

自社製品を購入してくれたユーザーの、その後を支えるのがサポート部門だ。マウスコンピューターは、外部に委託していたコールセンター業務を、2010年1月に自社での運営に切り替えた。それを機に、あることを徹底し始めた。それは“安易に修理を受け付けない”ことだ。コールセンターマネージャーの佐藤謙氏はその理由を「『修理をして欲しい』というお客様が本当に求めていることは、修理に出すことではないことが多いからです」と話す。本当に求めていることの一例に、目の前のパソコンを快適に使い続けたいということがある。しかしユーザーは自分の判断で、この事態を脱するには修理しかないと考え、それを申し出る。
「でも、そのトラブルは、お客様の手元で解決できるかもしれません。そうであれば、修理のためにパソコンを預けていただかなくても、ご要望に応じることができます」
修理という言葉の裏に隠された、もしかすると電話の先のユーザーも気がついていない本音を聞き出すことが、オペレーターの最初の仕事になる。これを徹底するために、オペレーターの一人ひとりには、技術に対する深い知識と、コミュニケーション能力が求められる。
「新しいテクノロジーが発表されたら、それを全員が体感するなど、研修に力を入れています」
もうひとつ、新たな方針を打ち出している。それは、効率を重視しすぎないこと。決まった時間に何本電話をとれるかを示す応答率に、過敏にならないようにした。
「スピードは重要な要素の1つ。でも、それだけを重視しては、お客様に満足していただけません」

新たに加えた指標は“サンキュー”と“解決”だ。
「サンキューとは文字通り、お客様に感謝の言葉を言っていただけたかどうか、解決とは1回の電話で問題を解決できたかどうかです」
したがって、「こうやってみてください。それでも解決しなかったら、また電話してください」という対応はしない。解決をしようとオペレーターが力を尽くす。すると、仮に解決に至らなくても、サンキューは得られることが少なくない。
「こうすることで、お客様に、マウスコンピューターのファンになっていただけると思っています」


実はこういった方針は、佐藤氏が埼玉県内の事業所でコールセンター業務に携わっていた頃から、沖縄にいるオペレーターへ、何度も言ってきたことだった。
「しかし当時は、私の本気度を伝え切れていませんでした。折を見て沖縄へは足を運んでいましたが、所詮は埼玉へ帰っていく人と見られていたと思います。当然のことです・・・・・・」
佐藤氏はこの問題を解決するため、沖縄へ移り住んだ。そして再度、全員の前で方針を宣言する。
「応答率ばかりを重視するなという方針は、それまでの仕事のやり方を否定するようなもの。反発があって当たり前です。もし逆の立場なら、私は辞めていたかもしれません」
それでも、その意識は素早く浸透したと佐藤氏は振り返る。多少時間がかかっても、“サンキュー”と“解決”を得ることは、オペレーターも心の底では望んでいたことだったからだ。結果として、オペレーターのモチベーションも上がっているという。
「今となっては、私が応答率を気にすると、イヤな顔をするオペレーターもいるほどです(笑)」
席を隣にする通販部隊との情報交流も密に行い、どちらへの要望に対しても、たらい回しにせず、ワンストップで対応するようにしている。
佐藤氏の次の課題の1つに、このコールセンターが社業にどれだけ貢献しているかを、可視化することがある。
「私自身がオペレーターだったときは『コールセンターはコストセンター』と言われるのが悔しくてたまりませんでした。私たちはコストセンターではなく、営業部隊です。対応次第でファンになっていただけるし、お客様の声を直に聞き、それを次の製品に反映することもできます。それがはっきり目に見えれば、ますますモチベーションが上がり、お客様にも喜んでいただけると信じています」