――材料強度の研究では、「想定外をなくすこと」が重視されているということでしょうか。
横堀 材料強度の専門家たちにとって「想定外」は許されません。極めて小さい確率だとしても、予測して対応するのが材料強度研究です。しかし、どんな構造も時間を経て変化しますが、長期間何も起きないと「大丈夫」という意識が生まれる可能性も否定できません。そこは一番危険なことですので、私は「絶対」という言葉を使わず、常に危機意識を持ち続けることが必要と考えています。
――一方で、医療分野への応用も期待されています。
横堀 古くから、医学と物理学の関わりは深く、ガリレオ・ガリレイやトーマス・ヤングといった著名な物理学者たちは、人体の仕組みに関する研究を行っていて、血管などの力学的性質についても研究されていました。その後、科学は細分化し専門化されていきましたが、現在、より高度化された科学の融合という形で医工学の研究も進められていると思います。私も30年ほど前から血管壁の疲労や損傷など、動脈硬化の予測につながる研究に取り組んでいます。
――先端総研として、材料研究を含め、どのような展望をお持ちでしょうか。
横堀 今後の展望としては、大きく分けて3つのポイントを考えています。1つ目は、過去の研究成果をリスペクトして、それを十分踏まえたうえで、研究を発展させることです。2つ目は、研究している成果を、必ず何らかの形で社会に還元させること。研究ではうまくいかないことのほうが多いくらいですが、諦めずにやりきる気持ちは大切です。そして最後は、過去からの膨大なデータを集約して、そこから得られる体系的なデータ、新たな知見を得ること。これは一人ではできない問題で、そのような体制が構築される必要がありますね。
――最後に、横堀先生と先端総研が目指す将来像を教えてください。
横堀 先端総研では、若い世代や、医学部をはじめとする専門領域や考え方の異なる人たちと関わることができるので、ご縁のあった人との研究を進めて、社会に貢献できればうれしいです。