
マウスコンピューターはパソコンの修理部門を創業地の埼玉県春日部市に置く。長野県飯山市にある飯山工場でMouseProを組み立てているため、一時は修理部門を飯山工場に統合することも検討したが、最終的には移転を断念し春日部で修理業務を続けている。

カスタマーサポートセンター 部長である重松淳氏はこの経緯について説明する。「春日部で創業して以来、修理部門を置いてきました。現在、修理部門には約70人が在籍していますが、その半数以上が勤続10年以上です。春日部に埼玉サービスセンターを置き続けているのは、こうしたベテラン技術者をそのまま雇用でき、彼らの経験や技術を生かすためです。春日部で修理を続けたほうが顧客満足度は高くなると判断しました」。
パソコンの修理は故障箇所の特定から始まる。埼玉サービスセンターに送られてくるパソコンの大半は購入当時の最新技術を搭載した高性能製品。ゲームのプレー中の特定の場面で動作が止まったり、あるいは特定の表示で問題が発生したり、故障原因の究明に経験と技術を要することが少なくない。
「故障箇所を特定し、原因を究明するため、故障の再現が必要です。それができなければお客様に問い合わせます。寒冷地のお客様から送られてきたパソコンの不具合を再現するため、パソコンにたくさんの保冷剤を巻き付けたこともあります。原因の究明が曖昧だと、お客様から再修理を求められる可能性があります。その点も踏まえた修理品質の向上は大切です」(重松氏)。
原因究明の結果は埼玉サービスセンターのノウハウとして蓄積されるだけでなく、社内ネットワークを通して長野県の飯山工場と沖縄県のコールセンターと共有する。
設計・開発部隊が在籍する飯山工場は設計・開発・生産に反映させることで今後の品質向上につなげられる。実際、埼玉サービスセンターの声を反映し、法人向けのMouseProでは生産過程での検査項目を増やすとともに、製品寿命検査の時間も長くした。
また、顧客からの問い合わせに対応する沖縄コールセンターのオペレーターはトラブルの内容を一段と熟知することで、顧客への対応力が向上する。「実は埼玉サービスセンターに送付されるパソコンの3割弱がNDF(No Defect Found)といわれる修理する必要がない状態のものです。原因究明の結果をもとに沖縄コールセンターではお客様に対する質問の仕方を変えたり、Web上にあるFAQを書き直したりすることで、可能な限りお客様がその場で解決できるように改善を繰り返しています」(重松氏)。

マウスコンピューターが重視しているのは修理品質の向上だけではない。修理期間の短縮化にも力を入れており、日曜日にも修理業務を手掛ける。個人客の中には故障したパソコンを土曜日に発送する人が少なくない。いち早く修理に取り掛かるようにするため、シフト勤務を導入している。
また、業務の進め方の抜本的な見直しにも取り組み、期間短縮に成功した。以前は1人の技術者がトラブル原因を究明する「診断」、それに基づいて不具合を直す部品の「交換」、出荷前の「検査」を手掛けていたが、2012年3月から修理業務を分業制に切り替え、診断、交換、品質検査の3つのプロセスごとに担当者を配置した。その結果、業務の効率化が進み、平均6日間だった修理期間が5日間に短縮するとともに、3人の技術者のチェックが働くので再修理の発生率も低下するという副産物も生じた。「診断作業に関わる技術者は最も経験と技術が求められますが、徐々に増やしていく方針です。そうすることで、修理期間は一段と短縮できるでしょう」(重松氏)。
修理期間の短縮化と修理品質の向上に今後も磨きをかける一方で、重松氏は「顧客の潜在要求を満たせる修理」を新たな課題として掲げる。パソコンは3カ月に1度のペースで新製品が出てくるので、顧客にとって分かりにくい商品だ。一例を挙げれば後々のことまで考えて買い替えたほうがいいのか、それとも修理して使い続けたほうがいいのか、パソコンの仕様によって変わる。
「当社の売り上げを考えると、買い替えていただくと有り難いのですが、お客様の事情もあるので、そういうわけにもいきません。そのあたりをお客様の思考に立って選択し、最適な提案をするプラスα(アルファ)の修理品質を磨いていく必要があります」。重松氏は今後の目標を語った。
受付時に、キズなどの外観チェックと申告された付属物の確認を行い、1点ずつデータベースに登録する。
不具合の認定作業を行う診断エリア。最も重要な作業になる。原因と思われる部品を別のものに差し替えるなどして、修理すべき点を特定していく。
診断の内容をもとに、部品の交換作業を行う。多種多様な部品を扱うために、作業内容をしっかり記録して管理していく。
交換作業が終わったパソコンを起動させ、負荷プログラムをかけて故障箇所の診断内容を確認。もしまだ不具合が発生する場合には、他の原因もチェックして前工程に戻す。
受付時に作成した付属品チェックシートなどと照らし合わせて、確認しながら梱包。修理が完了したパソコンは、持ち主の元へ。
パソコンやソフトウエアは日々高度化・複雑化しているため、障害を正確に解析できる技術の習得は容易ではない。工程を分業体制にすることで、修理技術者に大きな負担をかけずに、集中的な技術向上が可能になる。また、どの工程でミスがあったかも明確になるので、迅速に改善できることも大きなメリットだ。