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8/29開催 経営課題解決セミナー レポート
中堅・中小企業のDXは身近なところから8/29開催 経営課題解決セミナー レポート
中堅・中小企業のDXは身近なところからPICK UP

DXと言われると、大がかりなイメージを抱きがちだが、実は中堅・中小企業だからこそ取り組める“身近なDX”もある。そこで求められるのは、経営サイドがDXの本質を理解し、経営戦略に取り込む方法だ。先行き不透明な時代に、中堅・中小企業の経営者が身近なDXへの一歩を踏み出すうえで必要な視点とソリューションとは何か―。こうした問題意識の下、去る8月29日、日経トップリーダー主催の経営課題解決セミナーが開催された。ここでは、各セミナーのレポートを紹介する。

PICK UP
橋爪 福寿 氏
タンスのゲン
代表取締役
橋爪 福寿

「俺でもできるんじゃないかな」
家具・家電・インテリア用品などのネット通販事業を手がけ、20年で年商200億以上を売り上げるまでに成長した「タンスのゲン」。代表取締役・橋爪福寿氏は、2002年にインターネット通販なるものを初めて目にして、そう直感したという。

元々、橋爪氏は、国内屈指の家具の街・福岡県大川市で1964年に父親が創業した木工所に勤め、婚礼家具などの生産を手がけていた。ところが婚礼家具の需要が低迷し始める。ある日、納入先の卸業者が倒産し、9カ月分の手形が焦げついてしまった。これを機に、作った家具は自分たちで売ろうと決めて、製造から小売へとシフトしていった。だが、90年代末には大型店が次々にできて、経営は苦しくなるばかりだった。

2002年、「何もしなければ路頭に迷う。犬死だけはしたくない」と危機感を募らせていたところ、取引先の営業マンから、近所の家具店がネット通販で500万円売り上げたとの噂を耳にする。ネット通販なるものを初めて眺めているうちに、冒頭のセリフが口をついて出たという。「パソコンも触ったことがなかったけどね」と笑う。

すぐに楽天市場のショップ開業セミナーに申し込む。その直後の2002年7月、楽天市場にネットショップを開設する。「タンスのゲン」の誕生だ。店にある商品の写真を撮り、画像を加工してサイトにアップロードし続けた。家具職人らしく、詳しい商品説明文はいくらでも書けた。

来店が一番多い時間帯に休みなんてありえない

出店4日目のこと。夜11時に長野県から3万9800円のソファの注文が舞い込んだ。記念すべき第1号顧客である。
「それからわずか2週間で20万8000円。翌月には100万売っているんです」
ネット進出から2年後には実店舗を閉めて退路を絶つ。

「店を開けていても3日間お客さんが来ないこともあるのに、ネットでは何もしていないのに注文がばんばん入ってくるわけですから」
ネット出店から売り上げは右肩上がりで伸びているが、2012年だけは前年比1割減。前年の東日本大震災で物流が混乱したからだ。「うちは九州から全国配送ですが、注文が毎日じゃんじゃん入っているのに、関門海峡から先に荷物が出せない状態が2週間続いたんです。物流クライシスですよ」

その反省から、ベッドやソファなど大型家具中心から小型商品中心へと舵を切り、ベビー用品、アウトドア用品、家電にも商品を広げていった。自社スタジオで商品写真を撮り、ツボを得た説明を書く。顧客が見てさわれないからこそ、実物と変わらないレベルの写真、詳しい説明をつけている。単に売るだけでなく、独自商品まで企画・生産し、販売サイト用の写真や説明を作り込む。

図2
タンスのゲンは家具・寝具・家電・アウトドア用品・ベビー用品等オリジナル製品を中心に、2700商品を販売

テレビ離れだからこそ
中小企業にチャンス

小さなネットショップが顧客を順調に増やしていけたのは、丁寧な写真や説明もさることながら、家具店時代の接客経験も無縁ではない。

「ネットでは夜遅い時間がアクセスも注文も多い。普通のネットショップなら、そんな時間帯は休みですよね。問い合わせには3日以内に回答なんて対応の店が多い。でも、実際に店をやっていた経験から言えば、お客さんが一番来る時間に接客もせず、休んでいるなんてありえない。出店当初、深夜の問い合わせに私が5分で答えたら驚かれましたが、その回答に納得して9割ほどのお客さんはそのまま注文してくれました。半分試されていたのかもしれません。実店舗なら質問があればその場で答えるのは当たり前の話なんです。DXは最先端のように見えても人間同士の泥臭い部分が大きいんです」

最近は、一般ユーザーがインスタグラムなどで紹介した商品が話題になって購入に至るケースも増えている。商品にストーリー性を持たせようと、人気動画制作者やアンバサダーと共同で商品開発もする。

「5、6年前まで大きな予算を組んでテレビCMを作っていましたが、最近はその効果も薄れてきました。若い人はテレビを見ませんから。中小企業にとって大チャンスです。ネットショップやSNS経由の販売なら自分の人件費だけで始められるんです」

現場で培ったノウハウを余すところなくDXに落とし込んで成功したタンスのゲンは、中小企業による危機突破術の顕著な例と言えそうだ。

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