ITインフラSummit 2025 Summer -複合AIシステム時代の、ITインフラの条件- Review

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アイレット

事例とユースケースに見る
生成AI/AIエージェントの活用法

アイレット株式会社 DX開発事業部 クロスイノベーションセクションセクションリーダー 加藤 翔太氏

クラウドインテグレーターのアイレットでは、Google Cloudが提供する生成AIサービス「Gemini」「Vertex AI」と自社の技術・ノウハウを組み合わせたRAG(検索拡張生成)ソリューションを展開している。これにより、社内に蓄積された膨大なドキュメントを生成AIで有効活用することが可能だという。同社の講演では、実際の事例とユースケースをもとに生成AIやAIエージェントの活用法について紹介された。


生成AIの回答精度を
いかにして高めるか

生成AI活用に取り組んではみたものの、思うように成果が上がらず悩んでいる企業は少なくない。上下水道や河川などの公共インフラ領域で総合コンサルティング事業を展開するNJSでも、大きな壁に突き当たっていた。

NJSでは生成AI活用を推進しており、その第一弾として、IT部門への問い合わせ業務をチャットボットに置き換えることとした。その具体的な方法としては、ファイルストレージと検索インデックスを利用。質問の情報をもとにファイルストレージを検索して、生成AIに回答を生成させるというものだ。いわゆるRAG(検索拡張生成)である。

しかし、生成AIが扱えるトークン数が不足していたことから、データを分割する過程で文脈や単語の意味が失われてしまう。その結果、精度の低い回答しか生成できなかったという。この問題を解決するために、NJSでは学習データのベクトル化/インデックス化(言葉の意味を数値化してデータを保存し、その数値を検索することで意味が近いものを検索できるもの)を実施。同じくベクトル化された質問内容をもとに、ベクトルDB上の類似文書を検索して回答を生成させるようにしたわけだ。

だが、これでも回答精度は依然として不十分なままだった。むしろプロセスが複雑化してしまったため、精度が上がらない原因がデータなのか、それともプロンプトなのかも分かりにくくなってしまったのだ。しかも、この段階で、プロジェクトの期間は残り3カ月を切ったのである。

Gemini&Vertex AIによる
RAGで課題を解決

こうした状況のNJSに伴走し、課題解決に導いたのがアイレットだ。日本のクラウドインテグレーターの先駆けである同社では、クラウド移行支援から構築/MSP、アプリケーション開発、UI/UX デザイン制作に至るまで、幅広い領域におけるソリューションを提供。2500社以上のクラウド導入実績を誇る。

「NJS様の課題を解決するアプローチとして、今回当社が採用したのが、Google Cloudの生成AI『Gemini』とRAG機能を実現するサービス『Vertex AI Agent Builder』(以下、Vertex AI)です」とアイレットの加藤 翔太氏は話す。

Geminiでは100万ものトークン(2025年7月時点)がサポートされるため、データ分割によって意味が失われずに済む。また、Vertex AIを用いることで、ベクトル検索の仕組みを独自につくりこむ必要もなくなる。テキスト・動画・音声・画像・PDFなどの多様なファイルを取り扱える上に、他社モデルと比較して低コストで利用できるのも大きなメリットだ。

「NJS様では、精度で苦労された経験があるため 、200件分のドキュメントを用いた検証も実施し、精度の高さを実感していただきました」と加藤氏は続ける。

実装されたシステムは非常にシンプルだ。まずクラウドストレージ上にそのままドキュメントを格納する。以前のように、わざわざ自前でベクトル化を行う必要はない。これと並行して、Vertex AIが検索インデックスを作成してRAGを構築。これにより、質問に対して最適な情報をインデックスから探せるようになる。あとはチャットに入力した内容をVertex AIに渡せば、自然言語で回答を生成してくれる。

「これらの仕組みにより、回答精度は劇的に向上。また期間についても、Google Cloudのマネージドサービスと当社のパッケージソリューションを組み合わせることで、お申し込みからわずか1カ月で納品することができました」と加藤氏は強調する(図1)。

