特集2020年9月30日公開
顧客の声に応え進化し続けるレッツノートレッツ
神戸工場30年の歩みと共に
2020年、操業30周年を迎えたパナソニック神戸工場。レッツノートの「国内一貫生産」にこだわり、数々の先進的な試みを続けてきた同工場が考えるモノづくりの本質とは? そして、ワークスタイルが激変する中、同工場は今後、企業の生産性向上・事業継続に貢献する製品をどのように生み出して行こうとしているのか? 同工場の工場長を務める矢吹精一氏に中野淳 日経BP コンシューマーメディア局長補佐(日経パソコン発行人)が訊いた。
「お客様とつながり続ける」ことに徹底的にこだわる
中野 神戸工場長に就任されたのは2019年の8月ですね。約1年経って、どのように感じていますか。
矢吹 パナソニックのモバイルソリューションズ事業部には、主にレッツノートを製造している神戸工場、タフブックを製造している台湾工場、Android系のPCを製造している北京工場の、大きく3つの製造拠点があります。私は神戸工場の工場長に就任するまで約4年間、台湾工場の総経理を務めており、その間、神戸工場を外側から客観的に見ていました。外側から見るのと内側から見るのとでは、やはり印象は異なりますね。
外側から見ている時は、神戸工場はマザー工場ということで、質の高い先進的な取り組みをしている印象でした。一方で、内側から見た場合、やっていることはそれぞれ「点」としては評価できるけれども、「線」として工場全体を考えた場合、方向性がやや明確になっていないように感じられたのです。「スマートファクトリー」や「ソリューションセンター」というキーワードはあっても、その具体的な中身がしっかり固まっていない面があるなと。ですので、3年先を見据えて、改めて我々の「あるべき姿」を明確にし、それに向けた取り組みを開始したところです。

中野 30年の歴史を振り返って、神戸工場はどのような役割を果たしてきましたか。

モバイルソリューションズ事業部
オペレーションセンター所長 兼 神戸工場長
矢吹精一氏
矢吹 神戸工場は、ただ単にモノをつくっている工場ではありません。開発・生産・販売・サービスの拠点を全て自社に集約し、「お客様とつながり続けている」ことこそ、神戸工場の役割であり、特長でもあると考えています。
例えば我々は、工場の中にコールセンターや修理の拠点を設けています。そこで把握したお客様の声や故障の症状を、即座にものづくりに反映し製品をブラッシュアップする、そしてまたその製品を市場に送り出す、というサイクルを生み出しているわけです。
当工場では、工場見学などで年間2000人以上のお客様にいらしていただいていますが、これもお客様と接点を持つためです。工場で働いている従業員が、お客様とダイレクトに接して、どんな方に製品を買っていただいているのか、実際にどのように使われているのかを理解することで、モノづくりのレベルが向上すると考えています。
毎年夏には、小学生から高校生の学生さんを対象に、工場の従業員と一緒にレッツノートを実際に組み立ててもらう「手づくりレッツノート工房」というイベントも開催しています。電源が入ってマシンが動き出すと、お客様たちは当然喜ぶのですが、その姿を見て従業員たちもすごく感動しているんですね。こういうことを体験することで従業員のモチベーションも上がるし、工場全体の一体感も高まる。それがまた高品質のモノづくりにもつながります。
これ以外にも、年に一度、「PCコンファレンス」というイベントを開催して、開発や製造・品質のメンバーがお客様からフィードバックをいただく機会を設けたり、製品をお渡しした後も、サービスと品質のメンバーがお客様先を訪問してお困りごとを聞く「CSパトロール」という活動を行ったりと、とにかくあらゆる場面で「お客様とつながり続ける」ことにこだわり抜いています。

中野 年間2000人以上の工場訪問を受け入れているとのことですが、このコロナ禍では、そうした活動も制限されますね。
矢吹 そうです。そこで現在は、リアルな工場見学の代わりにトライアルとして、オンラインでのリモート工場見学を実施しています。苦肉の策ではあったのですが、リモート工場見学だと、海外の方にも参加していただきやすくなるなど、新たなメリットも生まれています。コロナ禍が落ち着いた後も、リアルとリモートをお客様の用途やご希望によって選んでいただけるようにして、お客様との接点の選択肢を増やしたいですね。
神戸工場版スマートファクトリーは「人と機械の融合」
中野 現場でのものづくりという面では、具体的にどのような取り組みを進めていますか。
矢吹 やはり最新のAIやIoTを用いた「スマートファクトリー」は大きなキーワードです。目的は省人化。長期的に見た場合、日本の労働人口は確実に減少していきます。そうした中でもしっかりと高品質のモノづくりができるように対応していかなくてはなりません。現在、工程のポイントごとにロボットを導入していますが、組立完成の工程においてはまだ人手に頼っている部分が多い。そうしたところでも積極的に自動化を進めていきます。
ただし、我々が思い描くスマートファクトリーは「人と機械の融合」によるものです。人と機械、それぞれの役割を明確にした上で、工程の中で最適に融合させていくことを目指します。

中野 具体的に、どのように役割を分担し、どのように融合させていくのでしょう。
矢吹 例えば、製造した基板をチェックするといった作業は、以前は人が行っていたのですが、人間だとどうしても基板を落としたりぶつけたり、あるいは静電気が発生したりといった問題が発生するので、現在はロボットで行うようにしています。一方で、完成した製品が良品か不良品かという判定は、条件を過度に厳しくすると直行率が下がり、緩めすぎると不良品が流出するという難しさがあります。適切な判定は、熟練したスキルを持つ人間でないとできません。そういう部分をうまく組み合わせるということですね。「匠の技」を継承しつつも、一方では人だけに頼らない「神戸工場版スマートファクトリー化」を進めます。
神戸工場の特長は、お客様の多様化するニーズに合わせて、一品一様のきめ細かなモノづくりを行っている点にもあります。完全に機械化して標準機のようなものをつくるのでは、その特長が削ぎ落とされることになり、何の意味もありません。ある程度尖った部分を持ってお客様に価値を提供できる製品を、いかに省人化しながらつくるかにチャレンジしていきます。
中野 それでは最後に、「神戸工場のこれから」について、読者へのメッセージをお願いします。

矢吹 神戸工場はこれまで30年に渡り、ビジネスパーソンのお困りごとを解決するモバイルノートパソコンの自社開発・自社生産にこだわり続けると同時に、お客様と直接つながって様々なお困りごとに真摯に耳を傾ける努力を貫いてきました。まさに「お客様と共に歩む工場」だと自負しています。今後もこれまで以上に「お客様の仕事を止めない」「お客様とダイレクトにつながる」という信念を持ちつつ、お客様と共に進化していきたいと思います。
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