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活用事例

トンネルのIT化は可能? 粉塵が舞う坑内にタフブックが挑む
2008年11月21日公開

トンネルのIT化は可能? 粉塵が舞う坑内にタフブックが挑む

タフブック活用ガイド(4)戸田建設 モニター事例

長年にわたる土木業界の課題である「現場最前線のIT化」。その解決に戸田建設がタフブック「CF-U1」とともに挑んだ。舞台は山岳トンネルの現場。





工事中のトンネル坑内に無線LANを設置できるか

 山岳トンネルの工事は、ボーリングや発破、吹き付けコンクリートなど、粉じんを発生しやすい工法がよく使われるほか、湿度が高く、切羽の近くでは坑壁から地下水が落下するなど、IT機器にとっては過酷な条件がそろっている。現場のIT化を切羽の最前線まで進めるためには、これらの条件を克服しなければならない。

「山岳トンネルの工事で、今、一番の課題はトンネル坑内外での通信環境を確保することです」と語るのは戸田建設アーバンルネッサンス部技術チームの佐藤郁氏だ。

ウルトラモバイルPC版タフブック「CF-U1」は片手で簡単に持ち運び、操作ができる
ウルトラモバイルPC版タフブック「CF-U1」は片手で簡単に持ち運び、操作ができる
山岳トンネル現場は通常は一般的な建設現場と変わらないが、発破直後やコンクリートの吹き付けの時の切羽付近では、粉じんが舞い、時には多量の湧水もあり、タフでコンパクトなパソコンが求められる。最前線で活躍する現場のスタッフ(左から作業所長以下2名)
山岳トンネル現場は通常は一般的な建設現場と変わらないが、発破直後やコンクリートの吹き付けの時の切羽付近では、粉じんが舞い、時には多量の湧水もあり、タフでコンパクトなパソコンが求められる。最前線で活躍する現場のスタッフ(左から作業所長以下2名)
トンネル工事現場で 使われているPHSの交換機
トンネル工事現場で 使われているPHSの交換機

 坑内では携帯電話が通じないため、技術者同士が通話できるよう、現場内にPHSの電話回線を独自に設置している。

 また、山岳トンネルの“最前線”である切羽には、トンネルの掘削断面や壁面補強用の支保工の取り付け位置を高精度でレーザー照射する測量機器が設置されている。その座標データは、坑外にある現場事務所のパソコンから現場の技術者が測量機器まで運んでインプットしていた。

「PHS回線を設置するのは、数人しか使わないのに値段が500万円から1000万円くらいもかかっていました。これを経済的な無線LANに切り替えて通話やデータのやりとりに使えないかと考えていたのです」(佐藤氏)。

 もし、トンネル坑内に無線LAN網が張り巡らされ、技術者が持ち歩くパソコンで電話やデータ交換ができれば、現場の作業効率は飛躍的に向上する。無線LANという一つの情報インフラだけを用意すればいいので経済的だ。

CF-U1にIP電話ソフトをインストールすると、無線LANを介して内線電話としても使える
CF-U1にIP電話ソフトをインストールすると、無線LANを介して内線電話としても使える

タフでコンパクトな「U1」こそ、トンネル現場にピッタリ

明るい照明が施されたトンネル坑内で無線LAN電波の飛距離を調べる佐藤氏
明るい照明が施されたトンネル坑内で無線LAN電波の飛距離を調べる佐藤氏

 しかし、トンネル現場のように精密機械にとって過酷な条件に耐えるパソコンや情報機器となると機種も限られ、頑丈さを確保するために重く、大きなものが多かった。その点、「タフブック『CF-U1』は、頑丈なだけでなく、小型、軽量でもあるので、トンネル工事の情報化を実現するためにはピッタリのハードです」と佐藤氏は言う。

 そこで、戸田建設が施工中の道路用トンネルの現場にこのCF-U1を持ち込み、施工中のトンネル坑内に無線LANを設置して、どのくらいの距離まで通信が可能なのかを試す実験を行った。

