
太田 英晴氏
大七酒造株式会社
代表取締役社長
佐藤 Webタイアップの「変容する時代のブランド戦略『哲学でこそ飯を食え』」がグランプリを受賞しました。本企画を発想したきっかけをお聞かせください。
太田 出発点は「自分ならどんな広告が読みたいか」ということでした。例えば、特定の商品をPRしている広告は、購入を検討している場合でなければ読むことはありません。逆に興味を持って読むのは、当社にとって関係のある課題に対し、その企業がどう考え、取り組みを行っているかといった内容が語られている広告です。一方で、大七酒造は時流に乗ることなく、「生酛造り」という伝統の手法でものづくりをしてきたことに自負を持っています。そうしたものづくりの思想を伝え、共感してくれる人を増やしていきたい。今回の広告制作にあたっては、その思いがベースにあり、日経ビジネス電子版と日経クロストレンドへの出稿を決めました。
佐藤 なぜ、これらの媒体を選ばれたのでしょうか。
太田 いずれも自分自身が読者だったということが大きな理由です。特に、社会人になった頃から愛読している日経ビジネスは、仕事について考える上でのヒントや情報を与えてくれる雑誌というイメージがあり、読者層も経営者層から中堅のビジネスパーソンまで幅広く、大七酒造の考えを伝えたいターゲットでもあります。日経クロストレンドは、マーケティング戦略などの最先端の動向を伝えてくれるデジタル・メディアですので、ビジネス感度の高い読者に周知できるとともに、広告を通して様々な反応が得られるのではないかと期待して選びました。
佐藤 「テクノロジー全盛の時代に、酒造りに対する哲学、思想に心打たれる」「小説のように読ませるコンテンツは読み応えがある」「Webデザインが秀逸」など、原稿のクオリティ、デザイン性に高い評価が寄せられました。どのように企画の方向性を決められたのでしょうか。
太田 自分が読みたい内容であれば読者にも読まれるだろうと考え、「問題意識を共有できるような企画」という要望のみを制作会社にお伝えしました。読む価値がある内容であればそれでよいと腹を決め、こちらからの注文は控えることにしたのです。その意図を汲んで提案していただいたのが、5回シリーズのWebタイアップ企画でした。「哲学でこそ飯を食え」というメインタイトルは秀逸でインパクトがあり、大七酒造の哲学を5つの切り口から多面的に掘り下げて描く内容も「これなら読者に興味を持っていただける」と思えるテーマでした。
それだけに大変だったことは、原稿作成のために受けたインタビューです。時系列で事実を述べれば済むような質問ではなく、自分の価値観に関わるような問いかけが多かったため、深く考えさせられました。例えば、福島県の放射能による風評被害に関することなど、普段はあまり聞かれない重い質問もありました。ただ、苦労しながらも考える作業は新鮮でしたし、今当社で当たり前になっていることを、どんな発想で始めて、どう継続してきたかということを考えるなど、改めて自分の原点に立ち返るいい機会にもなりました。
佐藤 社内外からはどのような反応がありましたか。
太田 社外でいえば、今回のWeb広告を読み、興味を持ったというNHKの国際放送「NHKワールド JAPAN」から取材の依頼があり、経済ニュース番組「BIZ STREAM」で、⽇本の⽼舗企業を紹介するシリーズの第1回として、2025年2月に大七酒造を報道していただきました。数社の出版社からも「本を出版しませんか」というお話をいただき、反響の大きさに驚いています。お取引先の方々からも、「酒造りに対する考え方や、一貫して取り組んできたことがよく理解できた」といった感想を多くいただき、当社への理解につながったと感じています。
社内においては、社員のモチベーションが上がったと思いますし、営業系の社員にとっては有効な営業ツールにもなっています。海外のお取引先にも周知したいと考え、第1回分を社内で英訳して発信しました。それを目にした海外のインポーターの方々からも好意的なお声をいただいています。

佐藤 央明
日経BP
トレンドメディアユニット長/
日経クロストレンド発行人
佐藤 グランプリを受賞されてどんな感想をお持ちですか。
太田 Web媒体での本格的な広告展開は初めてですし、予想もしていなかったのでとても感動しました。今回のシリーズ広告の5回目は25年4月末の公開ですので、この受賞を機に読んでくださる方がぐっと増えるのではないかと期待しています。
佐藤 今後の広報・宣伝活動の方向性についてお聞かせください。
太田 私は日経ビジネスの長年の読者ですが、数年前から主に電子版を読んでいます。電子版はどこでも読めますし、過去の記事も検索すれば容易に探し出せるなどメリットが多く、今回の広告もWebに舵を切りました。Web広告を制作して初めて気がついたことは、紙媒体であればページを開き、偶然目に留まった記事を読むというケースがありますが、電子版はそうはいかないということ。偶然に頼らず、能動的に読むというアクションを起こさせるようなコンテンツであることが重要です。
それを踏まえ、今後もスペースに制約のないWeb媒体で深い内容を展開し、大七酒造のものづくりに共感してくださる人を発掘して、息の長いビジネスにつなげたいと考えています。今や日本酒は誰もが飲むものではなく、嗜好品となっています。そうした状況の中で、能動的に日本酒に手を伸ばしてくれる人を増やすために、能動的に読みたくなる魅力的なコンテンツを追求していきます。
※所属・肩書はインタビュー時点