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街に広がる発電ポテンシャルを探せ! ビル全面、道路、線路、そして空中 技術革新で設置場所の制約を乗り越え再エネが“超”浸透 街に広がる発電ポテンシャルを探せ! ビル全面、道路、線路、そして空中 技術革新で設置場所の制約を乗り越え再エネが“超”浸透

2025.11.07

既に一定程度広がった再生可能エネルギー。脱炭素を進めるにはさらに浸透させていく必要がある。設置場所に制約が多い再エネだが、技術の進展により、従来の発想とは違った場所での発電の可能性が広がる。見慣れた街の風景の中で発電のポテンシャルはどこに眠っているのか。

脱炭素。地球温暖化の影響を少しでも抑制するために、欠かせない取り組みである。その代表的な取り組みの一つが、化石燃料による発電をCO2排出量を抑えられる電力に置き換えること。代表例が太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーである。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度には電源構成比率4〜5割を占める最大の電源に位置づけられている。

その再生可能エネルギーは設置場所の制約が多い。太陽光の場合は発電効率を考えると設置場所が限られる。一定以上の地域の電力を賄おうと思えばメガソーラーなど大規模な専用施設が必要になるため、そのスペースの制約もある。洋上風力発電などは、さらに制約が厳しいうえ、現状では建設費用などコストが重しになってなかなか広がらない。加えて、これらの大規模な施設は、土地開発などを伴うため周辺環境に影響を与えてしまう可能性がある。

ただ、エネルギー関連の技術の進展により、実は発電の機会はもっといろいろなところに広がっている。必ずしもデータセンターのように大規模な電力需要に応えるものではないが、脱炭素への貢献になると同時に、例えば電線をつなげられない場所での電力利用を可能にする。

私たちの生活環境の中に溶け込んだ再生可能エネルギーによる発電技術や、これまで捨てていたエネルギーを再利用する発電技術にも、いろいろなものがある。例えばビルの壁面、道路の路面や遮音壁などを使った太陽光発電、高層ビルの高さ(位置エネルギー)を活用する重量発電、電波のエネルギーを電力に変換するエネルギーハーベスティングといったものだ。

「こんなところでも発電が」「こんなものでも発電が」と思える技術やアイデアはいくつもある。様々な生活シーンに眠る発電ポテンシャルを生かす――。これも未来のまちづくりの一面といえる。

改正道路法の施行がブレイクの契機に?
じわり進む道路での発電

発電場所として、新たな動きがあるのが道路である。既に日本を含め世界的に実証実験が進められているが、日本では2025年10月1日に改正道路法が全面施行された。改正法では道路脱炭素化などが強化されており、今後、道路での発電システムの取り組みが盛んになると見られる。

道路での発電としては、日本ではすでに西日本高速道路(NEXCO西日本)が2010年の第二京阪道路の開通時に、枚方東IC・門真JCT間において、遮音壁と一体化させた太陽光発電パネルを設置して発電している。発電された電力は、休憩施設や道路設備の照明などに活用され、CO2排出量の抑制に貢献している(写真1)。また、2020年12月からは首都高速道路がトヨタ自動車と共同で、辰巳第1・第2パーキングエリアの遮音壁に太陽光パネルを設置し、蓄電池に溜める実証実験を開始している。

(写真1)第二京阪道路の遮音壁一体型太陽電池パネル(出典:スマートソーラーのホームページより引用)

(写真1)第二京阪道路の遮音壁一体型太陽電池パネル(出典:スマートソーラーのホームページより引用)

路面に太陽光発電パネルを埋め込んだ道路(ソーラーロード)の取り組みもある。海外で先行する例としては、米ミズーリ州の旧国道66号線(通称「ルート66」)での「ROAD TO TOMORROW」や、オランダのアムステルダムの自転車専用道路「SolaRoad」がある(写真2)。SolaRoadの実証実験では全長70mの路面に太陽光路面発電パネルを設置し、年間で一般家庭2~3世帯分の電力を発電している。フランスでも、人口の8パーセントに相当する500万人分の電力供給を目指した1000kmのソーラーロード建設を予定している。

(写真2)自転車専用道路SolaRoadのイメージ(出典:SolaRoadのホームページより引用)

(写真2)自転車専用道路SolaRoadのイメージ(出典:SolaRoadのホームページより引用)

