サイバーインテリジェンス セキュリティマネジメント Summit
2025 Winter
Exabeam Japan

AIが人の『分身』になる時代
インサイダー脅威に求められる「進化」とは

情報漏えいは、もはや悪意ある内部関係者だけの問題ではない。自律的に思考し行動する「エージェンティックAI」の台頭が、これまでの常識を覆す新たなリスクを企業に突きつけている。この脅威に対応するためには、平常とは異なるユーザーの“振る舞い”を自動で検知し、早急な対処を支援する仕組みづくりが不可欠だ。Exabeam Japanの講演では、機械学習やAIを活用したインサイダー脅威対策や新しいアプローチについて解説された。

  • 「危険な兆候」の過半数が
  • 見過ごされている

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Exabeam Japan株式会社
シニア・セールス・エンジニア
畑瀬 宏一
 企業に潜在する情報セキュリティーリスクはサイバー攻撃だけではない。従業員やパートナー企業など、内部の関係者による不正行為や不注意に起因するリスクも高まっている。

 もちろん大半のユーザーは、悪意を持っていない。ヒューマンリスク管理を専門とするある企業の調査によれば、80%近いユーザーがシステムの脆弱性や設定不備といったエクスポージャーの削減にも貢献している。Exabeam Japanの畑瀬 宏一氏は、「この数字は、企業のセキュリティー対策において、日本でも多く見られる『性善説』の立場からの対策・対応でもある程度は目的を達成できているであろうことを裏付けています」と語る。

 しかし本当に注目すべきは、「危険な振る舞いの73%が、わずか10%のユーザーによって引き起こされている」という数値である。しかも、ほとんどの企業はこれらの危険なイベントの過半数を見逃しているのが現実だ。さらに畑瀬氏が警鐘を鳴らすのは、インサイダー脅威そのものの進化だ。エージェンティックAIの出現と普及が、新たなリスクを高めているという。

 「エージェンティックAIは、ユーザーの指示に基づいて自律的に動作します。つまりシステム上でユーザーの分身のような存在が作られ、人と同様の行動をAIが自律的に実行する時代が到来しつつあります。これまでは悪意を持った関係者の不正行為や不注意に対策すればよかったのですが、今後はユーザーのように振る舞うAI自体が脅威となる可能性があります。既に海外ではこの懸念が現実となった事例が報道されており、日本でも同様の状況が起こることが予想されます」(畑瀬氏)

  • 内部不正を防ぐ
  • 5つのポイント

 インサイダー脅威の中でも、特に悪意を持って行われる不正行為である内部不正に対して、的確な対策を施すためには多岐にわたるログが不可欠だ。

 「権限昇格やリモートアクセスを記録した『認証ログ』、データ読み出しを記録した『データアクセスログ/操作ログ』、データ書き込みを記録した『DLPアラート』、データ持ち出しを記録した『Webアクセスログ』『メールログ』『印刷ログ』『エンドポイント操作ログ』など、ユーザーの一連の行動を証跡として残したログがなければ、万一インシデントが起こった事後の検証も分析もできません。ログの取得が不十分な場合、セキュリティー監視や分析時に漏れが生じ、重大な脅威を見逃すおそれがあります」と畑瀬氏。その上で基本対策として次のポイントを徹底すべきだという。
  • ①犯行を難しくする(不正をやりにくくする環境整備)
  • ②捕まるリスクを高める(不正行為は必ず見つかるという心理的抑止力の構築)
  • ③犯行の見返りを減らす(割に合わないと感じさせる)
  • ④犯行の誘因を減らす(その気にさせない職場環境の改善)
  • ⑤犯罪の弁明をさせない(言い訳させない状況の創出)
 「内部不正は、『動機』『機会』『正当化』という3つの要素がそろった場合に発生します。この不正のトライアングルに対処するため、この5つのポイントが重要となります。特に『やれば見つかる』という抑止力は、ユーザーによる内部不正を未然に防ぐ効果が期待できますし、実際に効果が出ている例もあります」(畑瀬氏)