図1 Gemini&Vertex AIで高精度なRAGを構築

図1 Gemini&Vertex AIで高精度なRAGを構築

Google Cloudが提供するGeminiとVertex AIを活用することで、社内データを活用したRAG環境を実現。従来の課題であった回答精度を大きく高めることができた

なお、ここで用いられた同社のパッケージサービスが「Google Cloud かんたん AI パック」である。このサービスはGemini&Vertex AIを活用したRAGチャットボットを容易に実現するソリューションで、サーバーレス構成による運用負荷軽減、BigQuery+Looker StudioまたはLookerによる分析機能、低廉なコスト、柔軟なカスタマイズ性など、数多くの特長を備えている。この結果、NJSのニーズにも迅速に応えることができた(図2)。

図2 RAGチャットを容易に構築できる「Google Cloud かんたん AI パック」

図2 RAGチャットを容易に構築できる「Google Cloud かんたん AI パック」

アイレットが提供する「Google Cloud かんたん AI パック」は、Vertex AIを用いたRAGチャットボットを実現する製品だ。画面は勤怠管理業務への適用例だが、このようなシステムを短期間で開発できる

ただし、生成AIの導入後に課題となる点もあるという。それは、生成AI活用をいかに社内に浸透させるかという点だ。「生成AIを生産性向上や価値創出につなげていくためには、できるだけ多くの人に使ってもらう必要があります。そこでNJS様でも、推進役となるAIアンバサダーの任命や、関心を持つ人を増やすための取り組みなど、様々な施策を検討されています。このようにして利用頻度を高めることで、自律的な生成AI活用が行える組織を目指されています」と加藤氏は話す。

AIエージェントの開発を
支援するサービスも

現在も生成AIはさらなる進化を遂げている。その中心となるテクノロジーが「AIエージェント」だ。「RAGとAIエージェントとの最大の違いは、『何を知っているか』『何を探すか』ではなく、『何ができるか』という点にあります」と加藤氏は説く。

例えば、出張で飛行機を利用する場合を考えてみよう。ユーザーが「飛行機を予約したい」と告げると、AIエージェントはカレンダーからユーザーの予定と目的地を認識。「飛行機 予約」と検索し、旅行サイトで最適な便を調べて提案する。その内容で問題がなければ、あとは予約を実行させるだけだ。このように業務にかかわる情報を提供するだけでなく、ある目的に必要なアクションを自律的に起こすのがAIエージェントなのである。

「このAIエージェントの開発を促進するサービスが、『ADK(Agent Development Kit)』と呼ばれる開発ツールです。Googleによって開発された本サービスは、OSSとして提供されており、ローカル環境で検証しながらAIエージェントを開発できます。ADKには数多くのツール群が用意されていますので、これらと当社の技術を組み合わせることで、様々なお客様の課題に柔軟に対応できます 」と加藤氏は説明する。

また、Vertex AI上で作成したAIエージェントを実際に利用できるようにするための実行環境として、Google Cloudでは「Agent Engine」を提供。「フルマネージドサービスによる運用負荷軽減とスケーラビリティ」「Vertex AIエコシステムとの統合」「開発の簡素化と柔軟なフレームワーク対応」「堅ろうなセキュリティー機能」などの特長が備わっている。

「生成AIを既に導入済みの企業では、回答精度が悪く困った経験もあると思います。このような場合には、Agent Engineで提供される『Gen AI Evaluation Service』が有効です。これを用いることで、Geminiをはじめとする生成AIモデルやアプリケーションの評価が行えるようになり、生成AIの精度を高めていくことができます」と加藤氏は話す。

AIエージェントがさらに進化していけば、優秀なパートナーが常に隣に控えているような環境を実現できる。さらに将来的には、複数のAIエージェントの連携によって複雑な問題を解決するマルチエージェントの世界も予想されている。日本企業としても、この変化をチャンスととらえて、早急に取り組む必要がありそうだ。


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アイレット株式会社
URL:https://www.iret.co.jp/