 

一方、日本の例では、太陽光路面発電パネルを敷設し、蓄電池と組み合わせて道路などのインフラが自身で必要とする電力を賄う「自律型エネルギーインフラAIR」がある。MIRAI-LABOが開発した太陽光路面発電システムで、同社は2024年9月から2027年8月まで千葉県千葉市のイオンモール日の出において、駐車場内の通路に敷設できる太陽光路面発電パネルを活用した実証実験を行っている(図1)。自律型エネルギーインフラAIR自体は、2023年7月から1年間、千葉県浦安市にあるオリエンタルランドの敷地内で、実証実験を実施したこともある。

(図1)自律型エネルギーインフラAIR(出典:NEDO・MIRAI-LABO・オリエンタルランドのプレスリリースより引用)

(図1)自律型エネルギーインフラAIR(出典:NEDO・MIRAI-LABO・オリエンタルランドのプレスリリースより引用)

東京杉並区でも小規模ながら、路面発電の実証実験を進めている。表面を特殊な樹脂で太陽光パネルをコーティングして路面に貼り付ける仕組みで、フランスのコラス社とフランス国立太陽エネルギー技術研究所が共同開発した「Wattway」を利用している。杉並区では太陽光パネルを設置できる場所が限られているため、屋根以外の空間の有効活用を模索すべく、役所前広場にWattwayを導入。電力は近隣の照明灯などに利用している。

もう一つ、海外では電車の線路を使おうという取り組みがある。スイスのスタートアップ企業、サンウェイズ(Sun-Ways)が開発した(写真3)。線路の間なら、見た目の問題もないし、環境への影響も少なくて済む。

(写真3)スイスのサンウェイズが開発した線路敷設用の太陽光パネル(Sun-Waysのホームページより引用)

(写真3)スイスのサンウェイズが開発した線路敷設用の太陽光パネル(Sun-Waysのホームページより引用)

壁面・屋上など多様な発電機会があるビル、
高さを利用した重力発電にも可能性

都心部に建つ、高層ビルを使った発電も研究が進んでいる。そこに使われているのは、地球上に当たり前のように存在する、重力を使った発電技術だ。重力発電の仕組みは、高い位置から水を落下させて発電する水力発電と同じ。重力発電では、クレーンなどを用いてコンクリートブロックなどの重たい物体を高い位置に持ち上げ、重力を使って低い位置に下げることでタービンを回転させて電力を生成する。重たい物体を高い位置に持ち上げるにはそれなりにエネルギーが必要になるが、水力発電と比べて場所を問わず設置できるなどのメリットがある。

必要に応じて電力を外部に供給できるので、畜電池のような利用も可能だ。例えば、太陽光や風力など再生可能エネルギーの余剰電力を使ってクレーンでブロックを高い位置まで上げておき、電力の需要に応じてブロックを落下させて発電する。これによって、再生可能エネルギーで作られた電力を無駄なく活用できる。重力蓄電のメリットは、ブロックなどの上下を繰り返すだけなので、バッテリーのように「繰り返し利用による劣化」が生じにくく、耐久性があることである。有機溶媒など有毒な化学物質を使わずに製造できるので、環境への負荷も少ない。

中国のChina Tianyingが2023年4月から張掖(ちょうえき)市で開始したプロジェクトでは、スイスのEnergy Vaultが開発したG-VAULTプラットフォームを採用(写真4)。甘粛(かんしゅく)省の新エネルギー発電プロジェクトから生産された余剰電力で、重力エネルギー貯蔵システムを運用する。計画では、高さ175mのビルで、ピーク出力17MW、最大エネルギー容量68MWhを蓄えることになる。これによって、電力需要のピーク時には、地域の電力需要を 4 時間以上満たすという。

(写真4)建設中の重力エネルギー貯蔵システム(出典:Energy Vaultのホームページより引用)

(写真4)建設中の重力エネルギー貯蔵システム(出典:Energy Vaultのホームページより引用)

ビルの窓や壁に設置して発電する太陽光電池の研究開発も進んでいる。設置のしやすさ、発電効率、耐久性などを高めることで、発電の機会を増やせる。2025年にノーベル化学賞が授与された研究テーマ「金属有機構造体(MOF)」の基本構造でもある多孔性結晶構造も、次世代太陽電池の発電効率と耐久性を向上させる技術の一つとして注目されている。

