コンパクトな空間のライブラリー

NEW STYLE

天井が低くコンパクトな空間のライブラリーは、立つと少し窮屈だが座ると包まれるような安心感がある。「一見マイナスに思える要素の解決策を考えると、それが心地良さにつながることがあります」(皆川氏)。

ミナ ペルホネン皆川明氏が語る
「よい記憶」を重ねる住まい

個性豊かなテキスタイルと独創的な世界観で国内外から高い評価を得るファッションブランド、ミナ ペルホネン。創業者でありデザイナーでもある皆川明氏は、ファッションにとどまらず、家具やインテリア、店舗・宿といった住空間にも造詣が深く、そのデザイン活動は幅広い。長野県浅間山の麓にあるミナ ペルホネンの保養所を訪ね、保養所での過ごし方やデザインのこと、計画中だという新築の住まいなどについて伺った。話の中から浮かび上がってきた、皆川氏の“住まいへの哲学”とは。

——保養所「hoshi*hana休寛荘」の前身だったこの場所は、2011年の東日本大震災の後、「有事に社員が避難できて、かつ普段は保養所として使える施設」を探す中で見つけたと伺いました。

建築家の中村好文さんと一緒に物件を探していて、吉村順三先生の設計による1960年代竣工のこの家に出合いました。浅間山の中腹に位置する空気も素晴らしかったですし、吉村先生の建築事務所におられた中村さんにリノベーションをお願いするという不思議なご縁も感じ、見て10分で決めました。

1階部分は、ほぼリノベーションする形で手を加えています。印象的だったのは、中村さんが「吉村先生だったらどうするかな」とつぶやきながら進めていらしたこと。ダイニングで日射しの入り方を見た中村さんが「吉村先生はこうしないんじゃないか」と言うので設計図を見たら、やっぱりオーナーの増築だった、ということもありました。

ダイニングは元に戻すために減築し、新たにテラスを作りました。このエリアは太陽が浅間山に隠れる時間が少ない、晴天率の高い土地。その光を存分に生かした空間になりました。

ミナ ペルホネン皆川明氏

日射しがたっぷり注ぐダイニングでセブンチェアに座り、住まいについて話す皆川氏。

——皆川さんはこの保養所で、どんな時間を過ごされていますか。

月に2、3回はここへ来て、キッチンで料理したり、3階のライブラリーで本を読んだりしています。ヴィンテージのインテリアを配したリビングでゆったり過ごすこともありますね。

気分の切り替えを大切にしたいので、仕事はなるべく持ち込まないようにしています。何もしないでいる時間のほうがクリエイティブなアイデアが浮かぶことがありますから。ここでは経営について考えるにしても、短期的な判断ではなく、「次世代まで続けていくにはどうすればいいか」といった、長期的なことを考えるようにしています。

先日テキスタイルチームとここへ来て、何かを「決める」のではなくただ「話す」機会を設けました。自然に囲まれた環境では、やはりいつものミーティングと違うアイデアが生まれやすいと感じます。

ヴィンテージ家具が並ぶリビングルーム

リビングルームには皆川氏が集めたヴィンテージ家具が並ぶ。北欧の家具を中心に、ミナ ペルホネンを代表する「tambourine」のテキスタイルを使ったソファも。

リビングの全景

3階からはリビングの全景が見渡せる。「社員がここを訪れた時、リビングのインテリアを色々な角度から見て、触れて、良いデザインを学んでくれたらいいですね」(皆川氏)。

“気持ちと呼応するデザイン”を大切に

——皆川さんはミナ ペルホネンで洋服を扱うだけでなく、インテリアやホテルといった住空間も手がけておられます。ファッション、インテリア、住まい。これらは皆川さんにとってどんなものですか。

僕の中で、それぞれに境界線はほとんどありません。材料やプロセスが違うだけで、最終的な目的は同じだと感じています。

その目的とは、「よい記憶をつくる」ということ。抽象的ですが、どんなものも「所有する」だけではなくて、「(それを)使った時の記憶」によって気持ちが満たされるものです。「記憶にどう残るか」。これを常に考えていますね。

——住空間では、よい記憶をつくるためにどんなことを大切にされていますか。

視線や風の流れ、動線といった「ライン」です。物件の価値は面積や容積に左右されることが多いですが、そうしたことにはこだわっていません。狭くても遠くまで見渡せる空間や、コンパクトで動きやすい空間もありますから。

例えば3階のライブラリーは、天井が低いことで“包まれるような安心感”がある空間です。立っているより座って、視線が低い位置にあるほうが心地良いので、腰掛けるための段差を室内に設けています。こんなふうに、“気持ちと呼応するデザイン”であることが大切ですね。

ライブラリー

ライブラリーは窓から外にむかって座るベンチがあり、風と光を感じながらくつろぐこともできる。

北欧の建築家、アルヴァ・アアルトの自邸やサマーハウスも、必要最低限の広さの中に物を上手に取り入れ、心地良さを感じさせる空間になっています。ベッドルームは二段ベッドだけれど巣の中にいるような感覚でリラックスできたり、お風呂場は広くないけれど天井窓のおかげで明るさと開放感があったり、リビングは壁がない代わりに高低差をつけることで空間が上手に仕切られていたり。空間の「広さ」より、「高低差」や「レベル」の違いで心地良さを生み出すことは、僕も意識しています。

