物流・ロジスティクス チャンネル 物流総論 09

物流・ロジスティクスセミナーレビュー
先端物流倉庫編

先端の物流倉庫を効果的に活用し
課題解決につなげる

「物流倉庫」抜きには語れぬ
物流改革
戦略に組み込み成果を出すには

シービーアールイー
リサーチ・シニアディレクター
高橋 加寿子

エレコム
取締役 物流部長
町 一浩

パル
取締役 専務執行役員
堀田 覚

EC需要の高まりなどで、物流量は増加の一途をたどっている。一方、トラックドライバーの時間外労働に上限規制を設ける「2024年問題」によって、モノを運べなくなる状況は深刻化。この逆ザヤを解消し、「サステナブルな物流」を実現するにはどうすればいいのか? 日経BPは、課題解決のヒントを探る物流・ロジスティクスセミナー「先端ソリューションを起点に描く『新・物流改革』」を2024年10月31日に開催した。その内容の一部を紹介する。

物流不動産マーケットは活況
多様なニーズに応えた施設も登場

最初の講演者は、世界最大の事業用不動産サービス会社、CBREのリサーチ・シニアディレクターの高橋加寿子氏。「物流業界と物流施設のニーズ」と題し、物流不動産マーケットの概況について解説した。

高橋 氏

基調講演

シービーアールイー
リサーチ・シニアディレクター
高橋 加寿子

同社の調査によると、日本における大型マルチテナント型物流施設の稼働床面積は、2024年6月期に900万坪超に達した。

その背景について、高橋氏は「ECの成長や、製造業が製品・部品の安定供給のために国内在庫を増やしていること、『2024年問題』に備え、輸送距離を縮めるため地方の倉庫を賃貸する動きが広がったことなどがあります」と説明した。

最新の賃貸施設は、自動化、効率化のための仕組みや機器が利用可能であることや、建築費の高騰が賃貸需要の拡大に拍車を掛けているようだ。

今後の賃貸ニーズも拡大基調が見込まれる。CBREが毎年行っている「物流施設利用に関するテナント調査」によると、回答企業の51%が今後3年間で「面積を拡大する」、35%は「拠点数を拡大する」と回答しているからだ(2024年調査、以下同)。

「今後3年間に優先または重視する課題」という問いでも、「新規の物流拠点開設、面積の増強」との回答が最も多く、次いで「従業員の就労環境の整備、雇用の確保」の順となった。「物流施設が増える一方、どの施設でも従業員の確保は大きな問題となっており、施設内に空調を完備するなど、従業員の働きやすさを求める傾向も強まっているようです」(高橋氏)。

今後3年間に優先または重視する課題(3つまで選択)

今後3年間に優先または重視する課題(3つまで選択)

CBREによる「物流施設利用に関するテナント調査」では、「今後3年間に優先または重視する課題」として、「新規の物流拠点開設、面積の増強」「従業員の就労環境の整備、雇用の確保」などが挙がった
出所:CBRE「物流施設利用に関するアンケート調査 2024」(2024年3月)

また高橋氏は、バッテリーなどを保管する危険物倉庫や、冷凍冷蔵倉庫についても同社への問い合わせが増加していると話す。「『今後の冷凍冷蔵倉庫の利用形態』を問う設問では、意外にも賃貸を選択する回答が最も多いという結果になりました。建築費の高騰によって、老朽化した自社の倉庫を建て替えられないことも、賃貸へのシフトにつながっているのではないでしょうか」と高橋氏は分析する。

最後に高橋氏は、物流課題に悩む経営者や企業担当者に向け、「デベロッパーはテナントのニーズを汲み取りながら、日々、設備やサービスの改善を重ねています。コストやニーズに見合った施設を見つけるためにも、アンテナを高くして探ってみてほしい」と語った。

※2023年の売上ベース

物流倉庫への自動化導入
実践企業2社が道のりを明かす

「省人化・自動化・効率化に向けて 進化を続ける物流倉庫」と題する特別講演を行ったのは、パソコン周辺機器メーカー、エレコムの取締役 物流部長の町 一浩氏と、雑貨店チェーン3COINSなども展開するアパレル企業、パルの取締役 専務執行役員の堀田 覚氏だ。

町 氏

特別講演

エレコム
取締役 物流部長
町 一浩

マウスやキーボードなど、約1万5000SKUもの商品アイテム数を誇るエレコムは、そのうちの約87%を詰め合わせ、問屋を経由せず、小売店やEC業者に直接出荷する多品種小ロットの流通形態を特徴としている。東日本方面への出荷は神奈川県相模原市にある「神奈川物流センター」が、西日本は22年に開設した「兵庫物流センター」(兵庫県猪名川町)がカバーしている。

