アンワル氏はマレーシアと日本について「永続的で強固な関係を築いてきた」と語り、「岸田前首相とは何度もお会いしたし、最近では石破首相とも電話会議でお話をさせていただくなど緊密な関係ができている」と強調した。貿易や技術的な投資だけでなく、「お互いの価値、文化、倫理を尊重することでパートナーシップをさらに深めたい」(アンワル氏)。
アンワル氏は次に、話題を新たな経済特区に移した。マレーシアとシンガポールの両政府は2025年1月、「ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)」を共同で設けることに合意した。場所はシンガポールと隣接するジョホール州南部だ。経済特区はマレーシア側にあるが、シンガポールも自国への経済効果を期待し、共同での設置を決めた。
JS-SEZの面積は3500平方キロメートル超でシンガポールの約5倍に当たる。シンガポールは東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済的なハブとなっている地域だが、土地の少なさや人件費の高さなどが課題となり、シンガポール進出をちゅうちょする企業もある。日本貿易振興機構(ジェトロ)が24年に発表した海外進出日系企業実態調査によると、マレーシアにおける製造業の作業員の平均基本給はシンガポールの4分の1以下だ。JS-SEZは、シンガポール進出と同等のビジネス環境がありながら、進出しやすい地域であることを訴求していく考えだ。
アンワル氏はJS-SEZについて「マレーシアとシンガポールの信頼と協力の象徴であり、両国の繁栄の共有のために設計されたものだ」と説明した。
ジョホール州が政治的に安定しており、インフラの整備が進んでいること、進めている政策が明瞭であることなどにも言及し、これらがこの特区の潜在力を支える重要な要素であると強調した。
JS-SEZについてアンワル氏は「日本をはじめ中国、韓国、欧州など世界中の国々から注目を集めている」と説明し、「何か投資のアイデアがあれば、ぜひお声がけいただきたい」と呼びかけた。

オン氏はジョホールの強みとして、シンガポールとの間で人や物、サービスの動きが容易なこと、煩雑な手続きに縛られず簡単にビジネスが行えること、優秀な人材を育成する計画が整っていることなどを挙げた。
従来、ジョホール州とシンガポールは深い関係にあり、毎日約30万人がジョホール州からシンガポールへと通勤・通学している。JS-SEZの主要な目的の一つは、より多くの人々と企業をジョホール側に誘致することである。この目標を実現するため、両国をつなぐ交通網の増設や、同地域に投資する企業への税制優遇、ビザの要件緩和などを検討するという。こうした取り組みは、シンガポール企業だけでなく、土地代や人件費の高騰によってシンガポール進出をためらう企業などに、ジョホールへの進出を促す。
人材育成については、ジョホール州政府は6つの公立大学などと連携し、スマートマニュファクチャリングや半導体、デジタルインフラ、再生可能エネルギーなどについてのスキルを持った人材を、2026年までに1万人育成する計画だ。育成した人材が身に付けたスキルを使い、JS-SEZに投資した企業に貢献する、という好循環を生み出す狙いがある。
オン氏は「JS-SEZが重要な地域拠点として発展すると確信している。ジョホール州はASEANおよびアジア全域でのプレゼンス強化を目指す企業にとって、魅力的な拠点となる」と話した。
今後の展開として、地域的な包括的経済連携(RCEP)の加盟国間の地域協力を促進することを目指し、「ASEANインダストリアルパーク」をJS-SEZ内に創設する構想も明かした。日本との関係についてオン氏は、二国間の友好の強さを認めつつ「変化する世界情勢の中で現状に満足することなく、進歩を確実にするために斬新なアイデアやアプローチを追求する必要がある」と強調した。
