AI・データ基盤Forum
アバナード
重要になる「ビジネスコンテキスト」
AI時代に必要なデータ基盤の姿とは
「どのLLMを選ぶか」ではなく、「どのような情報・データをAIに渡せるか」がAI活用の成否を分ける時代になりつつある。そこで注目されているのが「ビジネスコンテキスト」だ。業務上の意味や企業固有のノウハウ・知見などを適切にAIに渡すことで、ビジネス価値に直結する回答を引き出せるようになる。これを具現化するためのデータ基盤に求められる4つの層とは。アバナードのキーパーソンが解説した。
AI活用の進展に伴い、
重要度を増すビジネスコンテキスト

アバナード株式会社
セキュリティ ソリューションエリア リード
中野 達也氏
「AI活用における競争軸が大きく変わりつつあります。業務上の意味や文脈(ビジネスコンテキスト)を持つデータをいかにAIで活用できるかが、競争力を左右する時代がやってきています」。そう指摘するのは、アバナードの中野 達也氏だ。
生成AIが登場した当初は「どのLLMを使うか」が企業の関心ごとだった。ChatGPT、Claude、Geminiといった主要サービスの間でも性能差や得意・不得意が明確で、モデル選定そのものが差別化要因になり得たからである。
「一方、現在はモデル間の性能差が縮まり、AIモデルがコモディティー化しつつあります。この状況で競争差別化を図るためには、どのモデルを選ぶかではなく、AIに与える情報の精度に着目する必要があります。そこでカギを握るのが、企業・組織に固有の業務プロセスやノウハウ、権限などの『ビジネスコンテキスト』です。これをAIに渡すことができれば、その企業に固有のビジネスや業務に対して、有益な回答を得られるようになります」と中野氏は言う。
ビジネスコンテキストは、「構造化データ」「非構造化データ」「業務プロセス」「組織の暗黙知」という大きく4つの要素で構成されている(図1)。
図1 ビジネスコンテキストとは

これら4つの要素から成るビジネスコンテキストをAIに与えられるかどうかが、AI活用でより大きな成果を上げるための条件になる
構造化データはERPやCRM、基幹システムが保有するマスタデータや取引データなどのことだ。非構造化データとは、会議の議事録や業務文書、メール/チャットのやり取りなどのこと。業務プロセスとは、「誰が、いつ、何を、どういう順序で行うか」に関する組織固有のルールや判断基準などである。そして組織の暗黙知は、社員ごとの役割や過去の意思決定の履歴、個人が持つ業務ノウハウなどを指している。
「このように、ビジネスコンテキストとは『データ+業務+人+判断』を総合したものといえます。データ自体は既に多くの企業が保有していますが、そこに意味やつながり、文脈を付与しなければ、AIにとって真に役立つ状態にはならないのです」と中野氏は説明する。
また、ビジネスコンテキストには質も求められる。例えば、与えられた情報に古いルールや廃止済みの手順、権限外の資料が混ざっている状態だと、AIが正しい回答を返すことは難しくなる。そうなると、AIはやがて現場で使われなくなってしまうだろう。AIに与えるデータや情報、ビジネスコンテキストは、鮮度が高く、出所が明確であることが非常に大切だ。
「もちろん、ビジネス利用を前提とする以上、セキュリティーとガバナンスも忘れてはいけません」と中野氏は続ける。ハルシネーションや情報漏洩のリスクを低減するほか、「どの情報を、どこまで、どう渡したか」をしっかり記録して管理することで、AIの精度向上にもつなげられるようになる。具体的には、利用者のID・権限の管理、機密度に応じたデータの分類、定期的な監査などを実施することがポイントになるという。
データ活用の主体の変化に合わせて、
データ基盤を再定義する
ビジネスコンテキストを適切にAIに与えられるようにするためには、データ基盤を再定義する必要がある。なぜなら、データを扱う主体がこれまでとは変わるからだ。
これまでデータを扱ってきたのは主に人間である。人間はビジネスコンテキストを自らの頭の中で補完できるため、従来のデータ基盤は「蓄積」「検索」だけできればよい状態になっていることが一般的だった。
しかし、これからはデータの利用主体にAIが加わってくる。AIはビジネスコンテキストを把握していないため、データ基盤の側からビジネスコンテキストを供給する必要がある。今後、AIエージェントが普及してくれば、データの利活用に人間が一切介在しないケースも増えるだろう。そうなると「使ってよいデータの判断」「使い方の制御」までをデータ基盤側がサポートする必要性が生じるのだ。
「これについてアバナードは、これからの時代のデータ基盤を含むAI基盤には4つの階層が必要だと考えています」と中野氏は語る。これを示したのが図2だ。
図2 これからのAI基盤のあるべき姿

下の3層でビジネスコンテキストを備えた信頼できるデータを実現する。その上で、最上位のControl LayerがAIエージェントを統制し、継続的に改善できるようにする
データを格納する「Data Layer」の上に、データと業務プロセスや組織のナレッジを接続してビジネスコンテキストを付与する「Context Layer」を配置する。その上に、権限管理やデータの分類によってセキュリティー、ガバナンスを強化する「Trust Layer」を置く。ここまでが「質の高いコンテキストを供給する基盤」=データ基盤となる。
そして最上部に配置するのが「Control Layer」だ。ここがAI/AIエージェントを統制したり、継続的な改善につなげたりする基盤になるという。「このような基盤を整備することで、質の高いコンテキストを継続的に供給し、AIの価値を引き出すことが可能になります」と中野氏は強調する。
ビジネスコンテキストを
継続的に供給することが大事
先に中野氏が触れた通り、データそのものは既に大多数の企業が保有している。今考えるべきは、それらのデータに、いかにしてビジネスコンテキストを付加するか。さらにセキュリティーやガバナンスを利かせた状態で使えるようにするかということである。
「4つのレイヤーのうち、Control LayerはAIエージェントの活用に向けた層のため、構築するのは少し後回しでも問題ありません。まずは下の3層をしっかり整備してから、段階的に高度化することをお勧めします」と中野氏は話す。
アバナードは、データ基盤の整備に向けた企業・組織の取り組みを強力に支援する。マイクロソフトとアクセンチュアの合弁会社として誕生した同社は、双方の強みを兼ね備えた企業として、コンサルティングからシステムの設計・構築、運用までを一気通貫でサポートすることが可能だ。共に取り組むことで、自社の現状把握と課題解決をスムーズに進めることができるだろう。
データ、業務、人間そしてAI/AIエージェント。すべてを信頼できる形で束ね、ビジネスコンテキストを継続的に供給し続ける基盤をどう構築するか――。これが、AI時代を勝ち抜く力の源泉となる。
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