特別トップインタビュー
STマイクロエレクトロニクス

車載用MEMSや18nmマイコンでポートフォリオ拡充

強靭な企業戦略を軸に
製造基盤を「進化」させ
未来への成長を描く

STマイクロエレクトロニクス
アジア・パシフィック地区(APeC)
セールス&マーケティング
エグゼクティブ・バイスプレジデント

野口 洋

main_img

グローバルな半導体メーカーであるSTマイクロエレクトロニクスは、重点領域での確固たる成長戦略を描きながら、弛まぬ研究開発と関連テクノロジーのM&Aなどを通じて多様化するニーズに応えてきた。2025年4月には、製造フットプリントの進化に向けたプログラムの詳細も新たに発表。その戦略や展望について、エグゼクティブ・バイスプレジデントの野口洋氏に聞いた。

2025年のビジネスを振り返っていかがでしたか。

野口 2024年から続いていた半導体市場の在庫調整などの影響が第1四半期を底にようやく回復し、直近の2025年第3四半期の売上高は第2四半期に比べて15.2%の伸びに相当する31.9億ドルになりました。

 また重点分野のうち、オートモーティブ分野は、BBレシオ(受注額÷出荷額)が1を超え、第4四半期を含めて3四半期連続で増収となる見通しです。インダストリアル分野も回復を見せていて、第4四半期は第3四半期比で一桁台前半の成長を予想しています。

 こうした回復もあって、2025年通年での売上高は117.5億ドル前後を予想しています。重点分野に焦点を当てながら、製造フットプリントの再構築などによってコスト削減も強化していく計画です。

新プロセスの製品を投入

2025年の新製品やトピックのうち、まずはオートモーティブ分野を紹介してください。

野口 クルマの電子化に伴って車載グレードのセンサー製品の引き合いが増えている中、2025年7月にNXP社のMEMSセンサー事業の買収を発表しました。同社は車載向けモーションセンサーや圧力センサーに強く、当社の従来製品と併せたポートフォリオの拡充によって、より幅広いご提案が可能になると考えています。

 電動化では、モーター用インバーターや充電回路向けのSi(シリコン)デバイスおよびSiC(炭化ケイ素)デバイスが堅調で、中国EVメーカーのフルアクティブ・サスペンション用インバーターにも採用されました。また、車載電源の48V化に伴い、eFuse(電子ヒューズ)の採用が広がっています。車載マイコンについては、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プロセスに相変化メモリを組み合わせた「Stellar xMemory」シリーズを発表しました。ドライブトレーンやEVに求められる高い堅牢性と信頼性を実現しています。

続いてインダストリアル分野を紹介してください。

野口 STを代表する汎用マイコンSTM32ファミリの新製品が「STM32V8」です。業界で初めて18nm FD-SOIプロセスを採用し、さらに相変化メモリを搭載しました。最高800MHzで動作し、放射線にも耐性を持っています。厳しい環境条件で動作する産業用途に適しており、米SpaceX社のスターリンク衛星の衛星間ミニレーザーシステムにも採用されました。

 インダストリアル分野でもう一つ大きなトピックが、8インチの「GaN-on-Si(ガン・オン・シリコン)」の製造技術を持つ中国Innoscience社とのGaN(窒化ガリウム)技術の開発および製造に関する契約です。エネルギー効率が高く小型化も図れるGaNは、データセンターの電源やロボットなどのアプリケーションに最適で、長期的な成長が期待できます。

その他の事業分野でトピックがあれば紹介してください。

野口 パーソナル・エレクトロニクス分野では、メタサーフェス光学素子のパイオニアで以前より緊密に連携している米Metalenz社と新たにライセンス契約を締結しました。半導体表面に光学的な機能を実装できる技術で、当社の300mmウエハーを使って、距離センサーの他、生体認証、LiDAR、カメラアシスト、ジェスチャー認識、物体検出など、新たな応用分野に向けたソリューションを提供していきます。

 通信・コンピューター周辺機器では、米NVIDIA社が構想している直流800V給電の実現に向けて、SiC、GaN、およびSiを組み合わせた電源回路の開発を進めています。既にプロトタイプにて12kWの連続出力と98%もの高い変換効率を確認済みであり、メガワット級のAIサーバーのニーズに対応していきます。

ソリューション提案を強化

冒頭で、製造フットプリントの再構築を進めているとの話がありました。

野口 IDM(垂直統合型半導体メーカー)として長期的に事業を成長させていくには、次世代に向けて製造基盤を定期的に刷新していくことが重要です。Siでは、成熟したレガシーデバイス向けの200mmウエハーの最適化を続けながら、300mmへの集約と技術更新を進めています。SiCも同様に、150mmから200mmにアップグレードしていきます。

 技術開発・製造の拠点としては、デジタル系はフランスに、アナログ系とパワー系はイタリアに、レガシー系はシンガポールに各技術の集約を進めています。AIも活用して製造ラインのさらなる効率化と自動化も図り、2027年以降に年間数億ドル規模のコスト削減を達成する計画です。

2026年の展望と日本市場の取り組みを教えてください。

野口 2026年も、オートモーティブ、インダストリアル、パーソナル・エレクトロニクス、および通信・コンピューター周辺機器を重点分野として、ポートフォリオを拡充させながら、新たなソリューションの提供に取り組んでいきます。

 サステナビリティーにも変わらず力を入れていきます。当社は米TIME誌の「世界で最も持続可能な企業2025」で全5700社中25位にランキングされるなど、半導体業界におけるサステナビリティーリーダーとして認知されています。また、シンガポールでは拠点のある工業団地の地域冷房システムの運用を担うことを発表しました。年間最大12万トンのCO2排出削減などが実現できる見込みです。

 販売面では、セグメント・マーケティングと呼ぶ機能をグローバルレベルで設置して、パワー・ディストリビューションを中心としたオートモーティブ、ロボティクスを中心としたインダストリアル、電力・エネルギー、および、コンピューター関連の4分野を重点に、技術力の高い日本のお客様のニーズにもお応えできるように、半導体製品単体での供給だけではなく、ソリューションとしての提案強化に努めていきます。

img01

300mmウエハー上にMetalenz社のIPを利用して製造したメタサーフェス光学デバイス

お問い合わせ

STマイクロエレクトロニクス株式会社
〒108-6017 東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟
TEL:03-5783-8200 URL:https://www.st.com/