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特集

迫る「2025年の崖」を中小企業はどう乗り越えるのか?
2024年8月29日公開

迫る「2025年の崖」を中小企業はどう乗り越えるのか?

-人的資本とデジタル資本への投資がDXを成功に導く-
日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長 大和田尚孝氏インタビュー

レガシーシステムの残存によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が阻害され、その結果、最大年間12兆円もの経済損失が生じると指摘される「2025年の崖」 。あらゆる業種業界・規模の企業においてDXの推進が急務となる中、IT予算や人員が限られた中小企業の情報システム部門は、どのような視点に立って「2025年の崖」、ひいてはDXに取り組んでいかなければならないのか。日経BP総合研究所イノベーションICTラボ所長の大和田 尚孝氏に、目前に迫った「2025年の崖」に対処するためのDX推進の勘所と、ビジネスPCを含むデジタル資本への投資のポイントについて聞いた。

残り1年を切った「2025年の崖」、中小企業がDX推進に取り組むべき理由とは

あと1年に迫った「2025年の崖」について、改めてお聞かせください。

大和田 「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が公表したレポート「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~(※)」で、提示された言葉です。これは、日本企業が老朽化した既存基幹システムを運用し続けた場合、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が困難となり、業務効率・競争力が大幅に低下、ビジネスの成長はおろか事業継続さえも危ぶまれるようになってしまうという問題です。経済産業省の試算によれば、競争力の低下でもたらされる経済損失は2025年以降、年間約12兆円にも達すると予測されています。

 事実、レガシーなハードウェアやアプリケーションを刷新せずに使い続けることには、今後、大規模なシステム障害が頻発するリスクがあります。また、長年にわたってカスタマイズによる機能拡張を続けてきた結果、システムが複雑化し、改修が困難になっていたり、新たなシステムに移行したりすることが難しいケースもあるでしょう。加えて、これまでレガシーシステムの保守運用を手掛けてきた技術者が定年により退職するなど、人材不足の発生も問題の深刻化に拍車をかけています。

※参考リンク:「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」(METI/経済産業省)


日経BP 総合研究所
イノベーションICTラボ所長
大和田尚孝(おおわだ・なおたか)氏
SEを経て2001年日経BP入社。『日経コンピュータ』記者としてエンタープライズIT分野の取材を重ねる。10年副編集長。12年アジア事業プロデューサー兼務。14年に日本経済新聞社出向、IT/通信業界を担当。17年日経コンピュータ編集長。19年『日経クロステック』IT編集長を兼務。20年4月総合研究所イノベーションICTラボ上席研究員。22年4月から現職。

「2025年の崖」は中小企業にとってDXを推し進めるチャンスでもある

「2025年の崖」への対処が企業規模を問わず急務ですね。しかし、大企業と比べて情報システムに充てられる予算や人員が限られている中小企業は、なかなか対策に踏み出せないケースもあるようです。

大和田 おっしゃる通り、特に「ひとり情シス」と呼ばれるような、一人の担当者がネットワークからサーバ、アプリケーション、PCまで、すべてのシステムの導入・運用に加え、社内からの問い合わせ対応も行っているようなケースでは、日々、それら業務に追われ、2025年の崖への対処、ひいてはDXに取り組みたくとも、なかなか手が付けられない、といった状況にあると思われます。

 しかし、今後、先に述べたような予期されるトラブルが頻出すれば、ひとり情シスの負担はますます増加し、システムの安定維持という「守りのIT化」だけでなく、戦略的なIT化、すなわちビジネスを成長させるための「攻めのIT」にも取り組めなくなるなど、負のスパイラルに陥りかねません。そうしたことから、中小企業であっても、2025年の崖を乗り越えていくためのDXに今すぐに取り組んでいく必要があります。



中小企業のDXの現状はまだ満足できるレベルではないということですね。

大和田 そうなのですが、見方を変えれば、「今こそ中小企業がDXを推し進めるチャンス」と捉えることができます。昔であれば大企業並みのデジタル化は大変なコストがかかったでしょう。ですが今はクラウドなどのツールを組み合わせて使えば、初期費用を抑え、ビジネスの拡大に応じて自社に必要なデジタル投資をタイムリーに行えます。「2025年の崖」をただ恐れるのではなく、前向きな改革の機会とすることができるでしょう。


中小企業はどこからDXに取り組めばよいのか

DXの対象となる範囲は多岐に亘ります。中小企業は何からDXに着手していけばよいのでしょうか。

大和田 そもそも企業におけるデジタル化は、大きく「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」、そして「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の3ステップがあります。1番目のデジタイゼーションが、これまでアナログで行ってきた業務の電子化です。一例として、紙書類をPDFなどに電子化し、関係者にメール等で一斉配布するといった取り組みが挙げられます。2番目の「デジタライゼーション」は、電子化のさらなる推進により業務プロセスを改善することをいいます。ワークフローを導入し受発注システムと会計システムを連携させることで、二重入力やヒューマンエラーを削減したり、処理をスピードアップしたりすることが、例として挙げられます。これらの2つのデジタル化の取り組みは、主に業務効率化やコスト削減に寄与するものです。

 そして、3番目の「DX」は、様々なシステムから生成されるデータを収集、活用、分析することで自社の商品、サービスに革新をもたらし、次なる成長を促していくというものです。受発注データを分析することで、消費者の傾向を掴み、新商品の開発に活用する、といった取り組みはその一例です。中小企業においてもこの「DX」の実現に向けて、長期的な目線で適切な投資を行っていくことが重要となります。


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