APUと関わって感じたのは、大学とNPOってちょっと似ているということ。営利目的じゃない組織だからこそできること、ってあるんですよね。APUでは職員も、教員も、学生も、みんな一緒になって大学を作ろうとしている。だからこそ、ノーガードでいろいろな人が協力してくれる。

そもそもが、大学って「ボランティア」の要素があったりする。学生から授業料をとって教えているわけだけど、学生は「ボランティアの修行」をしているという側面がある。つまり、将来私は何の役に立つんですか?というのを勉強している。

今、「社会の役に立つことがしたい」という市場が、大きくなってきていると感じます。市場って言うと、みんなお金のために動く前提で語られることが多いけど、実はそんなことはない。じゃあ面白いことをすると儲かるんだ、儲かるためにはいいことをしよう、という話になることがあるけど、それもちょっと違う。いいことをしたい、誰かに喜ばれることをしたい、というのと、お金が儲かる、というのは因果関係でつながっているんじゃなくて、曼荼羅(まんだら)図のようにどっちも市場の中にぽつんぽつんとあるものなんじゃないか。

そんなことを、「ほぼ日」を立ち上げてからずっと勉強してきたので、APUに出会ったとき、そんな曼荼羅図がここにはあるぞ、と1つの理想というか、仲間というか、そんな存在として輝いて見えた。お金とか、ビジネスとか、教育とか、社会貢献とか、異文化交流だとか、1本の論理だけでは説明できない、同時多発的に新しいこと、面白いことがぽんぽん生まれる。APUはそんな場所だと思います。

APUは今、創立15年。元気のいい中学生みたいなもんです。未熟なところもあるけど、一方で「仕組み」の維持にこだわり始めると、面白くならずに「老化」しちゃう恐れもある。じゃあどうすればいいのか、というと、好奇心を満たすような「祭り」とか親切とか優しさとか面白さみたいなものにつながることを、絶えず新しい献立を考えるように作っていく。放っておくと、人はすぐに飽きちゃいますから。

APUは飽きない材料がいろいろあるから大丈夫かな、とも思います。今村さん始め大学の人たちが、みんないい意味で飽きっぽい感じもするし。飽きっぽいと新しい献立を考えるんですよ。学生のほうも、毎日文化摩擦が起きそうなくらい異なる人種・民族の人たちが、一緒に集まって暮らしているわけですし。そもそも大学は、毎年どんどん学生が入学してきて卒業していく。いろんなところに散らばって、働いて、また新しい子たちが集まってくる。それって、すごくいいことです。知恵や経験は大学という場に蓄積されるけど、人はどんどん入れ替わる。だからたぶん大丈夫。

「ほぼ日」がAPUの卒業生を採用する可能性は十分あります。留学生でもどこの国の子でも全然オッケーです。今、「ほぼ日」にはフランス人の社員がいますしね。フランスと全然関係ない仕事してるんだけどね(笑)。僕はいつでも、APUの学生を採用者目線で見ていますよ。

糸井重里さんのプロフィール
1948年生まれ。群馬県出身。コピーライター、エッセイスト、作詞家など多彩な分野で活躍。98年に開設したwebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」は、1日150万PVを超え、物販などを中心に高い収益をあげている。2012年には、独自の価値観を生み出すユニークな企業運営が評価され、株式会社東京糸井重里事務所としてポーター賞を受賞した。