私がAPUにやってきたのは2008年のことです。最初は客員教授として招かれたのですが、2010年から学長を務めさせていただいております。

このキャンパスに来た時点で、APUは開学から8年がたっていました。それまで私は複数の大学に勤めてきました。だから余計に感じたのです。ああ、この大学は他の大学とまったく違う思想でスタートしている、と。「ダイバーシティ=多様性」を尊ぶ、確固たる教育理念が中心にある。

多様性の大切さは大学関係者もよく口にしますが、APUほど徹底してダイバーシティを実現しているところは他にありませんでした。多様性が創造力を養い、相互理解を進め、クリティカル・シンキングを育てる。多様性に支えられた大学APUからは、まさにグローバル時代にふさわしい、柔軟で強靭な人材が生み出されている。

なぜ、APUが多様性を実現できたのでしょうか?

開学以前からの目標を愚直に体現したからです。

それが、3つの「50」。全学生に占める留学生の比率を50%。外国籍の教員の比率を50%。留学生の出身国・地域を50以上。これらの50を必ず達成する、というものです。

2014年のAPUの外国人学生と教員の出身国は77カ国。
学校創立以来134カ国の学生と教員がAPUに集まった。

これがいかに無謀な目標か、お察しいただけるでしょう。

でも、APUは実現した。

それができたのは、関係者の尽力もさることながら、APUが地方自治体と大学が協力をして、ゼロから作られた大学だからだと思います。既存の大学でグローバル大学を目指すからといって、外国籍の教員の比率をいきなり50%にできるか? 学生の半数を留学生に置き換えられるか? 取り急ぎ、今いる先生方の半数が定年にならないと物理的に無理でしょうね(笑)。ゼロから始めるのは、とても大変なことですが、大きな強みでもあったんです。

私は、APUに来る前、2つの大学を1つにする仕事をしました。

大阪外国語大学の最後の学長として、大阪大学と統合するというプロジェクトを進めたんです。

大学統合の目的は、「真の国際人材の育成」でした。

2つの大学を1つにするというのは、言葉で言うほど簡単なことではありませんでした。どちらも国立大学で伝統があります。2007年10月にようやく統合が実現したときは、これでもう引退しようと思っていました。

すると、大阪外語大学の最後の学長職を辞した私に、APUから声をかけていただいたのです。

最初は、客員教授でした。
別府か。じゃあ温泉に浸かりながら中国の古典が読めるかな。
そう気軽に考え、引き受けることにしました。
キャンパスに足を踏み入れて、驚きました。
「ミラクル」。それが私の第一印象です。

自分が1年前まで、2つの大学の統合により実現しようとした大学の国際化と国際人材の育成が、APUではすでに進んでいたからです。

国家がやるべき一大事業を、一私立大学が実現していた。

本当にびっくりしました。

大学院で留学生が過半数を超えるという大学は日本にもありますが、4年制の学部で、留学生と外国人教員を多数迎えて日本の学生と教員と混ぜこぜにして日本語と英語で教育をする、真の「国際大学」は他に例がありません。日本の大学の「国際化」は、もっぱら「日本人の英語力を鍛える」のが主眼に置かれています。

APUがつくり上げたのは、そのステージではなかった。留学生は英語で授業を受けつつ、4年間で日本語を学ぶ。日本人学生は最初のうちは日本語で授業を受けつつ、4年間で英語や他国語を身に付ける。双方が学校では一緒に学び、寮では一緒に暮らしながら、お互いの文化や習慣を学び、まさに国際人材として羽ばたいていく。

APUは開学の精神をスタートから半ば体現し15年の歴史で、その環境とカリキュラムを磨き上げてきました。

日本の大学がこれから目指す「国際化」や「国際人材の育成」は、すでに達成のステージにいる。だからこそ、日本で37校しか選ばれなかった、2014年の文部科学省の「スーパーグローバル大学(SGU)創成支援事業」に採択されたことは、私たちにとって大きな意味があります。

私たちは、一度これまでの歩みと到達点を見直す時がきた、と今思っています。

APUが日本の国際大学のモデルとなる役割は、もう果たしました。次の段階に進まなければ、大学としての進歩もないし、APUの未来もないでしょう。

では、APUが目指す、次のステージとはなんでしょうか。

SGUに採択されたことで、日本の国家からは、グローバル大学だと認められました。

ならば、次は世界から認められる大学になろう。世界標準を目指そう。大学の国際認証を受けよう、と。

具体的には、ビジネスユニットを中心とした社会科学系の大学として、分野別でアジアの大学のトップ30を狙います。

37校のスーパーグローバル大学=SGUに選ばれたAPUは、
2015年2月、在学生・卒業生・教職員が共同して未来のAPUについて話し合う
SGUキックオフイベントを行った。

APUの国際経営学部と経営管理研究科(MBA)が取得に取り組んでいるビジネスユニットに関する国際認証AACSB*は、今年2015年度に取得できる予定です。ちなみに認証を取るためには、教員にも論文投稿数などの審査が課され、カリキュラムもすべて厳しく精査されます。国際認証に挑戦すること自体が、教育と教授陣の高品質化につながるのです。これには、時間がかかります。それでも、取り組むのです。
*AACSB…the Association to Advance Collegiate Schools of Businessの略称

とはいっても、国際認証を取得するのは、今あるものをさらに練り上げるためのあくまで手段です。国際認証を英語で実施する教育プログラムで取得することで、日本の他の大学との差異化を進め、重要なのは同じ認証をとっている世界の大学とつながることができる。ここがポイントになります。教員や学生の交流、カリキュラムの共同化が図れるのです。認証にこだわるのではなく、その先にある新しい風景を目指すのです。

すでに、ロシアやモンゴルの大学などとも協力関係をつくろうと動き始めています。将来的には、APUをハブにして教員と学生とが世界の教育ネットワークの上で勉強したり研究できるようにしたいですね。

ただし、私自身はAPUを、従来の偏差値や学部卒業生の就職率などの国内ランキングで上位の大学にしようとは考えていません。APUの価値は、従来の国内の一般的な基準では計れないところにその多くがあります。ちなみに、今日本の大学では実学を重視すべきか、学術的な要素を重視すべきか、について議論があります。私の考えでは、APUの専門分野である社会科学はそもそもが実学である、ということです。とくに、APUには実業界で活躍していた方が先生として来てくださることも多い。学術的な基礎は尊びつつ、実学的な要素を豊富に授業に盛り込む。原理原則を学び、現実に応用する。そういったバランスのいい学びが、APUでは実現できていると思います。だからこそ、国内外の優秀な学生だけでなく、企業にも選んでいただける。