.0にアップデート

 育成プログラムのアップデートに伴い、既にコースを修了した社員にもスキルのアップデートを求めるという。「1回エキスパートになったら勉強が終了する訳でなく、常に学習し続けるようにというメッセージを出している」(荒川氏)。

 荒川氏は「当社の育成プログラムはどの会社でも適用できる内容になっていると自負している」とし、「デジタル人材の育成に取り組み、人とテクノロジー、データを組み合わせ、全ての企業がさらに価値創造を進めていけると考えている」と続けた。

荒川 朋美 氏
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