 まず、トンネル坑内に長距離無線LANの「固定局」を設置し、オフロード車には「移動局」を設置した。さらに移動局からは別のローカルな無線LANを介してCF-U1と接続した。つまり、トンネル坑内に無線LANの「幹線」と「枝線」を設けることを想定した実験だ。

 固定局のそばで無線LANの受信を確認したオフロード車は、切羽に向かって進んだ。佐藤氏は「100m、200m、300m・・・」と坑内の距離表示と無線LANの電波の受信状況を確認していった。

 結局、なんと、1300mまで無線LANは通じたのだった。「トンネルが直線だったので電波を遮るものが少なかったことがこのような好結果につながったのだと思います」と佐藤氏は満足そうな表情で語る。

「CF-U1はバッテリーの容量は十分にあるので、1日、電源を入れっぱなしでも全然気になりません。キーボードも普通のパソコンと同じ配列で中央にテンキーが配置され、両手の親指で押しやすいようになっているのもいいですね」(佐藤氏)。

「軽いので、長時間の持ち歩きも苦になりません」

CF-U1にはカメラも内蔵されており、デジタルカメラやビデオカメラとしても活用できる
CF-U1にはカメラも内蔵されており、デジタルカメラやビデオカメラとしても活用できる

 今度は、無線LANの「枝線」がどこまで通じるのかを確認する番だ。オフロード車から降りた佐藤氏は、タフブックを片手に、さらに坑内の奥に向かって進んでいく。車が小さくかすかに見える100m地点でも電波は強力だ。

 さらに200m地点をクリア。さらに進んで350m地点まで達した。「ここでも1Mbpsの通信速度が出ていますので、電話で会話することは十分に可能です。トンネル坑内に無線LANの中継地点をどのくらいの距離で設けたらいいのか、大体の見当がつきました」(同)。

 この日、佐藤氏は2時間半ほどCF-U1を片手に持ったままトンネル坑内を動き回ったが「重さも1kgくらいなのでずっと持ち歩いていても全然、苦になりません」と、疲れた様子はなかった。

コンパクトで軽いCF-U1は1日中持ち歩いても苦にならない。この山岳トンネル現場は明るく、湧水も驚くほど少ない
コンパクトで軽いCF-U1は1日中持ち歩いても苦にならない。この山岳トンネル現場は明るく、湧水も驚くほど少ない

タフブック「U1」で土木工事の現場最前線をIT化

キーボードの配列は普通のパソコンと同じで、中央部分に数字入力用のテンキーが付いているので、両手の親指で入力しやすい
キーボードの配列は普通のパソコンと同じで、中央部分に数字入力用のテンキーが付いているので、両手の親指で入力しやすい

 今回戸田建設が試用したウルトラモバイルPC版タフブック「CF-U1」は、Windows VistaやWindows XPを搭載しており、普通のビジネスソフトをそのままインストールできるほか、デジタルカメラや指紋認証センサー、バーコードリーダー、GPSもオプションで装備できる。2個搭載したバッテリーは合計で約10時間ももち、電源を入れたまま片方ずつ交換する「ホットスワップ」も可能だ。

「トンネル内に無線LANが設けられると、CF-U1だけで仕事ができるので何度も作業を中断して事務所に戻る必要がなくなります。CADソフトを入れると、事務所のサーバーにある図面さえも見られます。そうなると、トンネルの中がオフィスになってしまいそうです」と、佐藤氏は1、2年後には実現する近未来のトンネル現場の様子に思いをはせた。

画面はタッチパネルになっており、タッチペンによる漢字の手書き文字入力もスムーズだ
画面はタッチパネルになっており、タッチペンによる漢字の手書き文字入力もスムーズだ

 実売価格は25万円~と見込まれている。CF-U1のうわさを聞いた戸田建設の九州の現場にいる技術者からも、早速「導入したい」という声も出ているという。

 水滴や粉じん、衝撃に強く、さらにコンパクト、軽量になったCF-U1の登場によって、土木業界の課題であった現場最前線のIT化が実現しようとしている。いよいよ、土木工事にもIT化による本格的な生産革命が起ころうとしているのだ。

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