インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
脱炭素化とデジタル化の両立へ、エネルギー効率の向上に寄与する次世代パワー半導体にかかる期待は大きい。業界リーダーのインフィニオンは需要拡大を見据え、安定供給に向けて製造能力を強化。Si(シリコン)で培った知見と信頼性を背景に、新素材半導体でもトップを目指す。
オン/オフのスイッチング機能で、電力の制御や供給を行うパワー半導体。人間の体で例えるなら、血液を送り出す「心臓」に近い。今、高いエネルギー効率を実現する次世代パワー半導体への期待が高まっている。現在、パワー半導体の素材はSi(シリコン)が主流だが、高電圧のニーズに応える耐圧性とスイッチング能力に優れた次世代パワー半導体として、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)の2種類が有力視されている。その背景をインフィニオン テクノロジーズ ジャパン パワー&センサー システムズ事業本部 事業本部長の後藤貴志氏は語る。「脱炭素社会に向けて、電気自動車(EV)が増加し、再生可能エネルギーの普及が進むなど、エネルギーへの意識が高まっています。一方で、デジタル化の進展により、データセンターへの負荷は増大し、電力需要は増え続けています。こうしたなか、従来のパワー半導体よりも小さな電力でより大きなパワーを生み出すことができ、かつ、エネルギー損失の少ない次世代半導体へのニーズが高まっているのです」。
高いエネルギー効率を持つ次世代半導体にも特性に応じて適した用途があるという。「SiCは、高い熱伝導率と高いジャンクション温度のため、高耐圧で大きな電流を扱う用途に向いています。例えば、EVや鉄道車両を動かすインバーター、EV充電ステーションなどでは既にSiCが使われ始めています。一方、GaNは比較的低電圧の領域で、高速スイッチング性能と高い電力効率により特に小型・軽量化が必要とされる用途に適しています。例えば、スマートフォンなどの充電アダプターでは、従来に比べ小さなサイズでより大きなパワーが出力できるため、GaNを採用した製品が主流になりつつありますが、今後は、生成AIブームなどで電力消費量が急増するサーバーや、省スペース化が重要なEVのオンボードチャージャー(車載充電器)といった用途でも活用が見込まれています。さらにミリ波帯を利用した5G(第5世代移動通信システム)において、高速スイッチングを行うデバイスもGaNの活用領域です」。これから需要の急拡大が予想されるGaNの、2027年までの市場成長率は年平均56%*1とされている。
一方で従来のSi製品について後藤氏は補足する。「Siは、コストメリットはもとより研究開発、製造、応用といった各フェーズにおいて、技術とノウハウの蓄積が豊富です。これまでの実績、コストと性能のバランスなどから、Siは今後も使用され、用途に応じてSiCやGaNとすみ分けられるものと考えています」。その証しにインフィニオンは、約50億ユーロを投資し、ドイツのドレスデンにSi製品を製造する新工場を建設中だ(2026年に稼働開始予定)。
*1 出所:Yole Group「Power GaN Report 2022 & Compound Semiconductor Market Monitor-Module I. Q4 2022」
インフィニオンは、パワーシステムの世界的リーダーとして、SiCおよびGaNという新素材においても確固たるポジションを確立していく。
「インフィニオンは、Si、SiC、GaNの3つについてIP(知的財産)から開発、製造まで自社で取り組んでいる世界でも数少ない企業の一つです。当社はパワー半導体においてグローバルで圧倒的なシェアを有しており、その延長線上に次世代パワー半導体を位置付けています。3つの素材のシナジー効果によってさらなる成長を目指します」
顧客の用途に最適な製品を提案するには、3つの素材すべてに対してノウハウと知見が必要となる。「当社は製品のみならず、幅広いアプリケーションを深く理解し、パワー半導体に求められる条件やニーズを把握しています。また、SiCやGaNを素材とする次世代パワー半導体の研究開発にも積極的に投資しています。そこで得た知見やデータをお客様への提案に生かすことができるのも当社のアドバンテージです」。
特にこれから急速に成長するGaN市場を見据え、積極投資を続ける。2023年3月、インフィニオンはGaNデバイスの専門企業であるGaN Systems社(カナダ)に対しM&A*2を行うことを発表した。GaN製品のポートフォリオを拡充し、顧客層やアプリケーションの幅を広げるとともに、研究開発力を一層強化するのが狙いだ。
*2 規制当局の承認を含む、通常の取引完了条件を満たすことを前提とする
今後、次世代パワー半導体は急速な需要拡大が見込まれる。安定的な供給を維持するために、インフィニオンは製造能力強化を図っている。現在、SiC、GaNのパワー半導体を製造するフィラッハ工場(オーストリア)に加え、既存のクリム工場(マレーシア)に新工場を建設中だ。2段階に分けて行われるこの供給拡大計画では、第1フェーズで20億ユーロを投資(2024年後半に稼働開始)、第2フェーズで、さらに最大50億ユーロを投資(2027年夏ごろ稼働開始)する。この大型投資は、EVや産業用の新規案件獲得が追い風となっている。
「2030年までにSiCによる収益が年間70億ユーロに上ると見込んでいます。高い供給能力は市場競争に欠かせません。同年までにSiC市場シェア30%という私たちの目標の達成を支えるのがクリム新工場です。今後も長期的な視点で供給拡大への投資を継続して行っていきます」
従来のパワー半導体で培ってきた高品質な製品製造へのこだわりも見逃せない。「Siのパワー半導体では品質を徹底追求し、非常に低い故障率を実現しています。お客様からの高い支持は、提案力や供給力とともに、この品質に対する信頼を築いてきたからです。インフィニオンは、世界中のどの工場でも同じ基準で製造を行っており、SiC、GaNの製造においても、Siで培った製造ノウハウを生かしています」。
脱炭素化に向けてエネルギーの効率化が求められる今、次世代パワー半導体への期待は大きい。インフィニオンは、パワー半導体で培った知見と信頼性、さらに供給力でニーズに応え、脱炭素社会の実現を支える。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
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