活用事例

コンクリートの強度を一瞬で判定 「聴強器」の頭脳を担うタフブック
タフブック活用ガイド(3)三井住友建設 活用事例

「聴強器」は非破壊検査の新兵器だ。弾性波の到達時間を高精度で測定できる処理能力と、粉じんや水滴、衝撃に強いタフネスさを併せ持つタフブックで実現された。
聴強器の頭脳として活躍するタフブック
国道49号は太平洋と日本海を結ぶ主要幹線道路だが、険しい山岳地形が迫る阿賀野川に沿う新潟県東蒲原郡阿賀町の区間は、岩石崩壊や落石の危険があり、大雨の際には通行止めになる。そのため、阿賀野側の対岸に新ルートを建設中だ。
そのルートの一部となる橋長171m、PC3径間連続ラーメン箱桁橋の西高架橋は、橋脚から両側に向かってコンクリートの橋桁ブロックを2.5m~3.5mずつやじろべえのように伸ばしていく張り出し架設工法を採用している。コンクリートの設計強度は40N/mm²だ。

三井住友建設阿賀西高架橋作業所所長の柴田宙さんは、クルマに積んだアタッシュケースから「聴強器」を取り出し、足場の階段を上っていった。
橋脚から数mほど張り出した橋桁の内側に着くと、早速、強度試験が始まる。タフブックに接続した振動検出器を左手に持ってコンクリートの表面にあて、右手に持ったハンマーでコンクリート表面を「コン、コン」と1~2秒の間隔でたたき始めた。
その瞬間、タフブックの画面には、コンクリートの強度が「50N/mm²」などと表示された。「コンクリートの中を伝わる弾性波の速度から、強度を測っているのです」と柴田さんは説明する。
ハンマーでたたいた部分から、弾性波と呼ばれる振動の波(P波)がコンクリートの中を伝わっていく。その「第一波」が到着する時間のズレを2個の振動センサーで測ることで弾性波速度を計算。それを圧縮強度推定式に入れて、コンクリートの強度をはじき出す仕組みなのだ。


1000万分の1秒の時間差を測定するタフブック
弾性波の速度は、毎秒約4500mにも達する。30cm間隔に置かれた2個のセンサーの間をあっという間に通り過ぎてしまう弾性波の到達時間のごくわずかな違いをキャッチし、速度を計算する。
「波の第一波がそれぞれのセンサーに到達した時間は、1000万分の1秒単位で算出しています。10数年前のパソコンの性能なら、不可能でした」と、聴強器の開発を担当した同社技術研究所主席研究員の立見栄司さんは語る。
「粉塵や雨水など、過酷な環境に耐えられるだけでなく、最新のパソコンと同様の高度な計算能力やPCカード型のAD変換器を取り付けられるPCカードスロットなども持ち合わせたタフブックのようなパソコンがあったからこそ、聴強器が実現したのです」(同)。
国土交通省では、コンクリート構造物の強度を確認するため、2006年9月に「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定試行要領(案)」を定めた。発注者の国土交通省北陸地方整備局では、西高架橋の工事を発注する際に受注者に対し「特記仕様書」でコンクリート強度を、施工中に非破壊試験によって確認することを求めた。
聴強器も、この仕様に合致したものだ。使用するためには、土木研究所が行っている講習会に参加し、受講証明書を受ける必要がある。



総合評価方式の入札でも“タフブック効果”が
「従来から、シュミットハンマーという手軽な非破壊検査方法がありますが、当社では2000年ごろから測定が容易でより精度の高い聴強器の開発を進めていました。それが、西高架橋の工事の受注にも役立ちました」と立見さん。
現在、聴強器は三井住友建設の子会社であるコスモプラニングが製造・市販しており、全国に普及しつつある。三井住友建設では聴強器を積極的に使用し、すでに、橋など国土交通省発注の10カ所の現場で使用した実績がある。



聴強器の登場で、コンクリートの強度試験は極めてスピーディーに行えるようになった。なにより、大切な構造物に穴を開ける必要もないので、気になる場所の強度を何回でも、徹底的に検査することができる。万一、問題があった場合にも、即座に対策をとることができるのだ。
工事の価格だけでなく、技術力も評価の対象となる総合評価方式の入札が増えるにつれて、現場でのIT活用技術が工事の受注にも影響を与える時代になりつつあるようだ。過酷な現場最前線で、オフィスや実験室と同様の情報処理能力を発揮するタフブックの出番は、今後、ますます増えていくだろう。





