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レッツノートの“スゴ技”がここにある
パート2「レッツノートの冷却システムのスゴ技」
続いて戸田氏が話を訊いたのは、レッツノートの冷却システム設計を担当する白神和弘氏。小型軽量でありながらメインマシンとしても使えるCPUパワーが求められるレッツノートでは、CPUから発生する熱をうまく放出するのにかなりの困難がつきまとうはず。開発者はそこをどのようにクリアしているのか?

パナソニック株式会社 AVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部
先行開発部 開発2課 主幹技師
なぜモバイルパソコンに放熱設計が必要か
戸田 まずは、「なぜモバイルパソコンに冷却システムが必要なのか」という人もいると思うので、そのあたりからお話し願えますか?
白神 わかりました。ポイントは大きく2つあります。1つは、安全性の問題です。モバイルパソコンはビジネスツールとして日常的に体に触れて使うものなので、熱くなるとそもそも不快ですし、場合によっては低温やけどをするケースも出てきます。2つ目はパフォーマンスの維持です。放熱/冷却性能が弱くてパソコンが高熱になると、ソフトウエア側でCPUのパフォーマンスを下げようとするんですね。そのため性能が犠牲になってしまいます。
戸田 ヘビーに使うと温度が上がりがちだし、かつA4サイズのノートパソコンなら大きなファンを搭載できるけど、モバイルではそういうわけにもいかない。だからより高度な放熱設計が求められる、というわけですね。

シミュレーションを用いて早い段階で問題を見極める
戸田 ではレッツノートの冷却システムは、どんな工夫がされているんでしょう?
白神 前提として、レッツノートは他のモバイルノートに比べて、本体全体に占める基板サイズが大きいんです。安定した性能を出すにはインテルのデザインガイドに従う必要があり、そのためにはある程度の基板サイズが必要になるので。また、長時間駆動を求められるため、電池も大きめのものを搭載しなくてはならない。となると、冷却システムの搭載スペースは必然的に限られてきます。そこで、我々の一番の命題は、“冷却効率を充分に満足させつつも小さく軽いシステムをいかに開発するか”になります。
戸田 そのためにどんなことをしているのですか?
白神 まずはどうすればそのような冷却システムを実現できるかを、製品づくりのできるだけ早い段階で見極めることが大事。そこで熱シミュレーションを用いて、試作品を作る前に問題を潰し、ファンの性能目標や、他の放熱方法を決めるようにしています。その決定をファンメーカーなどと共有しつつ、設計を進めていきます。
戸田 なるほど。ただ、シミュレーションの結果で決めてからも、そこから設計が変わることはあるんですよね?
白神 もちろんです。簡易試作を行ってみた結果、構造設計を見直さなくてはならないとか、ファンの冷却性能が想定よりも出ないとかいうことが起きた場合は、次の試作ステップまでに対策を考えます。内部にどんどん部品が詰め込まれていくと、風の流れが止まってヒートスポットができてしまう、などということもあるんですよ。
戸田 「こんなところにケーブルを這わせやがって!」とか「こんなところに絶縁シートを貼りやがって!」みたいなことですね(笑)
白神 そうです(笑)。それを見越して、あらかじめシミュレーションで、不利な状況になった時の数値を設定して予想を立てたりもします。
レッツノートSZの冷却システムにはこんな進化があった!
戸田 ここにレッツノートMXとSZの冷却システムがありますが、形状も大きさもずいぶん違いますね。
白神 SZのものはいわば進化版ですね。
戸田 どのように進化しているのですか?
白神 先ほども申したように、我々冷却システムの開発者にとって一番の命題は“いかにして冷却性能を高めつつシステムを小さく、軽くするか”。小ささについても、電気設計や機構設計のメンバーと、殴り合いながら抱き合うみたいな感じで場所を取り合い、設計をしているのですが、レッツノートにとってより重要なのは“軽さ”なんです。
戸田 “軽さ”が最優先事項と。

白神 ええ。ではどうやって軽くするかを考えた時に、冷却システムで一番重いのはヒートパイプなんですね。ファンは樹脂製で軽いですから。じゃあヒートパイプを小さく、短くするから、その分、ファンを大きくさせてよ、と。 それで実現したのがこのSZ用の冷却システムです。MXではCPUの横に冷却システムを設置し、CPU部分からヒートパイプを延ばしていました。これに対し、SZでは、CPUの真上に冷却システムを積層する形で設置することで、ヒートパイプを劇的に短くしているんです。
戸田 ああ、本当だ!
白神 これにより、冷却システムの重量を、MX用では22gだったところ、SZ用では18gに削減し、ファンからの風量も10%アップできました。軽くしながら冷却性能を向上させられたわけです。
戸田 これはすごいですねえ。
白神 もちろんSZは、本体にある程度厚みがあり、だからこそ冷却システムをCPUの上に積層で配置できたというのはありますが。


ここからまた3割は冷却システムを軽くしたい
戸田 発熱量を抑えるというのであれば、CPUにCore Mを使えばファンレスでもできてしまうような気もするのですが。
白神 いやいや、SZのようなレッツノートのメインストリームのマシンは、やはりCore iでないと。RZはCore Mを搭載していますが、やはりファンは付けていますよ。ファンレスだとパワーブーストした際に放熱がキツイので。
戸田 これからも冷却システムのさらなる“小型・軽量化”を追求していくんですよね。1gでも軽くするのは大変だと思いますが。
白神 そうですね、かなり大変です。でもここからまた3割ほどは軽くしたいと考えています。
戸田 3割ですか! しかも冷却性能を向上させつつ、ですよね。レッツノートユーザーとして、引き続き注目していきたいと思います。
白神 ぜひご期待ください。

モバイルパソコンを購入する際に、CPUのスペックなどには注目しても、無線LANの速度や、放熱設計を気にする人はほとんどいないだろう。ただし実際は、無線LANの接続速度が遅かったり、放熱設計が充分でなくパフォーマンスが低くなったりすると、ビジネスシーンでの生産性の低下に直結する。
今回、実際に現場の開発者に話を聞いてみることで、レッツノートがこうした“目には見えにくいけれども大事な部分”にまでいかにこだわり抜いて開発されているかを改めて知ることができた。レッツノートは正直、価格的には安いとはいえない。しかし、このようなこだわりを知れば知るほど、ユーザーは「レッツノートを選んでよかった」と満足感が深まるはずだ。もちろん私自身もその1人。これからもビジネスツールとしてあらゆる角度から死角のない製品づくりを期待したい。






