
世界平均気温の上昇は2024年に単年で1.5℃を突破し、気候災害による損失額は過去数十年で5倍以上に拡大した。第2次トランプ政権や欧州ESG規制の逆風で脱炭素政策が揺らぐ。アスエネ 代表取締役CEO 西和田浩平氏は、企業は短期的動向に左右されずGX・ESG戦略を再設計する必要があると説く。

「短期でも長期でも、環境や気候変動に関するリスクは非常に深刻度が高い」と語るのは、CO2排出量見える化サービスを手がけるアスエネ 代表取締役CEO 西和田浩平氏。「2024年には世界平均気温の上昇が単年で1.5℃を超えました。『地球の沸騰化』と国連が表現するほど深刻な状況です」と続けた。
気候災害による保険損失額は、過去数十年で5倍以上に拡大し、経済的なリスクは否定できない水準に達している。「環境省が作った最も悪いシナリオだと、2100年の8月の最高気温は東京で43℃以上になります」と西和田氏は警鐘を鳴らす。
西和田氏は、脱炭素への取り組みを語る上で、生成AI需要が引き起こす電力逼迫についても触れた。「生成AIは従来の10~100倍の電力を消費します。電気不足は、数年後の話ではなく今の課題なのです。電力供給が、生成AIなどのテクノロジー進展のボトルネックになる可能性すらあります」。こうした状況を受け、世界のテック企業は、原子力などベースロード電源の確保や太陽光・風力など短期に拡大しやすい再エネ導入に向かっている。
そうした中で、米国で再び成立したトランプ政権の動向や、欧州で見られるESG規制への逆風など、世界の脱炭素政策が大きく揺れ動いている。「米国では連邦レベルの規制は弱まっています。パリ協定からの離脱も表明し、米国証券取引委員会(SEC)が採択した気候関連情報開示規制もストップしている状況です」(西和田氏)。しかし、脱炭素に取り組む企業が悲観する必要はないという。「連邦レベルの規制は弱まる一方で、州レベルでは規制が継続されています。特に、カリフォルニア州やニューヨーク州、イリノイ州などでは、規制強化が進んでいます。カリフォルニア州だけでも日本を超えるほどの市場規模があり、その対応は無視できません」と西和田氏。Apple、Microsoft、Salesforceといった巨大企業も、脱炭素へのコミットメントを緩める気配はないという。
欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)についても、影響力は依然として大きい。「2023年から開示規制が発効されています。開示項目は約1200にも上り、気候だけでなくESG全般に及びます」(西和田氏)。
日本では、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準によるサステナビリティ情報開示の強化が進む。西和田氏は、「大企業から義務化が始まり、2029年には時価総額5000億円以上、約300社にスコープ3開示の義務化が拡大します。さらに日本独自の排出量取引制度のGX-ETSも2026年度から本格化します」と説明する。アスエネでは、排出量の見える化からコンサルティング、カーボンクレジットの売買など脱炭素のワンストップソリューションを提供している。「算定から保証まで含めたワンストップのニーズは確実に増えています。SX/GXの戦略から具体的なソリューションまで、アスエネが対応します」(西和田氏)と、気候危機が急速に企業価値へ影響する時代の対話相手としての価値をアピールした。