DXと言われると、大がかりなイメージを抱きがちだが、実は中堅・中小企業だからこそ取り組める“身近なDX”もある。そこで求められるのは、経営サイドがDXの本質を理解し、経営戦略に取り込む方法だ。先行き不透明な時代に、中堅・中小企業の経営者が身近なDXへの一歩を踏み出すうえで必要な視点とソリューションとは何か―。こうした問題意識の下、去る8月29日、日経トップリーダー主催の経営課題解決セミナーが開催された。ここでは、各セミナーのレポートを紹介する。
IT知識ゼロからネット通販200億 「タンスのゲン」がやったこと
橋爪 福寿 氏 (タンスのゲン代表取締役)、《モデレータ》 北方 雅人 (日経トップリーダー 発行人)
契約業務DXがもたらす企業価値の向上
浦山 博史 氏 (LegalForce 執行役員 営業・マーケティング本部長)
領収書・請求書のペーパーレスから成功に導く企業DX
川縁 啓介 氏 (コンカー SMB事業本部 パートナー 戦略推進部 部長)
顧客対応に関わる「イラッ」を解消し企業ファンを増やすソリューションとは
安藤 竜一氏 (ナイスジャパン 日本法人 社長)
社員の「人的資本を最大化」させるプロティアン経営戦略
田中 研之輔 氏 (プロティアン・キャリア協会 代表理事/法政大学 教授)
特別講演
田中 研之輔 氏 (プロティアン・キャリア協会 代表理事/法政大学 教授)
2025年に団塊世代の800万人全員が75歳以上になり、日本は超高齢社会を迎える。人手不足が激化することから「2025年問題」と呼ばれる。
法政大学の田中研之輔教授は、「これから人手が足りない状況は変わりません。足りないと嘆くのではなく、今いる人たちをどう生かすか。これを経営戦略の一丁目一番地に据えることが大切。そのために企業は社員一人ひとりのキャリアに向き合う必要がある」と指摘する。
「キャリアとは、これまで歩んできた道のりだけでなく、これからを生きていくための羅針盤。会社としてそういう働き方、生き方に寄り添えるかどうかが問われている。実際に採用に困っていない企業は、社員のライフイベントとしてのキャリアを大切にしている。だから社員も辞めないし、当事者意識を持って主体的に仕事に関わっています」
つまり、社員個人のキャリア形成と企業の成長は切っても切れない関係にあり、見方を変えれば、社員のキャリアに向き合わない企業に未来はないということだ。

田中教授は、「これまでのキャリアとは、1つの組織の中で昇進していくための“尺度”にすぎなかったが、今後は会社でなく自分自身がキャリアの成否を決めるのであって、組織は個人が求める場を提供する地面のような存在になる」と説明する。この新しいキャリアのあり方を田中教授は「プロティアンキャリア」と呼ぶ。自ら主体的にキャリアを形成していく自律型キャリアという意味だ。個人と組織の関係性をよりよいものにしていくための考え方でもあるという。
特にコロナ禍を機に、人材戦略の中で「人的資本の最大化」は大きなテーマになっている。その人的資本を最大化していく施策を打てば、結果的に経営に波及する。だからこそ、社員一人ひとりと向き合って成長戦略を描く必要があると田中教授は説明する。
そこでネックになるのが、企業側の問題だ。例えば、キャリア開発について経営者の理解・関心が低く、「いちいち社員のキャリアまで考えている暇はない。とにかく仕事をしてくれ」という態度も少なくない。だが、「この態度はミレニアル世代やZ世代には通用しない」と田中教授。
「一人ひとりのやりがい、働きがいを描き出す支援を会社が積極的に担い、後押しすることでチームとして強くなる。本人の幸福度も高まり、回り回って会社の業績にも反映されます」
田中教授によれば、社員が主体的に業務に向き合うことで心理的幸福感が高まる。例えば表彰制度などが効果的だ。心理的幸福感の高い状態になれば、労働生産性が向上する。そのようにして生み出される可処分時間が有効活用できるようになる。その結果、ビジネスキャリア、ライフキャリア双方の心理的幸福感が高まる。こうして個人、組織双方にとって好循環が生まれるという。
だからこそ、キャリア形成の阻害につながるような“ブレーキ”が組織内にないか点検し、少しでもブレーキがあれば解消し、キャリア開発を促進する“アクセル”となる施策を打ち出していくことが急務と田中教授。その視点で経営戦略、事業戦略に加えて、キャリア戦略を打ち出していくことが2025年問題を乗り切り、企業の成長につながる第一歩になるはずだ。

IT知識ゼロからネット通販200億
「タンスのゲン」がやったこと
橋爪 福寿 氏 (タンスのゲン代表取締役)
《モデレータ》 北方 雅人 (日経トップリーダー 発行人)
基調講演

契約業務DXがもたらす企業価値の向上
浦山 博史 氏 (LegalForce 執行役員 営業・マーケティング本部長)
ソリューション講演

領収書・請求書のペーパーレスから成功に導く企業DX
川縁 啓介 氏 (コンカー SMB事業本部 パートナー 戦略推進部 部長)
ソリューション講演

顧客対応に関わる「イラッ」を解消し
企業ファンを増やすソリューションとは
安藤 竜一氏 (ナイスジャパン 日本法人 社長)
ソリューション講演

社員の「人的資本を最大化」させるプロティアン経営戦略
田中 研之輔 氏 (プロティアン・キャリア協会 代表理事/法政大学 教授)
特別講演