  • AIでAIの脅威に
  • 立ち向かうことが重要に

 とはいえ、上述した5つのポイントを踏まえた内部不正対策を含むインサイダー脅威対策を手作業だけで実行するのは現実的ではない。これまでは、多くのセキュリティーアナリストが1件のアラートについて40件を超える関連項目を調査し、重要度を分析していた。しかしこの作業には多大な時間がかかるため、結果を得た頃には、既に手遅れとなっているケースも珍しくない。

 こうした課題の解消に向けてExabeam社では、包括的なソリューションを提供している。それが、社内のあらゆる機器からログを収集するSIEM(Security Information and Event Management)、集めた膨大なログをAIが分析するUEBA (User and Entity Behavior Analytics)、検知した脅威に自動対処するSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)といったツールを統合した「Exabeam New-Scale Fusion」だ(図1)。Exabeamは、バラバラに収集されたログデータを統合して意味のある情報へと変換。さらにこれらの情報を相互に紐付けて、機械学習(ML)による分析を実現するソリューションだ。  「過去10年以上にわたり我々が培ってきた機械学習を活用したソリューションの実績を生かし、集約された大量のログからユーザーの正常行動パターンを学習します。そして、そのベースラインからの逸脱を自動的に検知し、一連のイベントを紐づけてリスク分析することで、静的なルールでは判別が難しい普段と異なる危険な振る舞いを、リアルタイムで発見できる点が強みです」(畑瀬氏)

 これを支えているのが、AIを活用した高精度のリスクスコアリング機能だ。ユーザーの振る舞いをとらえたタイムラインを自動生成して評価し、様々なイベントの組み合わせの特異性、アラートの信頼性、対象ユーザーの重要度といった複数の要素を考慮した上で、客観的かつ正確なリスクスコアを自動算出する。

 さらにSOCアナリストに対しては、脅威の迅速な調査と対応もサポートする。「Exabeam Nova」という独自の生成AI機能がそれだ(図2)。  「リスクスコアが高いと判断された事象について、『脅威の概要』と『起こりうる脅威』、さらに『推奨される次のステップ』をまとめたレポートが自動生成されます。また、この調査の中で疑問点があれば、チャット形式で質問を投げかけて、その場で解決することができます。これにより、セキュリティーにあまり詳しくないシステム運用担当者でも、上級アナリストに匹敵する迅速な調査と対応が可能となります」と畑瀬氏は説明する。

 こうした点が着目され、導入する企業も多い。その1つが国内のある大手金融機関だ。同社では当初、「複数のシステムからのログを個別に確認する必要があり、リアルタイム性が欠如している」、「リモートワークの常態化に伴いコミュニケーションツールが増えたことで、モニタリングの負担が増加した」、「想定しうる内部不正のリスクシナリオに基づいた既知のリスクは検知できるが、未知のリスクが抽出できない」といった状況に危機感を抱いていた。これらの課題をExabeamの活用により包括的に解決した。

 「AIを活用した行動分析により、普段と異なるユーザーの異常な行動を区別し、情報漏えいなどの内部不正を未然に検知することが可能となりました。加えてAIによる膨大なログのリアルタイム分析により、モニタリングの作業負担が軽減して検知精度も向上し、迅速な対応を実現しています。また、タイムライン機能によって各種ログがユーザー単位で時系列に整理され、モニタリング網羅性を向上することで、想定外の異常な行動の発見にも貢献しています」と畑瀬氏。その結果、全社的なセキュリティーレベルを向上し、IT部門の担当者も本来の業務に集中できるようになったという。

 インサイダー脅威対策は、もはや従来の性善説に基づくアプローチでは通用しない。エージェンティックAIによってもたらされる、迫りくる新たな脅威への対策も見据え、機械学習や生成AIをベースとする最新技術を活用することで、より客観的かつ自動的に不正行為を検知する仕組みづくりへと対策を進化させていくことが肝要だと言えるだろう。
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