レゾナック・ホールディングス
レゾナックは2023年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して門出を迎えた新会社だ。「作る」「考える」化学に強い旧昭和電工と、「混ぜる」化学に強い旧日立化成が統合することで大きなシナジーが生まれつつある。「共創型化学会社」として業界全体に新たな価値を提供している。
JR新川崎駅からほど近い場所に、半導体業界のキーパーソンがこぞって訪れる場所がある。それがレゾナックの「パッケージングソリューションセンター」だ。レゾナック・ホールディングス 取締役常務執行役員最高戦略責任者の真岡朋光氏は「訪問された皆さんが必ず驚き満足されます」と自信をのぞかせる。なぜなら、通常の半導体メーカーではなかなか見られないほどの最先端の半導体製造装置群をそろえているからだ。
レゾナックは2023年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して誕生した。コア成長事業として半導体材料事業を位置付ける。半導体製造の前工程・後工程材料に関わる材料を得意とし、グローバルトップのメーカーとして半導体の技術革新を素材の力でけん引している。材料を提供する立場でありながら、最新の半導体パッケージ試作ラインを備え、顧客や協業メーカーと次世代の製品づくりを議論できる場を用意していることが特徴だ。
半導体製造工程において、前工程はシリコンから作られたウエハーの上に数百個の半導体が並んだLSI(大規模集積回路)を作る工程。配線の微細化をはじめ技術革新により性能向上が進んできた。しかしこれ以上の微細化による技術革新は物理的にも費用面からも限界を迎えつつあるといわれている。
一方で後工程は可能性を秘めている。後工程はウエハーを切って半導体を切り分け、完成に持っていく工程だ。切り分けた半導体を固定して端子を付けたり、樹脂で覆ったりする。積層化やパッケージ基板の大型化といった後工程での技術革新が注目を集めている。「すり合わせ」が求められる分野で、日本が世界で勝てる分野だ。
ここでパッケージングソリューションセンターの強みが生きる。レゾナックは後工程において世界で屈指の材料メーカーとしての地位を築き、有力な半導体メーカーなど半導体関連企業との関係も深い。同センターにある最先端の装置で実際の組み立て工程を再現し、試作しながら議論できる。「全世界で高いシェアを有していることで市場のトレンドを把握しやすく、中長期の製品戦略をともに描けます」(真岡氏)。
ただ材料を納入するだけでなく、新しい価値を生み出すためともに動く――。2021年9月に半導体実装材料や装置、基板の開発を手掛ける企業とともに次世代半導体パッケージの共創コンソーシアム「JOINT2」を発足させた。同センター内で活動する。新技術に必要な材料、装置、基板メーカーがそろうことで、次世代半導体パッケージに対応した技術開発のスピードを速めている。
共創は社内でも進んでいる。その源泉となるのが、レゾナックの母体である旧昭和電工と旧日立化成で培った技術で、3つの強みに集約できる。「作る化学」「混ぜる化学」「考える化学」だ。技術共鳴によるシナジー創出を図りながら、社会課題の解決に応える。「作る」は、昭和電工時代からの強みで、「混ぜる」は旧日立化成の主戦場だ。両社の強みを発揮することで、グローバルで高いシェアを持つ銅張積層板や感光性フィルム、CMPスラリーといった半導体材料を支える。そして「考える」化学がこれら2つをさらに強くする。化学メーカーは製品の完成まで、候補材料を変えながら実験を繰り返すのが一般的だ。レゾナックは旧昭和電工が石油化学品の開発で培った計算科学能力を有している。半導体材料開発にもこの計算科学の能力を生かす。マテリアルインフォマティクスと呼ばれる分野で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れもあり注目されている領域だ。
実例の一つが電気自動車(EV)やデータセンターでの活用が注目されるパワー半導体のSiCエピウエハーだ。顧客や用途に応じ、ウエハーの仕様をきめ細かに調整する技術が求められる。シミュレーション技術を駆使することで、炉の温度構成など様々な条件の最適解を見いだす。昭和電工時代から約20年の研究開発で培ってきたエピウエハーの高品質化技術に「考える化学」をかけ合わせることで磨きをかけ、自動車メーカーが求める高い信頼性を実現した。
ChatGPTをはじめとする生成AIは半導体の進化によって生まれた。IoTの進展を背景に、半導体の進化へかかる期待は大きい。「お客様の課題を解決することが、社会課題の解決や、利便性の向上につながる。これこそ我々のビジネスモデルです」(真岡氏)。
レゾナックは統合により、規模を拡大し、半導体に集中投資できる体制を整えた。半導体・電子材料関連で2021~25年の5年間で約2500億円を投じ、半導体後工程材料No.1メーカー*1の地位を確固たるものにする。半導体材料は日本企業が市場を席巻している。レゾナックも半導体材料の多くのセグメントにおいてトップシェア*1を握っているが、成長領域への集中的な設備投資で地位をさらに盤石にする。「技術のユニークさに磨きをかけ、バリューチェーンの拡がりに対応した規模感や影響力を維持できるよう、大きなアドバンテージを生かしていきたいと思います。サステナビリティやDXなどへの対応のために求められる企業としての地力を獲得すべく、競争力を高めていきます」(真岡氏)。
長期ビジョンとして、2030年には日本の化学メーカーとして培ってきた強みを生かしつつ、グローバル企業の高度な経営手法を取り入れ様々な社会課題を解決する「日本発の世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指す。そのために共創を高い次元で実現できる人材育成にも力を入れる。半導体を事業の軸に据え世界と伍して戦う。総合化学メーカーから機能性化学メーカーへの進化に向けて、新生レゾナックは取り組みを加速する。
*1 *2のうち、ダイアタッチフィルム、パッケージ基板用銅張積層板材料、封止材の各数量を基にレゾナック・ホールディングスで販売金額を計算
*2 富士経済「2022年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2021年実績)
株式会社レゾナック・ホールディングス
URL:https://www.resonac.com/jp