PPP/PFI時代の幕開けから四半世紀
地域の経済活性化と課題解決へ
民間創意で「30兆円」市場攻略
PPP/PFI事業の裾野が、じわりと広がる。いわゆるPFI法が制定された1999年から四半世紀。事業は対象や手法を拡大しながら、地方の小規模な市町村でも実施されるようになってきた。政府がアクションプランで見込む事業規模は2022年度から31年度までの10年間で30兆円に達する。
PPP/PFI事業は年々、実績を積み重ねてきた。PFI法に基づく事業だけでも、同法で定める実施方針を公表したものの契約金額は、2024年度で累計9兆8088億円にも達する(図1)。
※ 契約金額は、実施方針を公表した事業のうち当該年度に公共負担額が決定した事業の当初契約金額を内閣府調査により把握しているものの合計額。公共施設等運営権方式における運営権対価は含んでいないなど、PPP/PFI推進アクションプラン(2025年6月4日民間資金等活用事業推進会議決定)における事業規模と異なる指標
内閣府資料を基に作成
内閣府大臣官房審議官
経済社会システム担当
民間資金等活用事業推進室長
鈴木貴典氏
同事業を推進・支援する内閣府大臣官房審議官民間資金等活用事業推進室長(PPP/PFI推進室長)の鈴木貴典氏は現状をこう評価する。
「当初は庁舎や宿舎などから始まり、次第に空港などに広がり、経済効果が注目されるようになりました。最近は、老朽化するインフラの更新という観点が重要視されています」
2024年度末で進捗率は32%
上下水道は20%を切る水準
政府方針を示す「PPP/PFI推進アクションプラン」で掲げる目標の進捗を、ここで確認しておこう。
一つは、事業規模目標に対する進捗である。事業規模とは、契約締結した事業から見込まれる民間事業者の契約期間中の総収入を指す。
アクションプランの25年度改定版では、22~31年度までの10年間で事業規模30兆円を見込んだ。これに対して実際の事業規模は、22年度3.9兆円、23年度4.4兆円。2年目までで順調な滑り出しを見せる。
もう一つは、事業件数10年ターゲットである。これは、22~31年度までの10年間で、①実施契約の締結予定②実施方針の公表予定③事業実施に向けた具体の検討――という「具体化」を狙う事業を指す。
アクションプランの25年度改定版では、重点14分野・650件を定める。これに対して実際に具体化した事業は、22年度末で82件、23年度末で146件、24年度末で209件。進捗率は24年度末で32%に達する。
重点分野別に見ると、進捗は大きく異なることが分かる(図2)。進捗率は、最高の大学施設で93%であるのに対し、最低の自衛隊施設では4%に過ぎない。進捗率20%を切る「水道」「下水道」「公営水力発電」などは、今後の分野と言えそうだ。
※ 2031年度までの10年間で具体化を狙う野心的な事業の目標件数に対する24年度末での進捗率。「具体化」とは、①実施契約を締結する予定の案件②実施方針公表段階となる予定の案件③事業実施に向けて具体的な検討を行っている段階の案件
内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン(2025年度改定版)」の概要を基に作成
PPP/PFI事業が順調な滑り出しを見せる背景には、担い手不足がある。
各種のインフラや公共施設が、更新や統廃合の時期を迎えるようになってきた。ところが、それらの工事の発注業務を担う公共側は担い手不足。頻度の高い工事ではなく、出番が限られる技術者を抱える余力はない。
そこで民間事業者の創意に期待する。結果として得られる効果の一つには、コスト削減や収益の確保といった経済効果が挙げられる。それもただ、設計、施工、運営、維持管理を一体的に行うことでコスト削減効果を狙うだけでは十分とは言えない。
多様な地域課題の解決の場へ
求められる地域企業の参画
「例えばアリーナ施設では、運営を通じてマネタイズ可能なプレーヤーが加われば、アリーナ運営をコンテンツビジネスと捉えられるようになります。それが、大きな収益を生み出す可能性につながります」(鈴木氏)。
それだけ、民間事業者による運営が重視される時代。利用料金を徴収する施設やサービスで、運営権を一定期間、民間事業者に譲り渡して自由度の高い運営を目指すコンセッション方式と呼ばれるPFI事業も、空港を中心に実績を伸ばしている。
PPP事業の代表とも言えるPFI事業の地域的な効果を、PPP/PFI推進室がまとめた「PFI事業の概要」では、主たるものと副次的なものに分けて整理する(図3)。ここでは主たるものに主に、経済効果が並ぶ。
内閣府PPP/PFI推進室「PFI事業の概要」(2023年7月)を基に作成
ここで目を向けたいのは、副次的なもの。官民連携による地域の持続的成長だ。多様な地域課題の解決の場としてPFI事業を活用する発想に立つ。
地域への目線が強まっていることの表れか、PFI事業への地域企業の参画は以前に比べ目立つ。鈴木氏も「地方のPFI案件で事業主体の構成を見ると、代表企業を含め、地域の民間事業者の参画例が増えているように感じます」と近年の傾向を明かす。
PPP/PFI事業を地域課題の解決に向けた官民連携のプラットフォームと捉える発想は、公共施設での運営重視の流れにもつながる。PPP/PFI事業では、個別施設運営から地域活性化のためのプラットフォーム運営へ、意識変革を迫られそうだ。
冒頭示したように実績を積み重ねてきたとはいえ、課題は残る。一つは、小規模な自治体での活用を促すことである。アクションプランでは主な改定事項の一つに、「地方公共団体への支援の強化」を挙げる。
具体策の一つが、分野横断型や広域型のPPP/PFI事業である。事業規模が小さいと、民間事業者は参画する価値を見いだしにくい。そこを改善しようと、分野や地域をまたいだ事業化を探っていく必要がある。
「分野横断や広域化を実現できると、民間事業者側にも工夫の余地が大きくなります。課題を一つ一つ乗り越え、それらを実現していくことが今後、問われます」。鈴木氏は訴える。






