サイバーレジリエンス&情報セキュリティ戦略セミナー2025 Review 生成AI時代のサイバーセキュリティ対策

マクニカ

EUで施行されたサイバーレジリエンス法
必要な秘密鍵管理をどう実現するか

いまや家電製品や自動車にも、当たり前のように実装されているソフトウエア。その安全性を担保するため、EUで施行されたのがサイバーレジリエンス法だ。EU域内で製品を提供する製造業にとって、これに準拠することは必須条件となる。そこで重要になるのが、ソフトウエアのアップデートを安全に行うための仕組みと、その正しさを担保する秘密鍵の管理である。求められるアプローチを考える。

秘密鍵がソフトウエアの

正しさの根源になる

株式会社マクニカ ネットワークカンパニー セキュリティソリューション営業統括部 プロダクト第2営業部 第2課 今西 弘昴氏
株式会社マクニカ
ネットワークカンパニー
セキュリティソリューション営業統括部
プロダクト第2営業部 第2課
今西 弘昴
 EU市場で販売されるデジタル製品のセキュリティーを強化し、消費者と企業をサイバー脅威から保護するために制定された、EUのサイバーレジリエンス法(CRA)。2024年12月に発効したこの法律は、2026年9月には脆弱性報告の義務化、2027年12月には全面適用が予定されている。

 EU域内で製品を提供する製造業者は、このCRAへの対応が必須となる。その内容について、マクニカの今西 弘昴氏は次のように説明する。

 「注目すべきはCRAの第13条『製造業者の義務』です。その第8項に『製造業者は脆弱性開示等に適切なポリシーや手続きを有する』、第9項に『販売開始から終了まで、セキュリティーアップデートを利用可能とする』とあり、製造業者がセキュリティーを担保する必要性が示されています」

 また、CRAにはセキュリティー特性要件を定めた付属書類も存在する。そこでは「セキュリティーアップデートにより脆弱性に対処できること」「データやプログラムなどの完全性を許可されていない操作から保護」という記述があるという。

 「これらの要件を満たすには、アップデートを無線通信で行うOTA(Over The Air)などの活用を検討する必要があるでしょう。また、アップデート用のソフトウエアが正しいものであることを担保する証明書も不可欠です。証明書の正しさを担保するには、正しさの根源となる秘密鍵を適正に管理することが欠かせません」と今西氏は続ける。

 CRAには秘密鍵管理の必要性や方法について具体的に言及している箇所はない。ただ、産業オートメーション・制御システムの国際規格であるIEC62443-4-2に、「サプライヤーは、コード署名に使用される秘密鍵を不正アクセスや改ざんから保護するための手順と技術管理を実施する必要がある」との記述がある。

 「CRAは、多くの部分がこのIEC62443-4-2をベースにしてつくられています。そのため『CRA適合に向けては秘密鍵管理が重要』と考えるのが妥当であるというのが、業界の専門家を含めた見解です」と今西氏は言う。

製造業、金融業、官公庁などで

導入が進むHSM

 それでは、信頼の根源となる秘密鍵を厳格に管理するためには、どのような仕組みが求められるのか。マクニカによれば大きく3つの要件を満たす必要があるという。

 1つ目は「認証済み暗号モジュールを使用すること」。そもそも、ソフトウエアアップデートを安全に行うためには、事前に公開鍵暗号方式によって公開鍵と秘密鍵(キーペア)を生成し、製品側に公開鍵、組み込まれるソフトウエアの側に秘密鍵を格納しておく必要がある。その上で、アップデート時には新たなソフトウエアに秘密鍵による署名の値(証明書)を与え、その正しさを公開鍵で検証する。ここで第三者に解読されにくい「強い鍵」を生成するためには、認証済み暗号モジュールを使うことが重要になる。

 2つ目は「改ざん耐性のある保管方法を選択する」ことである。どんなに強い鍵を生成しても、鍵自体が漏洩してしまえば改ざんされてしまう可能性がある。セキュアな仕組みで保管・管理することが必要だ。

 そして3つ目が「ライフサイクル管理とアクセス制御を行う」。秘密鍵の生成・保管・使用・変更とローテーション・破棄に至るまでのライフサイクル管理を徹底するとともに、秘密鍵にアクセスできる管理者を限定する。誰がいつアクセスしたのかの記録も残すことが大切だ。

 「このうち1つ目と2つ目を満たす上で重要な役割を果たすのが、ハードウエアセキュリティーモジュール(HSM)です」と今西氏は話す。HSMはキーペアの生成・保管・利用を1つの機器内で完結できる専用装置。秘密鍵の生成・保存・利用を1つのハードウエア内で完結できるため、秘密鍵を外部に出す必要がなく、安全性を高められるという。

 また、HSMには無理やり中身を取り出そうとすると鍵が消去される「耐タンパ性」を担保する機能が実装されている。さらに鍵の生成や暗号化、署名などの処理も高速に実行することが可能だ(図1)。  HSMは製造業や金融業、官公庁などで導入が進んでいる。特に自動車業界では、車両のサイバーセキュリティーを管理するための国際的な法規制「UN-R155」が2021年に発効しており、これに対応するために多くの企業がHSMを活用しているという。

秘密鍵管理のベストプラクティスを

パッケージ化して提供

 様々なHSM製品がある中でも、注目したいのがフランスに本社を置くタレス社のHSMである。代理店であるマクニカは、複数のアプリケーションでHSMを利用可能にするネットワークHSM、サーバー組み込み型HSM、USB接続型の小型HSMの3種類をラインアップしている。いずれも、暗号化モジュールの検証に使用される米国政府のコンピュータセキュリティー標準「FIPS140-3」のレベル3認証を受けている製品だ。

 「FIPS140-3はレベル4まで存在しますが、現在その認証を受けている製品は存在しません。つまり、タレスのHSMは実質的に最高レベルの認証を受けている製品といえます」と今西氏は説明する。

 一方、HSMを扱う上で課題になりがちなのが扱いの難しさだ。暗号化モジュール特有のインターフェース規格を採用しているため、操作には技術と知識が求められる。そこでマクニカは、HSMと各アプリケーションの間を仲介するツールとして「IDEA鍵管理システム」を提供している。

 HSMとIDEA鍵管理システムを連携することで、秘密鍵の生成・保管はもちろん、ライフサイクル管理や製造担当者による鍵の利用、アクセス管理などを含めて簡単・シンプルに実行できるようになる(図2)。操作ログの出力機能も備えているので、CRA準拠に向けて監査が必要になった場合もすぐに対応可能だ。  なお、マクニカではタレスのHSMとIDEA鍵管理システムをパッケージにして提供している。これにより、先の3つの要件をトータルに満たす鍵管理の仕組みを簡単に実現可能だ。この組み合わせは、鍵管理システムのベストプラクティスといっていいだろう。

 IEC62443-4-2やUN-R155への準拠のために活用されているHSMと、その利用を容易にするソリューションがあれば、CRAの要求に対応しやすくなる。EU域内で製品を提供している企業は、早めに検討を開始することをお勧めする。
お問い合わせ
株式会社マクニカ Thales 担当
TEL:045-476-2010
E-mail:thales-sales@macnica.co.jp