
2025年2月6日、ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラムの第4回推進委員会が開催された。テーマは「IT人材の活躍事例と環境整備による高度な就業機会の創出」。まずは株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)から、高度IT人材の獲得におけるニューロダイバーシティ人材活用促進の取り組みについて講演が行われた。続いて、独自基準の採用・育成で人的資本経営に先進的に取り組むSHIFTによる講演と、日本総研・SHIFT両社によるパネルディスカッションを実施。
後半は2024年度の活動の振り返りと2025年度の活動予定が報告され、最後に3月公表予定の「企業の成長戦略としてのニューロダイバーシティ宣言」に関する議論が展開された。

株式会社日本総合研究所
創発戦略センター
シニアデベロップメントマネジャー
木村 智行 氏
日本総研は、発達特性を有する人の企業における新たな就労機会創出に向け、能力発揮に適した環境整備と業務設計を促進するための「ニューロダイバーシティマネジメント研究会」を立ち上げた。
多様性をイノベーションに生かす枠組みづくりを進めてきた同社の木村智行氏は、IT領域の人材課題に着目。IT人材の獲得にはニューロダイバーシティが重要になるとの考え方を披露。発達特性のある人はアンコンシャス・バイアス等によって能力発揮の可能性が阻まれているとし、企業にとっては発達特性の理解とそれを強みに変えられる業務領域の特定およびマネジメント手法がポイントになると指摘して、IT分野の業務で行った具体的な分析事例も紹介した。

SHIFTは、IT領域でソフトウエアの品質保証を軸に、DX総合サービスの提供へと事業を拡大してきた企業だ。人事領域に広く携わる上岡隆氏と棚田純大氏が、同社の取り組みを解説した。
「IT業界では従来、エンジニアが開発から品質保証まで一貫して担う文化があった。しかし当社では専門性に特化する業務分解を行い、作ることが得意な人は作ることに、品質保証が得意な人はそちらにと、それぞれが活躍できる形を導入している」と棚田氏。たとえIT業界未経験でも、分解した各業務が得意と思われる“素養のある人”の能力を生かすという発想だ。
「採用では、分解した要素を独自の検定試験に落とし込み、面接では測れない“素養”を実際の業務に近い形でテストして、定量評価で見極めていった。その結果、検定の点数が高い人は実務でのパフォーマンスも高く、生産性に大きな差が生まれることを確認した」と上岡氏は話す。
育成についても同様にスキルを分解し多数の検定を設け、自ら学び合格することで評価され、昇給に直結する制度を設計。社員が自律的にキャリアを実現できるようになっている。
業務は分解しても、人は丸ごと受け止め大切にしているのも特徴だ。基本属性や職務内容、実績、勤怠といったデータだけでなく、同意を得たうえで家族構成ややりがい、人間関係や悩みごとまでも含めた一人ひとりのパーソナルデータを450にも及ぶ項目で細かく把握。独自の人事システムで“個”を理解し、違いを見極めたうえで、人的資本価値を最大化させるべく最適配置するなど、“個”を尊重している。

このあと、日本総研の木村氏とSHIFTの上岡、棚田両氏によるパネルディスカッションが行われた。
「“餅は餅屋”で、業務は得意な人が担ったほうがいい。得意を生かすという発想」と、棚田氏は特性や素養を生かす重要性を指摘。「どうすれば活躍できる人を採れるか考えたとき、業務だけでなく働く条件面まで含めて分解していった結果、採用がうまく進み、実際に成果も上がっている」という上岡氏のコメントからは、具体的な取り組みのヒントが得られそうだ。
両社のディスカッションを受けて、パーソルダイバース 人材ソリューション本部エキスパートの柳澤 誠一郎氏は「企業では苦手なことにフォーカスしがちだが、いかに得意なところに目を向けられるか、その環境づくりが重要なポイントと感じた」と語った。

最後に2024年度の本フォーラムの活動報告と今後の取り組みについて発表があった。初年度はニューロダイバーシティの社会的認知促進に向けて、セミナーや推進委員会の開催、メディア発信などに取り組んできた。一方で、フォーラム参加・賛同企業の拡大や課題解決のための支援提供、発信強化等に課題が顕在化している。
日経BP 総合研究所 主任研究員の小板橋律子は2025年度の取り組みとして、企業経営層とビジネスパーソンの認知・理解拡大に向けて交流の場や勉強会を増やすこと、推進委員会では筑波大学や日本産業保健法学会との共同研究プロジェクトを予定していること等を報告。ニューロダイバーシティをESGの“S”の観点から掘り下げていくことへも言及があった。
検討を重ねてきた「企業の成長戦略としてのニューロダイバーシティ宣言」については、最終文案を基に最終調整のうえ3月中に発表することが決まり、2024年度最後となる第4回推進委員会が閉会した。