特別トップインタビュー
ウィンボンド・エレクトロニクス

脱炭素化の要請に応える高付加価値製品も提供

AIシフトで再編した
メモリ市場が好機に
新機軸の安定供給戦略も

ウィンボンド・エレクトロニクス
代表取締役社長

小林 平治

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あらゆる機器へのAIの搭載が進む中、エッジ側で利用する組み込みシステム向けのスペシャリティ(特定用途)メモリでも、より高性能・大容量なチップが大量に求められている。この領域をリードする、低・中容量メモリソリューションに特化した半導体メーカーが、台湾ウィンボンド・エレクトロニクス(以下、ウィンボンド)だ。同社の戦略について、日本法人を統括する小林平治氏に聞いた。

2025年のビジネスの状況はいかがでしたか。

小林 2025年上期はメモリの価格が安値で推移していた中、転機となったのは5月頃です。

 データセンター向けなどAI関連のメモリ需要が増加したことで、大手メーカーが一斉にDDR5 DRAMやHBM(広帯域メモリ)などの高速・大容量品を集中生産し始め、当社が扱う車載や民生、産業機器向けDDR4のビジネスから撤退していきました。

 直近のメモリ不況で多くのメーカーが設備投資を止めていたことから、この領域が品薄状態となり単価は高騰。特に8GビットDDR4では、10月時点で価格が約3倍(同年5月比)になりました。こうした結果が重なり、当社としては、通期で目標とした業績を達成できる見込みです。

 一方、プログラムやBIOSなどのコード格納用のNOR型フラッシュメモリでは、個数ベースでの需要は安定していました。

 ただし、こちらもAI関連需要が増大し、従来128Mビット品が中心だったパソコンのBIOS格納用が512Mビット品へと移行するなど、チップ面積が大きな製品の需要が拡大したことで、供給としてはタイトな状況になりつつあります。

AI応用の活発化が起点となり、あらゆる領域のメモリ需要を押し上げているのですね。日本市場固有の傾向は。

小林 ウィンボンドの低・中容量メモリは、日本市場では車載システム関連を中心に、プリンターやゲーム家電、産業機器など幅広く活用いただいています。ここでも、AI関連の応用が広がる見込みです。

 ただし、AI活用が進む中国や韓国に比べれば、日本の実需の動きは少々遅れて進んでいる印象です。車載関連では、スマート化の進展でメモリ使用量は着実に増えていますが、まだまだ伸び幅は小さい状況です。産業機器向けも、現時点では短期的需要増は見られません。

 しかし、これらの分野でもAI活用やスマート化は確実に進んでいきます。日本においても今後需要の拡大が進むと期待しています。

2025年、目立って応用が広がった製品はありますか。

小林 エッジAI向けに、HBMと同等の帯域幅を提供できるカスタムメモリソリューション「CUBE(Customized Ultra-Bandwidth Elements)」の引き合いがワールドワイドで増えています。

 CUBEは、アーキテクチャ、構成、インタフェース、積層数などを用途に合わせて最適化できる製品です。オプションとしてシリコン貫通ビア(TSV)技術を適用し、低電力化や大容量集積、小型フォームファクタを実現します。

 2026年以降には、20nmもしくは16nm対応ラインで量産を開始する予定です。組み込みシステム向けの高帯域メモリは、データセンター向けなどに注力する他のDRAMメーカーが手掛けないビジネス領域です。今後、エッジ機器へのAI導入が進めば、当社にとって極めて重要な市場へ成長すると期待しています。

 また、コード格納用のフラッシュでは、より大容量かつ高速なI/Oの需要が高まる中、2024年に市場投入した「Octal NOR Flash」も好調です。現在は車載向けが先行していますが、今後は民生機器などに向けた需要の拡大も期待しています。

AI関連の需要増の他、特筆した動きはありますか。

小林 新機軸の高付加価値製品が生まれています。脱炭素化への対応や、地政学リスクの回避といった現代的な視点からの製品供給が求められ、その対応が新たに高付加価値なビジネスを生み出しています。

 脱炭素化においては、2024年12月より、再生可能エネルギー由来の電力で製造した製品を「グリーンプロダクト」として供給し始めました。既に、個数ベースの出荷実績で約10%を占めるまでになっています。

 当初は米国企業を中心に、直近では日本企業からの引き合いもあります。サプライチェーンや自社ウエハー製造工程における製造プロセス、ならびにOSAT(半導体受託組立・試験)施設における全工程を含むGHG排出量を可視化する「カーボン・アカウンティング・システム」を構築しており、今後は製品ごとのカーボンフットプリントの管理情報をお客様に提供できる体制を整えていきます。

地政学リスクには、どのような対応をされているのでしょうか。

小林 リスクの分散や、お客様のご要望に応えるために「NCNT(Non-China, Non-Taiwan)戦略」の選択肢も準備を進めています。

 当社は、長期的かつ安定供給が求められる車載向けや産業機器向けなどの製品を多数手掛けています。複雑かつ不確実なビジネス環境にある今、パッケージングやテスト工程の一部を中国・台湾以外の地域に委託する体制を整備することで、安定供給を果たすための取り組みです。

16nm追加投資で
生産能力向上

今後の見通しをお聞かせください。

小林 メモリ価格は、今後改善していくと予想しています。これにより、日本では特に、車載向けや産業機器向けで、新たなビジネス機会が生まれると見ています。

 意外に思われる方もいるかも知れませんが、現在デジタルカメラ向けの市場が伸びています。スマートフォンで日常的に写真や動画を撮影する行為が文化として定着し、より綺麗な映像を撮りたいというニーズが再び喚起されているようです。日本企業が強いこの市場を確実に開拓していきます。

 また、エッジ機器などへのAI機能導入の動きが拡大し、今後のメモリ需要を引き上げることは確実です。当社が台湾の高雄に構える工場では、2026年以降の追加投資によって、最先端の16nmDRAMプロセスでの生産を拡大し、台中工場でもフラッシュ製品の生産能力を高めるために投資を決めました。

 市場が求める機能・性能のメモリを、求められる供給形態で、必要な数だけ安定的に提供していくことによって、お客様のビジネスの成長を支えていきます。

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エッジAIでの高帯域データ伝送に対応可能な「CUBE」(図上)と、脱炭素化の要請に応える「グリーンプロダクト」(図下)

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