リスク対策・BCP Forum
サイオステクノロジー
システム障害は
もはや「例外的事象」ではない
BCPの実効性を高めるLifeKeeper
現在のITシステムは様々な脅威にさらされている。システムが停止すれば深刻な経済的損失が生じる恐れがあるため、速やかに復旧できる体制を構築しておくことが肝心だ。これを実現する仕組みとして注目されているのが「HAクラスター」である。稼働系と待機系のサーバーを用意して、障害時にも短時間で自動切り替えできるようにする。HAクラスターによってBCPの実効性を高める方法を紹介する。
システム障害はもはや「例外的事象」ではない

サイオステクノロジー株式会社
BC&CS サービスライン
Marketing Representative
石部 智則氏
ITシステムを運用する上で避けられないのが、トラブルや障害への対応だ。大規模障害が発生し、システムが長期間停止すれば、ビジネスに深刻な影響を及ぼす恐れがある。こうした中、ITベンダーのサイオステクノロジーは、ITシステム障害と事業リスクに関する実態調査※を実施した。
「それによると、BCP(事業継続計画)を策定済みとした回答者は全体の51%にとどまっていました。定期的な訓練まで実施している企業となると、全体の30%まで減ります。BCPを策定することも大事ですが、その実効性を高めるための取り組みを行うことも非常に重要です」と同社の石部 智則氏は説明する。
また、BCPを策定済み/策定中とした回答者の9割以上が、重要な領域として「ITインフラ」と回答。ただ一方で、その信頼性・安定性を確保することは、そう簡単ではないという実態も見えてきた。
「6割の回答者が『過去3年間に1回以上のシステム障害を経験している』と回答しました。そのうち1時間以上の停止を経験した回答者は72%、1000万円以上の損失を出したケースは26%に上ります」と石部氏は述べる。
これらの結果から分かるのは、システム障害が決して例外的な事象ではないということだ。障害対策を「ビジネスを守るための投資」と捉え、適切な対策を推進することが企業・組織に求められている。
※「ITシステム障害と事業リスクに関する実態調査【2025】」
コストを抑えつつ
早期復旧を実現するHAクラスター
では具体的に、どのような対策を実施すべきなのか。いくつかの手法がある中から、自社システムの特性や要件などに応じて、最適なものを選択することが肝心だ。
「例えば、フォールトトレラント(FT)システムは、電源や通信機器を含む主要な構成要素を多重化することでダウンタイムをほぼゼロにする非常に強力な仕組みです。ただ、その分環境構築に多くのコストがかかるため、投資対効果を精査する必要があるでしょう」と石部氏は話す。
完全無停止が必須でないシステムについては、パブリッククラウドの障害復旧機能を使う方法もある。サービスの標準機能のため、導入が容易な点がメリットだ。ただ、IaaS/PaaS/SaaSなどの利用環境によって利用者とクラウド事業者の責任範囲が異なるため、その点は確認しておきたい。
そして、最も基本的な対策の1つがバックアップである。簡便だが、復旧作業を手動で行う必要がある、日次バックアップなら障害発生のタイミングによっては最大で約1日前の状態まで戻る可能性があるといった点は踏まえておく必要があるだろう。
このような中、サイオステクノロジーが推奨するシステム障害対策のアプローチが「HAクラスター」だ。
「稼働系と待機系の2つのサーバーを用意し、異常が発生した場合に待機系へ自動で切り替えを行います。ダウンタイムをゼロにはできませんが、短時間で復旧可能で、FTシステムほどコストがかからない点がメリットです」と石部氏は紹介する。
サイオステクノロジーは、HAクラスターソフトウエア「LifeKeeper」を提供している(図1)。オンプレミスでの導入はもちろん、仮想環境やアマゾン ウェブ サービス(AWS)、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)、Google Cloud、さくらのクラウドなど、国内外の主要パブリッククラウドでも利用可能。WindowsとLinuxの両OSに対応しているほか、Oracle DBやMicrosoft SQL Serverをはじめとしたミドルウエア/アプリケーションの冗長化にも利用できる。2026年8月現在、世界で9万ライセンスの導入実績があるという。
図1 LifeKeeperを用いたHAクラスターのイメージ

稼働系と待機系の2つのサーバーを用意し、万一稼働系に異常が発生した場合には、速やかに待機系へ自動切り替えを行ってサービスを継続する
「DR環境の構築にもご利用いただけます。待機系のサーバーを遠隔地のDRサイトに置けば、台風や地震などでメインサイトが被災した場合もDRサイト側で業務復旧が可能。BCPの強化に大きな効果が期待できます」と石部氏は言う(図2)。
図2 LifeKeeperを用いたDR環境の構成例

同一サイト内だけでなく遠隔地サイトを用いた冗長化にも対応。インフラ障害や自然災害に備えたDR環境の構築にも有効活用できる
※図は構成の一例
さらに、HAクラスターとバックアップを組み合わせることで、より安全な環境を構築することもできる。HAクラスターは、サーバー/アプリケーション障害に大きな効果が期待できる半面、データの破損やユーザーによる誤消去には対応できない。この点をバックアップで補うことで、システム障害からの早期復旧と、データ破損や誤削除に備えたデータ保護を両立できる。「目的が異なる複数の手法を併用することで、さらに強固なシステム障害対策を実施できます」と石部氏は語る。
事業継続に欠かせない
可用性を実現した企業も
既に多くの企業がLifeKeeperを導入してBCP強化を実現している。一例が、大手洋生菓子メーカーのモンテールだ。同社は一日あたり70~80万食もの洋菓子を出荷しているが、DX推進の一環として、その製造を司る生産管理システムを刷新した。
万一、新システムが停止した場合にはビジネスが止まってしまうことになる。そこで同社は、LifeKeeperを用いてシステムの中核を担うOracle DBの可用性を向上。Oracle Databaseが備える冗長化の仕組みも検討したが、同社にとって新たに扱う技術であり、構築・運用に必要な習熟負荷などを考慮してLifeKeeperを採用したという。
もう1つは、ふくおかフィナンシャルグループのフィンテック企業、iBankマーケティングの取り組みだ。同社は銀行公式アプリ「Wallet+」を提供しているが、オンプレミスのシステムでは繁忙期の処理が厳しくなってきたことから、AWSへの移行を決断。マルチAZ構成を取ると同時に、金融機関との重要なデータ連携を担うHULFTの可用性を確保するため、LifeKeeperも併せて導入した。運用開始後、AWS側の瞬断などを契機に複数回のフェイルオーバーが発生したが、HULFTのファイル連携機能は設計通り主系から副系へ切り替わり、連携する金融機関や利用者への影響を回避。金融機関とのデータ連携の安定稼働に寄与している。
「システム障害は、どんな企業でも起こり得る現実的な事業継続リスクといえます。どのシステムが止まると困るのか、どれくらいの停止時間なら許容できるのかをあらかじめ、しっかりと考えておき、万一の際にもできるだけスムーズに『戻せる』仕組みが求められています」と石部氏は強調する。サイオステクノロジーのLifeKeeperは、これを実現する際の有力な選択肢になるだろう。








