シェルター
常務取締役

安達 広幸

 最初に当社の事業を紹介する。主な事業内容は、木材を利用した建築物の企画・提案、設計、材料調達、施工、技術開発だ。最近は、国産材や地域産材をどう活用すればいいか、という企画・提案の相談が多い。

 地域産材を活用する場合、伐採から部材の納品までの工程を一元管理することが重要だ。それによって部材の安定供給や製造期間の短縮を実現できる。結果としてコスト削減にもつながる。原木の調達から、必要部材への加工、耐火仕様への加工、プレカットなど、各工程を手戻りが生じないように管理する必要がある。

 それにはどうすればいいか。まず部材の製造は、技術的・能力的に可能な限り、地元で実施したい。次に伐採から部材の納品まで一元管理するため、材工分離発注にする。さらに合理的な木取りで歩留まりの向上を心掛ける。丸太から角材を木取りする以上、端材が生じる。その有効活用も事前に検討しておきたい。

 ここで木材の基本を確認しておく。木取りには接線方向の板目と半径方向の柾目の2つがある。板目は厚さ方向に水を通しにくいが、幅方向の伸び縮みが大きい。これに対して、柾目は厚さ方向に水を通しやすいが、幅方向の伸び縮みは小さい。特性の違いを理解したうえで適材適所を心掛ける必要がある。

 例えば野地板には厚さ方向に水を通しにくい板目を、長押や鴨居には幅方向の伸び縮みが小さい柾目を用いる。また、樽と桶というものがある。水を入れる道具という点では同じだが、大きな違いがある。樽は長期にわたって水を貯めておくもの。だから、板目が適している。一方、桶は一時的に水を汲む時にだけ使うもの。だから、収縮・変形の少ない柾目が適している。こうした特性の違いを認識したうえで部材を発注したい。

 歩留まりの重要性については、具体例を基に説明しておく(図1)。1つは平角を中心とした製材を、もう1つは間柱を中心とした製材を想定する。平角中心の場合は、歩留まりは50%で部材の売り値は9586円。これに対して間柱中心の場合は、歩留まり45%で部材の売り値は7301円という試算結果になる。平角のような大きな部材を採材したほうが高く売れ、丸太の有効活用につながり、川上側に経済的効果をもたらし、課題である再造林率を上げる。木取りの歩留まりを考えながら設計し、部材を発注することで解決できる課題は多い。設計者にはこの点もご認識いただきたい。

 では、中大規模建築物で用いる構造用集成材を例に、伐採から部材の納品までの工程をどのように一元管理すればいいのか、簡単に見ていこう。

 その前に、集成材の製造はどのような工程で進むのか、確認しておく。まず「ラミナ」と呼ぶ挽き板をつくり、それを乾燥させたうえで、予備切削、ラミナ強度等級区分・仕分け、ラミナ縦継ぎ、切削、接着剤塗布、圧縮などの工程を経て、集成材として仕上げる。製造日数は最低1カ月。これだけ時間がかかることをご理解いただきたい。

 このラミナを丸太からどう木取りするか。その地域で伐採可能な丸太の径を基に、歩留まりの最大化を図れるラミナの断面寸法の組み合わせをシミュレーションしておく(図2)。ここでは原木径級として20㎝、26㎝、30㎝、34㎝という4種類の丸太を想定し、ラミナの断面寸法の合理的な組み合わせでムダのない木取りを行うと、歩留まり率は47~49%、と50%近くに達することが分かる。

 こうした歩留まりを前提に、必要木材量から必要丸太原木量をはじき出す。まず集成材の断面寸法から、集成材の製造工程での減少割合を踏まえたうえでラミナの断面寸法を決め、ラミナの材積を求める。次に構造材用ラミナは芯材から、内装材・表層材用ラミナは辺材から採材する前提で、歩留まりの最大化を図るように各断面寸法に最適の原木径級を想定し、必要丸太原木量を算出する。その数字を事前に山側に知らせ、相談する。それが、伐採から部材の納品までの工程を一元管理するための第一歩だ。

 サプライチェーンを考えてみよう(図3)。川上側からいえば、まず伐採した丸太を貯木場に集める。そこで原木径級を指定したうえで、製材工場に運び入れ、ラミナに加工する。それを基に集成材として仕上げ、プレカット加工を施したものを、現場に搬入する。このサプライチェーンの川下側で建て方まで踏まえ工程を逆算し、川上側に情報を提供し連携していきたい。コスト削減を考えると、この情報連携は不可欠だ。

 木造建築は、複雑な形状の部材が多く、多品種少量生産である。そこで、部材として 地域産材を上手に利用するには、合理的な製造工程の構築が欠かせない。伐採から部材の納品までの工程の一元管理が必要なのは、そのためだ。

 最後に、地域産材を上手に利用するために留意しておきたい点を2つ挙げる。

 1つは、発注形態の早期確定だ。意匠設計者・構造設計者として事前に木材供給形態を把握しておきたい。サプライチェーンの川上側や川中側との連携・調整には不可欠だ。

 もう1つは、基本設計・実施設計時の先行情報の把握・開示だ。樹種・適正強度の選定、丸太の原木系級・量、製材・集成材の製造能力、プレカットの加工能力など、先行情報を把握・開示し、「時間」「素材」「能力」「場所」の管理を行う。それによって、コスト削減、安定供給、再造林、LCA(ライフサイクルアセスメント)を実現できるようになる。

※所属・肩書は2024年11月1日時点のものです。