
2024年12月5日、ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラムの第3回推進委員会が「ニューロインクルーシブな職場を考える」をテーマに開催された。冒頭、同フォーラムと日本産業保健法学会との就業規則に関する共同研究について説明があり、同学会理事の吉田肇氏からも共同研究に向けたメッセージがオンラインで寄せられた。続いて、パーソルダイバースが取り組む障害者雇用とニューロダイバーシティ促進事業に関する解説、および同社が運営する就労移行支援事業所「Neuro Dive」利用者による研究成果発表も行われた。
後半は、協賛企業の参加者が「ニューロインクルーシブ宣言」の事務局草案をもとに、宣言内容について議論を展開した。

日本産業保健法学会 理事(弁護士法人天満法律事務所)
吉田 肇 氏
日本産業保健法学会は、職場において法に基づいた産業保健の推進を支援し、健康障害の発生防止やそれが原因となる紛争の発生予防、さらに紛争が発生した場合の適正な解決を学術的観点から研究するとともに、それを現場に適用し、生かしていくことを目指す学会だ。同学会理事の吉田肇氏は「ニューロダイバーシティの考え方を職場に広げていくことは大切だと考えた。企業の産業保健がより良いものとなり、働く人たち、さらには企業の発展に結びつくような取り組みに対し、フォーラムおよび現場の方々と協働することで貢献していきたい」と語った。

パーソルダイバース
人材ソリューション統括本部 取締役執行役員
井上 雅博 氏
パーソルグループの特例子会社であるパーソルダイバース。パーソルグループ各社から受託する事務系作業に加え、食品製造や養蚕、農作業など、働く場所と多様な業務をそろえることで多様な就労機会を用意している。
さらに、転職・就職を希望する障害者人材の企業への紹介や、先端ITスキルを学べる「Neuro Dive」をはじめとする就労移行支援事業も展開。最長2年間でAIや機械学習などの高度スキルを身に付け、スペシャリストとしての就職を目指すための学習環境を用意している。
同社の井上雅博氏は、とりわけDXを実行する人材の育成に焦点を当てていると語る。Neuro Diveで実際に先端ITスキルを身に付けた利用者も登場し、研究成果を披露した。
フォーラム事務局が作成した「ニューロインクルーシブ宣言」の草案をもとに、協賛企業の参加者たちが意見を交わした。
まず日経BP 総合研究所 主任研究員の小板橋律子が、宣言文の草案と、それに基づくアクションプランを読み上げた。
それに対し、草案とアクションプランに関して「大きな違和感はなく賛同できるものの、文章表現に違和感や分かりにくい点がある」という意見があった。

一方、大和ハウス工業 本社経営管理本部 Well-being推進室次長の小西淳史氏は「内容が精神に偏っている印象がある。当社は、すべての人がニューロダイバーシティに含まれると考えており、精神/発達障害の有無や障害以外の個人特性に限らず、すべての読み手が共に過ごすことへの安心感や働きやすさを想起できるよう考えるべきではないか」と提起した。

Kaien 就労支援事業部 法人サービス担当ゼネラルマネージャーの大野順平氏は、「大きなキーワードである『ニューロダイバーシティ』の理解が人によって分かれているという問題意識がある。そこをまず整理するのが近道では」と語った。両氏の意見に対して小板橋は「誰もがニューロダイバーシティであり、一人ひとりが違うわけだが、中でも課題感が多くないがしろにされがちな人々が含まれていることを明確に言わなければ、という思いで精神障害・神経発達症を強調した」と応じた。
大野氏は「ニューロダイバーシティは概念なのか、人を表現する形容詞なのか、あるいは運動なのか。ニューロダイバーシティとは何かが定義されていない」と改めて指摘。株式会社日本総合研究所 創発戦略センターシニアデベロップメントマネジャーの木村智行氏も「ここで言うニューロダイバーシティは多様性がある状態のこと。その状態を目指すことで理念になっていくのでは。そのため、宣言で取り扱うものが何であるかを定義したうえで、表現を採用していくことが重要になる」と話した。
野村総合研究所 メドテックコンサルティング部グループマネージャーの高田篤史氏が「ニューロダイバーシティにはまだ明確な定義や共通理解がないため、宣言内に言葉の前提を入れたほうがいいのではないか。前提を付けなければ、理解が進んでいない現状ではその後の話がうまく続かない」と語るなど、この日はニューロダイバーシティの定義や宣言文内での扱いに関する意見が多く出された。
そのほか、「精神障害や発達特性の話が突然出てくる印象があるので、ストーリーの中に入れていく必要があるのでは」(大日本印刷 ダイバーシティ&インクルージョン推進室エキスパート・藺牟田有梨氏)、「多くのニューロダイバーシティの特性や障がいをお持ちの方にも読んでいただきたいので、一文一文をよりコンパクトに整理したほうが、幅広い方々が理解しやすいのでは」(いちごアセットマネジメント 副社長 パートナー・石塚愛氏)など文章構成に関する意見もあった。