「もともと西日本の物流センターは大阪市西淀川区にありましたが、大阪湾に近く、水害リスクが大きいことから内陸部の猪名川町に移転しました。同時に、慢性的な労働力不足を解決するため省人化にも取り組みました」と町氏は説明した。

同社が兵庫物流センターで目指したのは、「Goods to Person」(GTP)というコンセプトの実現である。

「人間が歩いて品物を取りに行くのではなく、品物が人間に近づいてくる、というコンセプトです。当社の物流センターの現状分析を行ったところ、作業全体の25%が歩行時間であることが分かりました。そこで自動倉庫やAGV(無人搬送車)を導入し、スタッフの元に品物を運んでくる仕組みを構築しました」(町氏)

省人化率は、設計値で約62%。例えるなら、100人で行っていた作業が38人前後でできるような環境を整えた。 エレコムが倉庫業務の省人化に踏み切ったのは、EC需要の高まりとともに多品種小ロット出荷の高まる中、労働力不足が顕在化してきたからである。

エレコムは、「人間が歩いて品物を取りに行くのではなく、品物が人間に近づいてくる」という「Goods to Person」(GTP)のコンセプトを実現するため自動倉庫やAGVを導入。作業スタッフからも「業務が楽になった」と好評だという

共同で特別講演を行ったパルも、同様の悩みを抱えていた。

「当社は、アパレル店や3COINSなど全国で約1000店舗を展開していますが、ECの売り上げも大きく伸びています。とくに20年以降のコロナ禍でEC需要が一気に高まり、商品出荷の遅延など問題が目立つようになってきました」と堀田氏は振り返る。

堀田 氏

特別講演

パル
取締役 専務執行役員
堀田 覚

パルのEC売上高推移

パルのEC売上高は、コロナ禍が始まった2020年度に200億円を超え、その後も急拡大している。これに伴い倉庫における出荷作業が増えたことが、省人化を進めるきっかけとなった

人手が足りないことに加え、倉庫が多層階に分かれ、作業の流れを悪くしていることも出荷を滞らせる原因であった。

ECの受注拡大とともに出荷する商品が増えれば、保管・作業用のフロアをさらに借りるので、ますます作業効率が悪くなるという悪循環に陥っていた。

「『2024年問題』でますます人手の確保が困難になることが予想されていたので、何とか早く手を打たなければと考え、ワンフロアですべての業務を回せる倉庫に移転することを決めました」と堀田氏。

元の倉庫から比較的近い場所にあった「DPL平塚」という賃貸物流施設に移転。

さらに、省人化を図るためロボットの導入を決定し、様々な機種を比較検討の末、フランスのExotecが開発した「Skypod」というロボットを採用した。

堀田氏は、「倉庫自動化システムの導入によって、ピッキング効率が7~8倍に向上しました。また、『Skypod』は倉庫の天井高に合わせてラックが設置できるので、保管密度が以前の倉庫の約3倍に高まっています」と効果について語った。

エレコムとパルの事例に共通するのは、EC需要の急速な高まりや、「2024年問題」といった課題を直視し、先手を打って解決を図ろうとしたことだ。

しかも、徹底した現状分析に基づいて優先すべき課題を特定し、積極的な投資によって、それを抜本的に解決しようとしたところが参考に値する。

エレコムの町氏は、「省人化の仕組みを採り入れる前から、既存の物流施設における業務上の課題は日常的に拾い上げていました。その積み重ねがあったからこそ、優先的な課題が浮かび上がり、投資対効果の高い省人化システムが構築できたのだと思います」と語る。

一方、パルの堀田氏は、「私は社内において、物流だけでなくマーケティング全体を管掌しています。そのため物流のボトルネックがビジネス全体にどんな影響を及ぼすのかという大局的な視点から意思決定ができ、これが迅速な投資の決断につながりました」と語った。

最後に町氏は、エレコムの今後の取り組みについて、「物流改革は長期視点で取り組むことが大切です。共同配送などの未来も見据えながら、さらなる効率化に挑んでいきたい」と抱負を述べている。

堀田氏は、「物流改革は、ビジネスの視点から捉えることが大事です。さらなる人件費の高騰は避けられないので、今後も省人化、自動化をさらに推し進めていきます」と語った。

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