こうした太陽光発電の中で特に最近話題なのが、塗布や印刷といった方法でシート状に製造できるペロブスカイト太陽電池である。実装のしかたによって透過度をコントロールできることからガラス建材のように利用することもできるし、シート状にすれば柔らかいことからカーテンのような実装も可能になる。これらはオフィスビルや商業施設、住宅の窓、ガラス壁、バルコニー、天窓、ショーウィンドウなどに適用できる。

再生可能エネルギーとしては、30階建て高層ビルの屋上での風力発電というチャレンジもある。三井不動産、大成建設、チャレナジーの3社は、2025年4月に横浜三井ビルディングで実証実験を始めた。チャレナジーが提供する垂直軸型サボニウス式風車を利用する(写真5)。プロペラがなく、どの方向からの風でも発電できる。

これらの取り組みが加速すれば、まさに、都市に林立するビルそのものが「発電所」となる未来が見えてくる。

(写真5)横浜三井ビルディングの屋上で実証実験する垂直軸型サボニウス式風力発電(出典:三井不動産プレスリリースより引用)

(写真5)横浜三井ビルディングの屋上で実証実験する垂直軸型サボニウス式風力発電(出典:三井不動産プレスリリースより引用)

身の回りにある
エネルギー再利用にもポテンシャル

一方で、私たちの身の周りには、振動や熱、電波など、さまざまな形態のエネルギーが存在している。このようなエネルギーを集めて、電気エネルギーに変換する技術もある。それらの技術は「エネルギーハーベスティング(環境発電)」と呼ばれており、これまで捨てられていたエネルギーを再利用しようというものだ。発電量は少ないものの、従来は電気を届けにくかった場所での発電が可能になり、社会のデジタル化に貢献することになる。

エネルギーハーベスティング自体は必ずしも新しい取り組みではなく、例えばJR東日本コンサルタンツがJR東京駅で実験した床発電(改札を通過する人が歩くことによって発生する床の振動を電気に変える)、竹中工務店とセイリツ工業、湘南メタルテックが共同で開発した道路埋込型のLED照明と組み合わせた車両誘導システム「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY」(沖縄県浦添市に導入)などがある(図2)。

(表1)業種や分野ごとのCPS活用の例

(図2)振動発電ユニットとLED照明を組合せた車両誘導システム(出典:竹中工務店のプレスリリースより引用)

工場の排水や温泉の熱を電気に変える「排熱発電」や、自動車内の温度差を応用した発電、コンクリートの表面と内部に生まれる温度差を利用した熱電発電などもある。こうしたエネルギーハーベスティングのうち、比較的新しい取り組みの一つに、電波エネルギーがある。

私たちの生活圏には、テレビやラジオの放送波、携帯電話やWi-Fiの基地局及び端末から発せられる電波など、さまざまな電波源が存在している。これらの環境電波を収集して電力として再利用する。東北大学とシンガポール国際大学の国際研究チームは2024年、微弱な通信用電波から効率的に直流電圧を取り出せる、ナノスケールの「スピン整流器」を開発した。整流器は交流を直流に変換する役割を持つデバイスで、単体で用いた実験では-62dBm〜-20dBmの電波から1万mV/mW程度の効率で直流電圧を取り出し、10個接続した場合は-50dBmの電波から3万4500mV/mWの効率で直流電圧を取り出すことに成功している。

こうした整流器を使って電波を直流電流に変換する技術の応用先の一つとして考えられているものに、宇宙太陽光発電がある(図3)。2050年頃を実現目標としている宇宙太陽光発電では、宇宙空間に巨大な太陽電池を配置して、発電した電力をマイクロ波またはレーザー光に変換して地上に送る。この時の地表側の受電デバイスとして開発されたのが、アンテナと整流器を組み合わせた「レクテナ」と呼ばれるデバイスだ。現在、電力需要の急増が問題となっているデータセンターに、宇宙から電力を送れるかもしれない。

(図3)宇宙太陽光発電システムのイメージ(出典:宇宙システム開発利用推進機構の資料より引用)

(図3)宇宙太陽光発電システムのイメージ(出典:宇宙システム開発利用推進機構の資料より引用)

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