主催者講演②-1 経済安全保障・サプライチェーン

経済産業省

150兆円超の官民GX投資を目指す

経済産業省

GXグループ GX投資促進課長

清水 淳太郎

 GX(グリーントランスフォーメーション)は、「エネルギーの安定供給・経済成長・脱炭素」の3つを同時に実現する取り組みだ。2050年のカーボンニュートラル実現を国際公約として掲げる日本は、GX経済移行債を活用した20兆円規模の先行投資支援と制度的措置を組み合わせ、150兆円超の官民GX投資の実現を目指している。

 「IEAは2030年までに再エネと原子力で世界の電力の約半分を賄うと予測。一方、日本はエネルギー自給率がG7最低水準で、原油の9割以上を中東に依存している。GX投資は単なる脱炭素ではなく、『エネルギー安定供給』という観点から見ても危機管理そのものだ」と清水氏は指摘する。

 背景にあるのは電力需要の急拡大だ。AIやデータセンターの普及により、世界的に電力需要が拡大する中で、脱炭素エネルギーを巡る競争は激化しており、同時に、脱炭素を軸としたサプライチェーンの再編も進み、この流れに乗り遅れれば国際競争力を失いかねない。GXは「安定供給」と「成長」を同時に支える国家戦略と位置付けられる。

 こうしたなか、昨年11月に設置された日本成長戦略本部では、成長戦略17分野の一つとして「資源・エネルギー安全保障・GX」を選定。ペロブスカイト太陽電池や水素、グリーン鉄など7つの重点分野について、研究開発から事業化までを見据えたロードマップの策定が進められている。

 「各分野でフェーズに応じた投資を行い、『エネルギー安定供給』への貢献に加え、GX市場における競争力と自律性の確保を図ることが重要だ」と清水氏は述べる。

 さらに、コンビナート跡地や脱炭素電源を核に産業集積を形成する「GX戦略地域制度」も創設し、GXの社会実装を加速させる。地域と産業を一体で再編し、日本全体の産業競争力の底上げにつなげていく考えだ。

主催者講演②-2 経済安全保障・サプライチェーン

内閣官房参与

高市政権下、価格より信頼、調達の転換を
85兆円対米投資で不可欠性を確立

内閣官房参与

明星大学教授

細川 昌彦

 3月19日の日米首脳会談では、85兆円規模の対米投資イニシアティブ第2弾が打ち出され、小型モジュール炉(SMR)やAIデータセンター向けの天然ガス発電施設の建設など、中国を念頭に置いた経済安全保障に貢献することとなった。

 政府は成長戦略の策定において「経済安保における自律性・不可欠性の確保」「国内投資と国際連携の同時推進」「需要・市場の創出」の3点を含む基本的考え方を明確にしている。今回の対米投資は、まさに国際連携における「不可欠性」につながるものだ。

 「他国にとっていかに日本が不可欠な存在となるか。産業のチョークポイントを押さえ、米国にとっても欠かせない存在であることを多様な分野で示していく必要がある」と細川氏は語る。

 一方、サプライチェーンの再構築においては、需要側の意識改革が重要だ。レアアースを巡っては、過去に中国依存からの脱却を試みながらも、安価な同国製品へと回帰し、依存度が再び高まった。

 「多角化をめざして供給側が投資しても、需要側が価格のみで調達先を選べば構造は変わらない。安定供給や信頼性といった非価格要素を重視する調達行動への転換が必要だ」(細川氏)

 政府も価格差を補う制度や補助金などを通じて需要側の行動変容を後押しする。最終的には企業自身がサプライチェーンの依存度を可視化し、リスクをコスト化してリスク分散を主体的に進めることが求められる。

 細川氏は「海外市場も含めて競争力を高めることで、経済安全保障にも資する。それが収益や成長にもつながる。その両立こそが重要だ」と述べ、講演を締めくくった。

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