新しい規制やルールに、
コンカーは
“機能のアップデート”で対応できる
CFOの人材不足に関しては、若林氏も身をもって痛感してきたという。
「J.フロント リテイリングで財務戦略を統括していたときは、グループ全体で約300人の経理・財務担当者がいました。しかし、その大半は日常的な経理業務や決算業務の担当者で、今後の財務戦略を考える『ビジネスパートナー』という役職は全体の1割ほどにとどまっていました」と若林氏は振り返る。
そこで若林氏は、J.フロント リテイリングに在職中、将来のCFO候補となり得る「ビジネスパートナー」を増やすための取り組みを推進した。
経費精算や出張管理、請求書処理といった日常業務をグループ統一の会計サポートシステムに置き換え、より多くの経理・財務人材を「ビジネスパートナー」に配置転換できるようにしたのだ。若林氏は取り組みの途中でJ.フロント リテイリングを離れることになったが、「今でもSAP Concurをはじめとするソリューションの活用検討は広がっており、日常業務から解放されて、将来のCFO候補を目指す人材も着実に増えているようです」と語る。
この点について、伊藤は「多くの経理・財務人材が日常的なオペレーションから抜け出せないのは、『電子帳簿保存法』『インボイス制度』など、業務に影響する新たな規制やルールが次々と設けられるので、専門知識を持った人材をなかなか配置転換できないからではないでしょうか?」と素朴な疑問を投げかける。
「そうした課題は、我々が提供するクラウドソリューションをご活用いただければ問題なく解決します。なぜなら、新しい規制やルールが設けられるたびに、それに合わせたアップデートが行われるからです」(橋本氏)
しかも、SAP Concurをはじめとする最新のクラウドソリューションであれば、製品に組み込まれているAIエージェントが規制やルールに沿って自動的に経費精算を行う仕組みが現実になってきている。「これによって人材を1つの業務に固定する必要がなくなり、業務の効率や正確さも格段に向上するのです」(橋本氏)。
コンカーは、日本CFO協会が実施する、改正電子帳簿保存法や請求書の電子化に関する企業の取り組み状況調査について、調査結果への考察を発表するなどの協力を行っている。また本稿の前編でも述べたように、コンカーの橋本氏は日本CFO協会のAI分科会主任研究員を務めるなど、両者は緊密に連携している。
橋本氏は、「日本でより多くのCFO人材が輩出されるように、我々コンカーも全力で支援していきたい」と語る。
デジタルを活用するか否かも、
CFOとしての重要な経営判断
日本の経理・財務人材がオペレーション役に固定されがちな背景には、社員による不正を防ぐガバナンス機能を維持したいという企業側の思惑もあるようだ。
経費精算や出張管理、請求書処理といった業務に関わる不正は、長年伝票を処理してきた経理担当者であればあるほど「不自然さ」を見破りやすい。だからこそ、経験豊富な経理担当者は、なるべく経理のままで固定したいと考えるのだろう。
しかし、SAP Concurであれば、人の勘と経験に頼るよりも、むしろ完全に不正を防御できる。
「例えばコンカーのソリューションには、交通系ICカードやクレジットカードなどによるキャッシュレス決済のデータをそのまま取り込み、経費精算や出張管理ができる機能があります。経理担当者による手入力の手間がなくなりますし、現金立て替え払いと違って不正が入り込む余地がありません。人手に頼るよりも強固なガバナンス体制が構築できるのです」(橋本氏)
ガバナンス強化と言うと、社員は「締め付け」が強まることを想起しがちだが、「人を介さず、仕組みとして管理できるようにすれば、そうしたネガティブな印象を抑えることもできます。その上、ガバナンスの管理工数やコストは格段に減り、経理・財務人材の業務負荷もなくなるのですから、クラウドソリューションの活用は極めて有効な方法だと言えます」と橋本氏は説明する。
こうした仕組みを導入するか否かも、CFOとしての重要な経営判断の一つである。卵が先か、ニワトリが先かではないが、業務のデジタル化やAI活用を推し進めることが、経理・財務人材を『実務家』から『戦略家』へと転身させるきっかけとなり、その戦略の重要な要素として、デジタル化やAI活用がさらに進むという好循環が生まれるのだ。
若林氏は「デジタル技術やAIを活用すれば、時代の変化や規制・ルールの変更によって激増しているCFOの業務量もかなり圧縮されるはずです。繰り返しになりますが、人がやらなくてもいい仕事は極力AIにやらせ、人にしかできない仕事に専念できる環境を整えることをおすすめします」と力説する。
クラウドソリューションは
CFOの能力をバージョンアップ、
ブラッシュアップするための道具
「では、デジタル技術やAIの力で本来の仕事に専念できるようになったCFOに、今後求められる能力やマインドセットとは?」
そんな伊藤の質問に対し、若林氏は「経営層の一人として、この先、経営環境がどう変わっていくのかを自ら考え、仮説を立てられる能力が求められると思います」と答えた。
「仮説を立てるためのシナリオは、AIがいくつも示してくれるようになるはず。その中から、確度が高いシナリオを自分の考えで選び抜き、実行に移す力が要求されると思います。その嗅覚を養うためには、外に出て様々な人と会い、自ら情報を集めることが不可欠。コミュニケーション能力も要求されることになるでしょう」(若林氏)
この若林氏の言葉に、コンカーの橋本氏も「全く同意です」と応じた。
「これからのCFOには、社内外のキーパーソンと積極的に情報を交わし合えるマインドとコミュニケーション能力、そして実行力が求められていると思います。自分がやらなくてもいい仕事はAIに任せ、浮いた時間で外に出て、新たな示唆を得てみてはどうでしょうか」(橋本氏)
なお、コンカーは、CFO同士の交流会や勉強会など、様々なコミュニケーションの機会を提供しているという。こうした場に積極的に参加してみるのもいいだろう。
「クラウドソリューションは、単に業務を楽にするための道具ではありません。CFO自身や経理・財務担当の皆さんの能力をバージョンアップ、ブラッシュアップするための道具として使い倒していただきたい。それが、日本企業や日本経済の発展に必ずつながると確信しています」(橋本氏)
編集後記
経理・財務部門でシステムを変更する際、懸念を抱くのが不正への対応だ。ガバナンス強化が求められる今日、経費精算における不正をいかに防ぐかは重要なポイントとなる。コンカーが新たに投入したサービスでは、現場の社員が海外出張のスケジュールを登録すると、そこまでの交通経路や宿泊などを自動で予約できる。その上、コーポレートカードなどのキャッシュレス決済データは自動で連携されてくるため、その社員も経理担当者も実際の精算作業に携わることがなくなり、不正そのものが発生する余地を事実上なくしてしまうという。
様々な規制やルールが入り、経理作業は複雑かつ高度になる一方である。作業の自動化によりミスと不正を防ぎ、人間が担うべき付加価値の高い仕事にスタッフを集中させることは、これからの経理・財務人材の育成と企業経営には必要不可欠となる。