バスルーム

バスルームは皆川氏が中村氏に具体的なリクエストを出した数少ない場所。「浴槽が広いと非日常感を味わえますよね。社員が利用した時に日常から“スイッチ(切り替え)”できて、家族みんなで入れる広々としたお風呂をお願いしました」。

和室

琉球畳を敷き込んだミニマルな和室。障子は壁の裏側に収納できるようになっている。

地域と調和するセカンドハウス

——近年、平日は都心で生活し、休日は地方のセカンドハウスで暮らす方が増えているようです。都心の家と地方のセカンドハウス、それぞれに皆川さんが求めるものは?

都内では、坂倉準三先生が設計したメゾネットタイプのマンションに住んでいます。この家では朝と夜の時間を過ごすことが多いので、空間はミニマルで機能性に富み、メンテナンスなどに時間を取られないで済む空間にしていますね。キッチンもこの保養所の1/3ほどのスペースで、必要最低限の動きで調理や皿洗いができる。朝はカウンターでそのまま朝食をとることもあります。

暖炉

マリメッコでテキスタイルデザイナーを務めたデザイナー・陶芸家の石本藤雄氏の陶板が、壁に飾られている。

コンパクトでミニマルな都心の家から、御代田に来た時の解放感は大きいです。メリハリが生まれていると思いますね。
地域によって、得られる体験やインスピレーションは異なります。春や夏の御代田は緑が美しく、秋には周囲の木々の葉が落ちて遠くまで見渡せる景色が広がり、光もたくさん入ってくるようになる。冬はマイナス20度近くまで気温が下がることもありますが、だからこそ暖炉の温かさを楽しむことができます。

——京町家を中村好文氏とリノベーションした京都の宿泊施設「京の温所」や、昭和初期に建てられた薬局を改装した長野県松本のミナ ペルホネンの店舗など、皆川さんが手がける空間は地域との調和を大切にしていると感じます。セカンドハウスでも、地域に溶け込むことは重要でしょうか。

セカンドハウスは静かにプライベートを過ごす場所なので、宿泊施設や店舗のように外から注目を集める空間であるよりも、リラックスできる空間であることが大切です。その意味でも、地域に溶け込む方がよいと考えます。後からその地域へ入っていく場合は、なるべくそこにある文化や暮らしの景観を大切にしたいですよね。

変化を記憶し、長く続く家を

——中村さんと新築で家を建てる計画があると伺いました。

中村さんと「一度ゼロから家を建ててみたいね」と話していたんです。ただ、僕も一緒に考えることになっているので、いつ完成するかは分かりません(笑)。ああでもない、こうでもないと考えていますが、そのやり取りも含めて楽しんでいます。

——新築で家を建てることの魅力は何ですか?

ゼロから空間を“思考”できるところです。長い時間をかけるある種のゲームのようなもので、土地の可能性や条件を考慮しながら、自分の理想を実現していく作業・過程が面白いですね。

新しい家は、実験的にすべて同じ平米数の部屋で構成された家にしたいと提案しているんです。中村さんが変えちゃうかもしれませんが(笑)、このアイデアが彼の経験値と掛け合わさり、どう変化していくかが楽しみです。

一方で、“こだわり”を取捨選択することも大切。あれもこれも盛り込もうとすると、散らかった印象になったり過剰なものになったりする可能性があります。むしろ、「自分が空間に合わせていく」ような部分があっていいのではないでしょうか。

「長く続く家」という視点も大切にしたいですね。ヨーロッパでは何百年も前の家が今でも使われていますが、最初の住人がいなくなっても次の人が使い続けられる、そんなサステナブルな視点も大切だと思います。

——長く続くというのは、ミナ ペルホネンの思想とも重なりますね。

今日の午前中、家具のリペア職人が訪ねてきたので話をしていたんです。その折、「経年美化を大事にする」というテーマで話が弾みました。

最近の建築やインテリアでは、長く使っても変化を感じないものが普及しています。傷や変化を望まない人が多くいるからでしょうが、僕は「この材質はこう変化していきますよ」という特性も美しいと感じるし、それを含めて味わえたらいいと思うのです。そうすると、傷や汚れはネガティブなものではなく、「生活の跡を天然の材質が記憶してくれる」というように、印象が変わります。

長く暮らし続けることで住まいの価値を高めていく「経年優化」という考えを、三井ホームもお持ちだと伺いました。歳月を経ることを価値と捉え、時にはリペアしながら愛着が増していく。そんな暮らし方に寄り添う住宅メーカーがあることはとても安心です。

変化を楽しみながら、10年、20年とよい記憶を重ねていく。最初からそんなイメージを持てると、家を建てる人も、家そのものも幸せなのではと思います。

ウッドデッキのテラス

ダイニングと連続するウッドデッキのテラス。その裏には豊かな雑木林が広がり、風が吹くと爽やかに葉が擦れ合う音が聞こえる。

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