





実はJICAだけではありません。イラク復興のために活動する日本人がスレイマニアには何人もいるのです。そんな日本人たちに会いました。
「スレイマニアは、実に過ごしやすい場所ですね」
そう話してくれたのは、看護師の松近真紀さんです。
日本赤十字社和歌山医療センターからイラクに派遣され、イラク人医師や看護師に医療トレーニングを行っています。イラクへやってくる前は、ハイチで活動をしていたバイタリティ溢れる方です。
2年前にスーダンとウガンダの国際協力の現場を取材したときに実感しましたが、日本の国際協力を担っているのは、松近さんのような女性が中心です。
その松近さんが首都バクダッドではなく、スレイマニアで医療トレーニングを行っているのは、やはり治安の問題からでした。
「バクダッドでは、治安上の理由で何かと不自由なため、イラク人に対する医療トレーニングが満足にできません。そこで、このスレイマニアでトレーニングを 行う旨をイラク国内の医療機関にお知らせし、研修を希望するイラク人の方々で、周辺の県に住む方々には、スレイマニアに『通学』してもらっています」
もう一人、スレイマニアでお会いした日本人は、NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の職員。
「南部のバスラで学校の復興をお手伝いしています」とおっしゃるように、教育支援が仕事です。
長年の戦争で、イラクでは学校教育が崩壊してしまいました。子どもたちの教育の充実は、国の立て直しに必須。ただし、バスラを含む南部は治安が安定していません。
「このため、私も拠点はスレイマニアに置き、必要がある時のみバスラに通っています」
松近さんに伺うと、スレイマニアでは外食もできるほど、治安が安定しているそうです。一日の仕事が終わると、夜は街に出て食事をとったりするとのことでした。


スレイマニアは1700年代後半に、オスマン帝国の将軍、スレイマン・パシャによって拓かれました。郊外にある5万年以上前のものと見られる洞窟には、当時の人類の居住跡が残っています。歴史が古い都市ですが、古い建物は目に付きません。むしろ最近では新しいビルがぽつぽつ立ち始め、復興の息吹を感じることができます。高層のツインタワーを建設する計画もあるそうです。
現地のクルド人には、「3月ごろに、もう一度来るといいよ」といわれました。冬の終わりで、雪が解け、山に緑が芽吹き、花が咲く。それは美しい景色が広がるのだそうです。ちょっとご覧ください。
なるほど、この美しさはちょっと尋常ではありません。遠くに見えるのは、川でしょうか、湖でしょうか。丘陵地から見下ろす草原にはいかにも家畜が走り回りそうで、その傍らには、豊作を約束する土地が広がっているのが、あるべき姿のような気がします。
イラクでは、スレイマニア地域をリゾート地として経済振興しようという動きもあるそうです。中東各国はもちろん、ヨーロッパからも飛行機で数時間圏内です。メスポタミア文明が繁栄した古代、東西南北から人々が集まったイラク地域が、もういちど脚光を浴びる日が来るかもしれません。