
株式会社日本総合研究所
創発戦略センター
シニアデベロップメントマネジャー
木村 智行 氏
日本総研において社会課題解決に取り組むインキュベーション組織・創発戦略センターで、多様性をイノベーションに生かすための活動に携わる木村智行氏。同社は「発達障害(神経発達症)の有無に関係なく、個々の持つ能力を発揮できる社会の実現を目指し活動している」と語った。
取り組みのアプローチは「就労機会の創出」と「当事者の能力発揮支援」の2本立てだ。このうち「就労機会の創出」は「企業雇用における新たな就労機会」と「企業雇用に限らない就労機会」の二つに分け、前者では主に発達特性のある人の可能性と能力発揮に適した環境整備に焦点を当てた「ニューロダイバーシティマネジメント研究会」を2024年8月に立ち上げた。
特にIT人材に注目し、その理由として木村氏は「発達特性と好相性の可能性」「IT領域が高付加価値であること」「IT領域における人材ニーズの高まり」の3点を挙げ、この三つを重ね合わせると新たな就労機会を創出できるとした。人手不足で高付加価値人材の獲得が難しくなっているが、発達障害(神経発達症)のある人特有の能力とITの相性の良さに着目した先行事例が海外を中心に多く生まれている。そのため「IT/DX人材の獲得戦略においてニューロダイバーシティが重要なポイントになると考えている」と木村氏は話した。
しかし国内ではまだ事例が少ないとし、理由を「いわゆるアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の存在が大きい」と指摘する。「環境を用意して資質を見いだし、能力を開発して職場で活躍してもらう流れが必要であり、アンコンシャス・バイアスというボトルネックの解消が求められる」と語った。

研究会では、それぞれの特性を理解し強みに変えるために、発達特性と相性が良いと考えられる業務領域を特定しマネジメント手法を検討・共有している。個々の適性を見極める必要はあるが、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の特性はIT人材の業務やイノベーション創出と好相性になる可能性がある。
木村氏は、研究会の会員企業の高度IT業務での分析事例を紹介した。その業務では、発達障害(神経発達症)の特性と相性が悪い場合が多い「関係者との調整・交渉」の要素が全体の35%あった。そこで業務を分解して分離していくと、その要素を6%まで低減でき、人材採用および活躍の可能性が大きく広がる結果となった。
「今後は専門性と対人関係スキルのいずれも持つスーパージェネラリストを求めるのではなく、業務をスキルで要素分解し、専門性を伸ばしていきやすい人に着目し組織内に高度な専門性を取り入れるアプローチが重要になるだろう。研究会でもそうした視点で取り組んでいく」と木村氏は話す。